■開発現場より 7 (進捗管理のマイルストーン 2) (No.265)
製品開発の現場でのいろいろな問題点について考えてみることにする。(続き)
マイルストーンに対する意識 2(続き)
開発リーダ経験者には判ると思われるが,開発完了間際のDRでは,受審側に立つと,被告席のような気持にさせられる。最後になって製品に対していろいろ注文を付ける意地悪な有識者が必ず居る。企画段階や設計段階での指摘であれば納得できるが,今頃になって云うのは卑怯だとも思える発言をするケースである。要はその有識者も,企画段階や設計段階ではそこまで頭が廻らず,最後に製品を見てあれこれ注文を付けたがる人である。このことは,開発リーダの立場の観点から見ると,マイルストーンなるDRの場が,企画や開発段階では指摘される参加者すべてが協力者に見え,最終段階の量産間際のDRでは,指摘される参加者は検察官のように映る。
つまり,企画段階や開発段階でのDRで,有識者からいろいろな角度で指摘を受けるのは,開発リーダ自身の視野より広い視野で,経験豊富な知識よりの発言であり,その時点では,DRへの参加者は,全体のプロジェクトに対する協力者のように見える。開発リーダの方も,開発期間に時間的なものが十分あり,対応方法もいろいろ検討ができる。問題を起こさないための事前防止策なども教えて貰え,貴重なDRである意識がある。ここでの指摘は,積極的に取り組もうと意欲的な場合が多い。
不思議なもので,同じ開発リーダでも,開発工程の後半でDRの受審をすると,被害者的感覚が支配してくる。つまり,一日でも早く完成にこぎ着けたいと願っている中で,DRによって新たな注文を付けられはしないかと心配する気持である。このまま量産工程へ無事引継を終えたいとの気持は,開発リーダであれば誰しも同じである。何か注文を付けられたり,指摘を受け改善しなければならないとなると大変で,そこでの指摘・注文は,ありがたい協力者ではなく,量産を邪魔する者でしか無いように感じてしまう。なぜ,もっと早い段階で指摘してくれなかったのかと嘆くことも起こってしまう。検察官と被告のような構図ができてしまうことがある。
人である以上,どうしても感情的なものが入り,同じ指摘でも,余裕が有る無しでその受け止め方が真逆になることもしばしば起こる。このことは,マイルストーンに関することだけでなく,開発のいたる場面で生じる。そうした点で,開発リーダは常に,心に余裕を持っていることが大切で,常に平常心で判断を下すことがどれだけ大切かをよくよく考えて欲しい。
マイルストーンを監視する側の意識
開発リーダの意識が上述したものであることは一応理解して貰えたことと思う。しからば,開発リーダを支援する側に立った人はどうすべきかを考えてみる。本来の目的は,設計の完成度を上げるなり,顧客に喜ばれる製品を生み出すために第三者的立場から支援することである。開発側の欠点を曝き,指摘・改善をさせることが目的ではない。
同じ指摘でも,そのタイミングで受け取り方が変わることから,知識や経験から,或いは広い視野から見ての指摘は,開発の早い段階,つまり,製品が煮詰まらない企画・開発段階で,極力指摘することに努めよう。開発リーダの知識や経験を超えた広範囲な視野からの指摘は,必ず開発リーダの役に立つことが多い。この段階では,できるできないを見極めるのではなく,気づいた点をどしどし挙げて指摘することが有効なやり方である。
製品が完成しないとなかなか判らないことでも,経験則を活かしたり,知識を活用して,製品の完成を想定して早めに指摘することは有効なことである。過去に起こった問題点の対策やノウハウなどを基に,開発リーダが気づいていない新たな視点での気づきが,製品の完成度を高めることに効果的なことも多いはずである。特に,経験未熟な開発リーダにとっては,適切な指摘はアドバイスとして受けとめられ,指摘することがありがたい協力者と感じて貰えるようになるべきである。
開発後半工程の指摘・助言は,顧客に大きな迷惑を掛けること以外は,ある程度実施可能なことを見極めた指摘に止めよう。もちろん,市場での事故など致命的な欠陥の発生のリスクがあるものは,指摘はすべきであり,有効である。この時点では,無理難題な注文よりも,開発グループが気持ちよく完成にこぎ着ける援助をした方が効果的である。反省すべき点などの指摘であれば,それは別の機会のDR,例えば,プロジェクトが終わってから振り返りをやるDRなど,反省会でいろいろ指摘する方がよい。
DR(デザイン・レビュー)の機会を積極的に有効活用しよう!!
[Reported by H.Nishimura 2012.04.09]
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