■開発現場より 5 (進捗管理のやり方)  (No.263)

製品開発の現場でのいろいろな問題点について考えてみることにする。(続き)

  仕事の進み具合は最大の関心事

仕事(含むプロジェクト)が順調に進むか否かは,誰しもが気になるところである。一人で任された仕事であれば,与えられた目標通りに達成するかどうかを常日頃からチェックしているだろうし,達成が無理なようであれば直ちに上司などへ報告し,その挽回策を講じなければならない。何人かでの仕事であれば,どの部分が遅れているか,それは目標達成に対して挽回できるものかどうか,助けが必要であれば,人の配置をどのように変更すべきか,など,仕事には納期(完成目標日)がつきものである。

もちろん,納期だけが問題ではなく,目標と定めたQCD(品質・コスト・納期)が揃って達成しなければならない。品質第一だから,品質確保のために納期は多少遅れても構わない,などと安易な判断は禁物で,仕事によってQCDにおいても優先される順位がある。しかし,お客の立場からは,約束通りの期日が守れない仕事では,二度と依頼しようと思わない気持ちになってしまうことも多いのである。

つまり,仕事を請け負った時点で約束通りに仕事を仕上げることは最大の使命であり,それを守れないようでは信頼を勝ち得られないのである。QCDの中で,納期が一番明確で,遵守できたか否か判定の白黒がはっきりしている。もちろん,すべての仕事がそうだとはいえず,リスクの高い,不確実性の高い仕事などは,納期通りに完成させることは非常に困難であることがある。新製品開発など未知な仕事への挑戦などは当にそれである。ただ,リスクが高い,不確実性が高いから,納期はいい加減でも良いなどと言うのは,本来仕事ではない。そうした未知の仕事ほど,きっちりと進み具合を見極めながら進めるべきものなのである。

仕事が順調にできるかどうかは,自分の成績にも大きく影響する。つまり,昇進や昇給の判定にも関連する。そうした点から,技術者にとっては,与えられた仕事を順調に進めることが最大の関心事であるはずである。

  進捗管理の必要性

プロジェクト(新規の仕事)などは,当にこの進捗管理がきっちりできるか否かが,プロジェクトの成否に大きく影響を及ぼすのである。進捗管理と言うと,その響きから管理中心に,監督者がお目付役のようなイメージを抱く人も居るかもしれないが,それは全くの見当違いで,技術者自らが,自分の仕事に責任をもって当たる重要な役割である。他人に管理してもらうのでなく,自らが積極的に行うものである。

技術者の中でもいろいろ個性があり,こうした進捗管理を蔑ろにする人もいる。結果がすべてだと云う考えの人である。確かに結果が大事で,目標を達成しなければ,いくら進捗管理が万全であっても意味がない。そうした点では確かに結果が重要である。ただ,仕事は一人単独でやることは少なく,数人のグループで仕事をすることが殆どである。つまり自分自身はコントロールしているつもりでも,全体で上手くコントロールできないようでは結果が上手く行かないことが多いので,全体での進捗をフォローすることが必要となってくるのである。つまり結果を求めるから進捗を管理して進めるのであり,成果を求める手段の一つである。

週5日,8時間勤務として約40H,その中で週に1回2H程度の進捗管理のミーティングに使うことは,勤務時間の5%程度であり,仕事全体のバランスからしても有効な活用の部類に入る。技術者が忙しくて仕事に集中していると云っても,勤務時間の80%も仕事に没頭できているようであれば,非常に効率が良いと云える。経験で実測したことがあるが,通常は,会議,打合せ,メール確認など,本来の仕事の補助業務に20〜30%割かれていることが多いのである。そんなことから見れば,5%程度の時間を進捗管理に使うことは,全体把握もできるなど時間の有効利用をしていると云えるのである。決してムダな時間ではない。

何故,殆どの技術者が決まり切ったように進捗管理をしているのだろうか? それは,完成目標にいきなり到達(ある日突然,目標が達成していましたなど)することはなく,その目標に対して徐々に近づいて行くのであって,その道程が長ければ長いほど,困難であれば困難な道程ほど,進み具合が判るようにしなければならない。そうしなければ,気がつけば予定よりとんでもなく遅れてしまって取り返しがつかないと云うようなことが起こるリスクが出てくる。

特に,大勢でのプロジェクトであればなおさらで,全体の行程がメンバー全員に(少なくとも主要なメンバーには)行き渡っていることが重要である。どの部分が遅れていて,どの部分が予定通りに進んでいるかが判れば,全体で遅れている部分をカバーし合うことが可能である。また,全体を把握しながら自分の分担を担当していることと,全体把握ができずに仕事をしているのでは,行き先の方向判断にも影響する。

特に,行程の長いプロジェクトには,中間目標となるマイルストーンの設定が重要となる。

(続く)

進捗管理は仕事の基本である

 

[Reported by H.Nishimura 2012.03.26]


Copyright (C)2012  Hitoshi Nishimura