■開発現場より 2 (業務報告の内容) (No.259)
製品開発の現場でのいろいろな問題点について考えてみることにする。(続き)
定例(毎週)の業務報告会での報告内容,報告タイミング
仕事(含むプロジェクト)がスタート直後や順調に進んでいる場合には,各自の報告のPDCA内容の大枠を捉え,問題点が潜んでないかなど簡単なチェックで済むが,仕事(プロジェクト)が進むにつれて,いろいろな厄介な問題が発生してくる。
ところがそうした問題は全体の打合せで顕在化するのは,かなり重症な問題になってからが多い。即ち,個人,又はサブリーダの中で何とか問題解決を図ろうとするのが常であり,そうした行動は当然である。自分で何とかしよう,或いは,サブチーム内で何とか収めようとするのは,評価にも影響するので,できるだけ気づかれない,或いは穏便に片付けたいと思う心理は致し方ない。特に,厳しいリーダの居るグループなどにあっては,必要以上にそうなってしまうケースが多い。
また,逆にほんの些細な問題まで一つひとつ報告会で取り上げると限りがなく,そうした報告ばかりで終始し,肝心な課題に対する対応策など検討する時間が無くなってしまう。どこまで報告を上げるかは微妙な問題である。気心の知り合った仲間間ではこうした悩みは殆どなく,あうんの呼吸で対処されている。だがこのような気心が知れたチームが作れることは少ない。一般的には,リーダ及びメンバーの言動の積極性か,消極性かが問題解決のタイミングのカギを握ることになる。
報告内容で多いのが,定性的,抽象的な表現での報告である。当の本人はよく判っているので,かなり重要な問題とか,大きなリスクであるとか云った表現が用いられるが,聞いている側は,どの程度か定量的なことが判らない。すべてが定量的な表現にはならなくとも,相手に的確に伝わるには,余分に10人月掛かりそうとか,リスクが顕在化すればどの部分に何週間程度の遅れが出そうとか云った説明の方が,具体的になって理解がし易い。
特に,自分で処理ができるものは簡潔な報告でよいが,自分だけでは処理できず他の人に影響を及ぼす内容については,具体的に詳細に報告することが大切である。仕事は個人の成果も必要だが,全体としての成果が重要で,全体への影響があることは確実に,素早く報告することが組織としての仕事の基本である。しかし,全体としてバランスよく,効率よく報告会が進むことはなかなか難しいものである。先ずは,一方的な報告だけで終わるのではなく,メンバー各々が意見を出し合い,議論できる場が形成されることを目指すのが良い。
報告内容の理解
実際の現場で,業務報告される内容の理解はお互いにどの程度だろうか。リーダは立場上全体を把握しなければならないので,報告内容をできるだけ具体的に,質問も交えて聞こうとするので,一番理解度が高い。本来は同じグループに所属している仲間も,リーダ同様の理解度があればよいのだが,なかなかそうは行かない。自分の仕事に関連する内容はよく理解するが,その他関連の薄いものは殆ど聞いていないと云ってよい。
一般的に情報の伝達は,報告側が言いたいことを的確に表現することが難しく,言いたいことの70%程度しか言葉にできない。さらに,聞く側の受け止め方も,相手の言葉の70%程度しか理解できない。したがって,情報としての伝達ロスが50%程度,即ち,言いたいことの半分程度の情報しか相手には伝わっていないのである。これが,サブリーダを介するとか,要は伝達手段の間に人が介在すればするほど,情報伝達ロスが掛け算で聞いてくるので情報伝達は悪くなってしまう。
だから,報告会で一生懸命伝えたつもりで,相手が100%理解していると考えると誤解が生まれる元となる。伝えたい相手に十分情報伝達しようと思えば,情報伝達ロスがあること(半分程度しか伝わっていないこと)を知った上で,繰り返し説明したり,言葉だけでなく実物を示したり,現場を見せたりするなど,情報伝達を的確にする補助手段を講じることが必要である。気心が知れた仲間同士でも,僅かなズレで誤解が生じることは良くあることである。
理解を進めるには,メンバー同士が互いに質問,意見などを言い合うことである。質問することで,判らない部分を補うことができるし,一方,報告側にとっても何が疑問なのかが判り,より詳細な説明を加えて理解して貰うことができる。そうしたやりとりは,質問を交わしている両人だけでなく,周りの人にも関心を深めさせる効果があり,議論が活発になればなるほど,メンバーへの理解は進むことになる。
定例会での業務報告のあり方
進捗に大きな変化がなく,定例の報告会をスキップしてしまうこともある。しかし,特に大きな話題が無くとも,定例の報告会は習慣づけをした方が良い。話題が少なければ短時間で終えたら良いのであって,お互いが顔を突き合わせるだけでも,チームとしての信頼度は増すのである。顔色一つで,調子が良さそうか,悪いかはある程度判るし,悩みがあればメンバーの誰かが勘付いてくれるものである。そうした仲間意識が,個人の能力以上のものを発揮する根源となる。
質問は理解を深めるためにも必要だが,集まって報告を聞くだけでなく,意見を交わすためにも重要なことで,つまらない質問でも遠慮せずにする方が良い。とにかく集まってじっと報告を聞くのでなく,会話が弾む報告会が良い。こうした定例会での日頃からのコミュニケーションが十分なチームは,各々のモチベーションも高く保たれることで,結果的に能力以上の力が発揮できることになる。
メンバーの中にはすべてが優秀な人の集まりではなく,劣等感を持った人も居る。こうした人はたいがい仕事も遅く,何かにつけて遅れがちである。そうすると報告会などで追求の的になり,益々劣等感が植え付けられてしまう。不思議なもので,こうした劣等生をいじめるつもりではなくとも,自然と優越感を持ち,さらに追求が酷くなることがある。弱みにつけ込む人間の心理であり,よく見かける光景である。こうしたとき,リーダに限らずメンバー同士で,遅れを追求する場ではなく,遅れを援助する,お互いに助け合う場にすることである。口で言うほど簡単なことではないが,こうしたことができるか否かでチーム運営は大きく変わってくるのである。
これで満足できる報告会と云うのはない。順調にことが進むことは希であり,問題が噴出するのが当たり前である。だから,報告会一つを取り上げても,今より良い方法はないか,もっと全体がよく見え,スムーズに運ぶ方法はないか,と問い掛けながら進めることが大切である。これはリーダの采配の問題ではあるが,メンバー自身もより良い方法の提案をすることで,お互いのモチベーションを高め合いながら進めることができれば,ゴールも早く近づくし,やり遂げた達成感も一入である。
報告内容を互いに理解し合う,議論のできる場としたい
[Reported by H.Nishimura 2012.02.27]
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