■開発現場より 1 (業務報告会)  (No.258)

製品開発の現場でのいろいろな問題点について考えてみることにする。

  定例(毎週)の業務報告会での様子

いろいろな職場で,定期的に業務内容を報告する機会は多い。特に,周りの人と連携を取りながら進める仕事(含むプロジェクト)の場合,自分だけでなく全体の進み具合と歩調を合わせることが必要である。そうした仕事では,一般的にはリーダが関係者を集め,お互いの進捗状況を報告させることが多い。10人未満のグループならば全員が集うし,それ以上になると毎週全員集合では時間的なムダもあり,サブリーダ的な数人が集い,互いの進捗を報告すると云う場合もある。(ここでは,上司対部下が1対1で,オペレーション的な仕事をしているケースは想定していない)

そうした場でのやりとりを見ていると,状況の報告が目立つ。

  1. 「○○をやってみましたが,こんな問題点があり,これの解決をしようとしています」
  2. 「先週から引き続いて△△に取り組んでいますが,新たにこんな問題が出てきました」
  3. 「□□について,先週で完了しました。次は,◇◇に取り組みます」
  4. 「××についてですが,急に欠員が発生して,もう1週間掛かりそうです」
  5. 「今週は殆ど進展はありませんでした」
  6. 「役割分は完了しましたので,他の方の応援をします」
  7. リーダが「状況はよく判りました。全体の完了目標は今月末です。全員で頑張りましょう」

と,云ったような1〜2時間程度の報告会が毎週繰り返されているのではないでしょうか?

  定例会の目的

毎週の業務報告会は,リーダが個人の,或いはサブグループの進捗を把握し,報告内容から適切なアドバイス,或いは判断を下し,最終目標に向かっての進捗をスムーズにさせるために行うことにある。

したがって,リーダが各個人の状況を身近に理解しているような場合では,上述した報告内容でもリーダは,聞いた内容から大凡の想定ができることもある。しかし,大人数のプロジェクトでは,上述のような状況報告だけでは,現時点の状況は判っても,今後どうなるかなど,最終目標が達成可能なのかどうかよく判らないはずである。つまり,適切なアドバイスや判断をするに必要な情報が欠落しているからである。

上述した報告内容はポイントだけ簡潔に記載したので,実際にはもっと詳しく状況報告はなされるのだが,よくあるパターンで詳細な内容が付け加えられたとしても,あくまでも現状の状況報告なのである。特に,サブリーダの下に数人がいるような大規模又は中規模な仕事(プロジェクト)の場合,状況報告だけでは,今後どのようになるか推測ができないのである。定例会はあくまでも状況報告を聞く場ではなく,最終目標に対してのアドバイスや是正処置が的確に行える場でなければならない。

プロジェクト報告など,WBS(Work Breakdown Structure)で仕事の分担が明確で,詳細な日程が設定されている場合は,この日程に従って,報告がなされると遅延状況などが明確になり,定量的な判断が下せるので便利であり,プロジェクトに於いては必須のアイテムである。ただ,定量的であるだけに鵜呑みにすると,とんでもない落とし穴(明らかな数値以上の問題点発生など)があるので,その内容まで十分把握することが必要である。

  定例会での業務報告のあり方

リーダが欲しい情報は,現状での問題点報告もさることながら,計画したことに対してどこまで進み,何が遅れているか,また,遅れが出ていることに対してどのように(挽回)しようとしているのか,それは達成できそうなのか,助けが必要なのか,など,その部分の仕事(タスク)の進捗状況報告である。

言い換えれば,先週計画した内容(Plan)に対して,今週実施できた内容,又はできなかった内容(Do),それらに対する評価,反省(Check),そして来週やろうとすること(Action)が盛り込まれて,的確にポイントを突いた報告が必要なのである。要は,報告者もしくは報告者のグループが計画したことが予定通りに実行できているか,今後できる見込みがあるのか,それがリーダが知りたく,全体進捗にどのように影響するかを判断したいのである。それに応えなければいけない。

こうしたことが自然な形でできるように,業務週報のフォーマットが,計画(P),実施内容(Do),結果,評価(C),次週予定(A)の項目に分かれていて,それを埋める形で報告するような工夫がされているケースもある。こうした報告を見れば,計画通り進んでいるのか,そうでないのか,数週間繰り返せば口先だけかどうかも判明する。つまり,リーダとして大きな流れを把握するには大いに役立つのである。

また,逆にこうしたPDCAサイクルの報告がなされているプロジェクトは,問題点がどこにあるか,即ち,計画そのものか,実行力か,評価が甘いのか,管理している本人もよく判るし,リーダも報告を聞けばどこに手を打つべきかも判りやすい。仕事の基本はPDCAサイクルと云われるように,基本に忠実に仕事を進めることがどれだけ大切か,身を以て判るはずである。

問題が多く混乱すればするほど,Doだけの繰り返しになることは,先例で明らかである。これでは,ますます混迷を来すばかりで,的確な解決には到らない。プロジェクトが上手く進まない原因の一つである。折角の貴重な定例(毎週)業務報告の時間を,PDCAサイクルの基本に則って有効に活用しない手はない。

 

仕事の基本はPDCAサイクルを廻すこと

 

[Reported by H.Nishimura 2012.02.20]


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