■儲からない製品開発 2 (No.242)
話題 : なぜヒット商品,儲かる新製品の開発ができないのか?
パナソニックがテレビ生産を縮小
家電商品の主力商品が赤字で苦しんでいる!! 先週,儲からない商品の代表的なものとして薄型テレビを挙げたが,まるで今週の発表を見透かして書いたようである。パナソニックの代表的な商品である薄型テレビの生産を縮小するニュースが飛び込んできたので,今回は先ずその話題に少し触れ,次週以降,予定していた原因を深掘りすることにする。
今週の発表は,マスコミの報道にあるように,パナソニックでは赤字経営は社会悪で赤字が3年間も続くようであれば,そのトップは交代を余儀なくされ,事業そのものの見直しが行われることがある。今回,事業縮小も,経営赤字が続いていることに依るとの報道であるが,元々赤字経営で無かったものの薄型テレビの利益率は他の商品と比較して劣っていて,今回のようなことが起こることは予測されたことである。それは前回にも述べたように商品がコモディティ化され,顧客が価値を認めてくれない傾向がどんどん進んでいたからである。
大型の薄型テレビが発売された当初は,インチ当たり数万円で,インチ当たり1万円を切れば普及に拍車が掛かると云われ,パネルの大型化に対する設備投資などを中心に価格競争が激化していった。詳細なことはよく判らないがその当時でも,新工場を建設するなどの勢いはあったものの,一方で利益の薄い商品に大きな投資をすることに懸念をする声が無かった訳ではない。いずれ今日のような事態が来ることは判っていたが,こんなに早く来るとは思っていなかったのだろう。
またテレビと云えば松下電器を代表する商品であり,これで負ける,或いは利益がでないような事態が来れば大問題との思いは強く,消極的な策は打てない状況下にあったのではないかと想像する。他に利益を上げている商品はいろいろあるが,テレビのような代表格の商品ではなく,利益が少なくてもテレビ部門は過去の業績に甘んじて大手を振ってとは言い過ぎかもしれないが,誇り高く止まっていたことは事実だろう。そうでなければ時代の流れとはいえ今回のような事態は未然に防いでいたのが,これまでの松下電器であった。
現在は詳しく判らないが,テレビ事業としては数年前までは,日本や欧米での価格下落による競争激化に比較して,新興国での需要は大きく,世界全体で見ればまだまだテレビの需要は伸びていた。つまり,価格帯は別としても,薄型,大型テレビのようなハイクラスを求める層ではなく,テレビの価値を認める層は多く,そのことは利益幅は大きくなくとも経営的に成り立つ生産ができていた。今回も日本での縮小なので,世界的にはどうなのかよく判らない。新興国などの需要に向けて,テレビ事業の現地生産(日本からの輸出では太刀打ちできないが)ではまだまだ採算は採れているのではないかとも思う。
要は顧客が付加価値をどれだけ認めるか否かであって,薄型テレビのように大画面化や薄型化,省電力化などハード部分での価格競争は日本や欧米諸国では限界がきていることは明らかである。テレビの機能としては,テレビ放送を見るだけのものであってコンテンツが充実はしているが全く珍しい新しいものではなく,デジタル化も顧客にとっては何ら目新しいものではない。画質も大画面で見ても十分で,これ以上を求めるものでもない。顧客がテレビ以上の価値を求めていないのである。
殆どのヒット商品と云うか,顧客が求めている新製品では,ソフトウェアで付加価値を付けている部分が大きい。価値を生み出す源泉が明らかに変わってしまっている。これは今始まったことではなく,20世紀末,1990年代には始まっていた。携帯電話に象徴されるように,その変化のスピードも早い。明らかにテレビとしても,これまでとは違って中心となる制御はソフトウェアが占める部分が多く,開発もそれなりにコストが掛かることは判るが,顧客が求める付加価値に対する対応はできていない。即ち,開発した新製品に新しい付加価値が無いと云った方が正しいかも知れない。
なぜ,こんな事態になってしまったのか,その主な原因となることを掘り下げてみよう
(続く)
パナソニックがテレビ事業を縮小!! これはただごとでは無い事態だ!!
[Reported by H.Nishimura 2011.10.24]
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