■野田新内閣の顔ぶれ (No.235)
民主党の代表選挙結果,野田前財務大臣が決選投票のすえ,選出された。その一部始終をテレビで観ていたが,1回目の投票で野田氏の票が予想(70〜80票どまり)を覆し,100票を超えた時点で,海江田氏の後陣で2位だったが代表に決まったのではないかと感じた。
人を惹きつける演説の上手さ
代表戦に出た5人の投票前の演説を聴いていて,一番話し上手が野田氏だった。生い立ちから,弱者に目を向けた政治活動など,今,震災で苦しんでおられる方々,中小企業で厳しい環境下に置かれた経営者などの味方であることを先ず印象づけ,大臣になるまでずっと千葉で駅前に立って街頭演説を続けてきたことなど,誠実に物事を推し進める政治家であることを,そして古い政治から脱却した民主党政治をやって行きたい力強い宣言だった。
どじょうのように泥臭く,と云う説明が,その後のマスコミに取り上げられているが,自分のスタイルは派手な金魚のような振る舞いは似合わず,どじょうのような泥臭いやり方を厭わずに進めることであるとの発言は,顔格好からも印象深く,今までの民主党,特に,鳩山,菅両首相とは違ったやり方をしてくれる思いが伝わってきた。5人の中では,民主党を立て直す意味でも適任者が選出された。
人気取り,パフォーマンスの派手さよりも実力主義
変化を求め,マニフェストの変革を信じ,民主党に入れた国民の多くは,鳩山,菅両首相の,パフォーマンスの派手好きで,自分一人で勝手に発言するやり方には辟易してきている。国民の期待を大きく裏切られた思いが強い。そうした国民の2年前の期待に応えられる実力内閣であって欲しいと思うのは私一人ではないだろう。多くの国民が,毎年変わる首相に,日本を憂い,閉塞感からの脱却を願っている。
少なくとも,これまでの二人の前首相よりも良くなるのではないかと期待が大きく,内閣支持率も高率を示しているようである。挙党一致と余り内向きにならず,野党との意見擦り合わせを確実に行い,少なくとも震災復旧・復興に向けた活動は,全党挙げてスピードアップし,さらには日本の将来を良く見定めて,日本の復活をやって欲しいものである。
適材適所か?派閥均衡か?
選挙後はノーサイドで,適材適所で人事を行うとのことで,顔ぶれが決まったが,野田氏が当初描いた適材適所になったかどうかは,やや疑問が残る。岡田氏に入閣を断られたこともその一つだが,各派閥から均等に選出されたことからみると,派閥均衡内閣,これまでの自民党のやり方に戻った感がしないではない。
適材適所はなかなか難しいことである。野田新首相に任命権はあるのだが,やはり挙党一致の体制と宣言している以上,各派閥からの推薦者を無碍に断ることはなかなか難しい。ある程度は,実力を持った実行派の内閣にも見えるが,早々に綻びが出ないようにして欲しい。
入閣の顔ぶれでは40代が5人と若い世代の台頭は頼もしいことであるが,派閥からの推薦者はどうも年功序列ではないが,年寄りが多い。年寄りが決して悪い訳では無いが,自らの信念を確かに以て,事に当たることがどれだけできるかと云う点で,何か派閥を代表したような後盾に引かれながらの行動になるのではないかと心配する。野田新首相の意図を良く理解し,泥臭いやり方でも確実に実行してくれる年輩の大臣であって欲しいと願っている。
経済立て直し,外交の強化が必須(前回の繰り返し)
前回も述べたことであるが,国民の願いは,デフレが蔓延,円高,株安の状態からの脱却である。企業活動が益々やりにくく,国内の空洞化が非常に懸念される。経済の立て直しは,喫緊の最大の課題で,これを誰が大きく旗を振ってくれるのか期待していたが,余りよく知らない鉢呂氏が経済産業大臣として初入閣となった。また,財務大臣も岡田氏に固辞され,安住氏になった。
未だ活動もされていないのに批評するのは失礼だが,本当に経済の立て直しを,日本の将来を大きく左右する立場に立ってやって貰えるのか,些か心配である。前の海江田経済産業大臣,野田財務大臣も,菅首相の独断で振り回されたとはいえ,物足りなさがあった。少しも経済が前向きに進展する兆しすら見えなかったからである。だから多くの民主党支援者が裏切られたと思ったのである。
これも繰り返しだが,経済の成長は人間の心を豊かにしてくれることは間違いない。経済成長なくしても心の豊かさはあると言う人も居るが,そう言う人は必ず裕福な人で困っていない人である。多くの労働者,サラリーマンにとって,仕事があることは生活を安定化させることであり,それが幸せの根源である。その土台となる経済の低迷は,当に政治の大きな責任であることには違いない。新大臣のお二人よ,何とか経済の復活を実現させて欲しい。
日本のもう一つの弱みは,外交の弱さである。菅内閣では,前原氏が辞めて以来全く音沙汰も無くなり,隣国(ロシア,中国,韓国)の言いなりである。今回,玄葉氏が外務大臣に任命されたが,これも未知数である。ただ,これまでの発言などを聞いている限りでは,若手ではあるが,きっちり信念を持った発言を聞いており,幾分安心感はあるが,こと外交となるとやはり未知数で,したたかな隣国,及びアメリカなどを相手にどこまで,日本の主張を貫けるかは判らない。
とにかく,日本の技術者にとって,現状の日本の政治は心配でならない。このまま日本が沈没してしまう危険さえ感じる。技術者がどれだけ優秀でも,どれだけ素晴らしい技術開発をしても報われる状態にはなっていない。日本の産業全体の衰退の危機である。
是非,適材適所の実力主義内閣と宣言した野田新総理の経済立て直し,外交の強化に注目したい。これに日本の将来が掛かっている。
母校の卒業生が二人も入閣
何を言おうか,我が母校(高等学校)の卒業生が二人も入閣することになった。先輩と一人は若手である。「赤鬼魂」「文武両道」を校風とする我が母校の精神を礎に,野田新内閣での活躍を大いに期待している。政治活動には元々それほど関心が少なかった私自身であるが,ここまで日本が落ちぶれ,閉塞感が漂って来ると,黙っていられなくなってしまう。
技術の話からは外れた話題だが,日本の将来が掛かっている
[Reported by H.Nishimura 2011.09.05]
Copyright (C)2011 Hitoshi Nishimura