■民主党代表選挙 (No.234)

民主党の代表を選ぶ選挙が本日行われる。5人の候補者が出て,昨日の日曜日テレビ番組で各テレビ局を巡回して,議論が重ねられている。内容は同じことの繰り返しで,増税問題,マニフェストの見直し,挙党一致(反小沢,親小沢),大連立などが論じられている。昼過ぎには,投票結果が判明すると云う。

  古い体質から脱却していない

テレビ番組を通じての感想であるが,全く自民党時代と同じような永田町の数の論理での戦いで,政策論争には全くなっていない。対立構図が殆ど無く,いずれの問題にも各候補者の主張の違いが殆ど見られない。

増税問題は,いずれ増税が必要だが今はその時期ではない,景気回復が優先するとのことで全員一致。マニフェストの見直しも,口を揃えて理念は尊重し継続させるが,部分的に見直しはありうる。海江田候補だけが,小沢元代表のマニフェストは国民との約束なので尊重する考えがやや強いか。挙党一致は民主党内部でゴタゴタしているのは良くない,こんな時期には全員が一致協力して当たるべき,とこれも口を揃えているが,やっていることは,小沢元代表を復活させるか,そうさせないかの数の論理でしかない。

何がして,かくも古いやり方が続けられているのか?自民党時代に見られたように,見えないところでの密室政治に近いやり方が横行している。これもマスコミの情報でしかないが,小沢元代表は別の候補者,西岡参議院議長や原口元総務大臣を押そうとしていたが,鳩山元総理との話し合いで,いずれも消え,消去法で残ったのが海江田氏になったとも聞く。要するに,小沢元代表が一番扱いやすい人を総理大臣に据えて,陰からあやつろうとしていることが見え見えである。

私も含め,古い自民党の体質よりも,新しい活気ある民主党に一度政権をやらせた方が,日本の将来にとって良いのではないかと,多くの人が思い,2年前に政権交代が行われた。その期待は完全に裏切られている。特に,小沢さんの声を聞くと,力のあることは判るが,やり方が自民党のやり方そのもので,金とコネの派閥論理をむき出しにしている。国民が期待したものとは掛け離れている。今回の代表選挙も,本当にこの人ならば,日本の将来が託せると云う人がいない。ここのところ,総理大臣になった顔ぶれからも居ないのに,今回求めるのは無いものねだりなのかも知れない。

  国民が選ぶ総理大臣か?

一般人にとって,単なる民主党の代表ではなく,総理大臣を選ぶ選挙なのに,永田町の代議士だけで決めるなんて,国民の意思を反映していないのではないか,との疑問が残る。一国の総理大臣なのに,国民の声が届かないのはおかしい,のは当然の思いである。

平成になって23年,17人目の総理大臣だとか。要するに1年毎に総理大臣が,目まぐるしく変わっている。民主党の代表選を調べて見ると,偶数年の9月,つまり2年ごとに代表選が行われ,その際は地方票(各県3票だが,ポイントは代議士2ポイントに対して,1ポイント)も加味されることになっている。途中,交代の場合は,両議員総会(代議士だけの投票で)にて済まされてよいことになっているようである。

鳩山元総理,菅総理も総理大臣になるときは,両議員総会で選出されている(昨年,9月には菅総理,小沢元代表の一騎打ちは,地方票も加わった選挙だった)。確かに,国会議員は我々が選んだ代表なので,国民の声を反映していないわけではないが,一旦代議士になるとかなりの人が派閥に入り,国民の声よりも派閥の論理がまかり通る構図になってしまっている。これでは,代議士による選挙は国民の声を必ずしも反映しているとは言い難い。今回も,もし地方票が入ると仮定したら,事前に予想されている今回の各候補の予想獲得票の図式が大きく違ってくると思う。

また,今回のように公示から3日目に選挙となると,政策論争が十分なされるとは言い難く,国民の目で誰が総理大臣として相応しいかと云ったことはできない状態になってしまっている。政治空白の期間をできるだけ少ないようにとの思いは判らないではないが,或いは菅総理が延命を図りすぎた結果とはいえ,一国の総理を選ぶには拙速過ぎる。アメリカの大統領選が1年以上掛けてやられていることと比較のしようもない。日本の今のやり方が,本当に民主主義の政治なのか,疑問を抱くのは私だけではないと思う。

  経済立て直し,外交の強化が必須

国民の願いは,デフレが蔓延,円高,株安の状態からの脱却である。今の状態が続くようであれば,企業活動が益々やりにくく,海外での生産を考えざるを得なくなってしまう。国内の空洞化は必至である。そうなると益々日本は住みにくくなってしまう。以前の高度成長期のような成長率を求めることではないが,やはり経済の成長はある程度必要である。国債の発行ばかりで,政府が借金をどんどん増やしていくばかりで,国債の格付けも一段下げられてしまっている。

これまで幾度かの日本の危機(大恐慌,オイルショック,アジア通貨危機など)を救ったのは,日本人の活力である。この活力の発揮ができない状況が続いていて,危機を脱する道筋が無い。やはり,日本人が活躍できる経済の復活に対する抜本的な対応策が必要である。円高をじっとしている政府の無策,日本銀行の決断力のなさ,本当に自分の生命を駈けて日本を救うような人材がいないのか?3.11の大震災による危機状態,これを逆手にチャンスに活かすアイディアは本当に無いのか?本当に頭に汗をかいて,知恵を出し絞ろうとしているのか?

私など,高度成長時代を生きてきた人間にとって,また技術力で日本の産業に貢献した誇りのある人間にとって,今の経済の体たらくは耐え難い思いである。日本のように資源の無い島国は,優れた技術力で日本を活性化させ,誰もが活き活きと暮らしていた。国民すべて中流意識などと,頑張れば報われる時代だった。昔を懐かしむ思いで言うのではないが,経済の成長は人間の心を豊かにしてくれることは間違いない。成長なくしても心の豊かさはあると言う人も居るが,そう言う人は必ず裕福な人で困っていない人である。多くの労働者,サラリーマンにとって,仕事があることは生活を安定化させることであり,それが幸せの根源である。その土台となる経済の低迷は,当に政治の大きな責任ではないか。口で言うだけでなく,政治家は実行して欲しい。

日本のもう一つの弱みは,外交の弱さである。外務大臣が誰かもはっきりしない位になっている(前原前外務大臣が失職して,その後松本大臣になっているが,顔すら殆ど見ない)。北方領土に対するロシアの圧力,竹島の韓国の侵入,南方諸島での中国の不法侵入,どれ一つに対しても日本として,毅然とした態度で接することをしていない。隣国の各国は日本の腰砕け外交を見下した対応をしてきている。日本人の一人として何とも悔しい思いである。沖縄返還が密約があった,無かったとはいえ,北方領土もいつか沖縄同様に返還されるものと思っていたのに,最近はロシアがどんどん既成事実を作って実行支配をしてしまって,返還が益々遠退いてしまっている。誠に情けない話である。

こんなことを日本がしているから,隣国は益々つけ込んでくる。国益を第一に,隙あらば突くしたたかさを政治家としてもっと持って欲しいものである。これは,自民党政権時代よりもひどく,民主党が最も弱いように見える。

  短寿命内閣の懸念

誰が総理大臣になったとしても,強いリーダシップをもって日本を引っぱって行く人は見当たらない。結局は,政局になるタネを蒔いて,解散総選挙になるのではないか。それまでの暫定的な内閣になってしまうのではないか。国民の民意を問うことは大いに賛成であるが,自民党の体たらくも目に余り,解散総選挙でも日本が良くなるとの確信が持てない。

このエッセイを読まれる頃には,次期総理大臣が決まっているだろう。そして,がっかりされている姿が目に浮かぶ。

政治家よ,これ以上日本をひどくするな!!

 

[Reported by H.Nishimura 2011.08.29]


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