■なでしこJAPAN 優勝おめでとう (No.229)

なでしこジャパンがワールドカップ2011で世界の頂点に立った。今朝の早朝,休日だったのでテレビでライブ中継を観戦した人も多かったようである。24戦一度も勝てなかった(対戦成績:3分け21敗)アメリカに勝ち,頂点を極めたのだった。

私はそれほど熱心なサッカーファンでもないので,朝6時に起き,どちらが勝ったのかとテレビを付けたが,結果の放送がない。どうなったんだろう,負けてしまって放送もされていないのかとチャンネルを廻してみると,8chの関西テレビ(フジテレビ)でライブ中継が入ってきた。延長戦の後半で,得点は2−1でアメリカが勝っている場面だった。良く善戦しているな,しかしここまでかと思った瞬間,残り4分で日本がコーナーキックを取り,宮間選手が左コーナーから蹴ったボールに,澤選手が右足ボレーで流し込んだボールがワンバック選手に当たりボールのコースが僅かに上に変化し,キーパーが止めることはできず同点に追いついた。これは,ヒョッとしたらと思った瞬間だった。

しかし,最後まで試練は続いた。延長戦後半終了間際に,アメリカの攻撃は鋭く,正面突破でゴールされるのでは,と思った瞬間,岩清水選手が必死でスライディングアタックし,あわやペナルティエリア内に入る寸前でアメリカの選手を倒した。もし,このスライディングでの阻止が無かったら,確実にゴールネットを揺らしていたと思われると,日本人選手の執念がそうさせたのだと思う。結局,岩清水選手はレッドカードで退場(初めてだそうである)となったが,見事なプレーの一つであった。

最後の危機であった正面からのフリーキックも何とか阻止して,PK戦に突入した。ここまで来れば何とか勝たせてやりたいとの思いが強くなったが,PK戦はどちらになるか,全く判らず,運も左右するので,静かに見守った。先ず,一番手のアメリカの選手が蹴り,ゴールキーパーの海掘選手が右に跳びながらの体勢から足側にきたボールを,その瞬間反応して右足一本でボールを蹴り出し阻止に成功した。この一本目の阻止は,アメリカ選手に動揺を誘った。それに引き換え,日本の一番手,宮間選手はゴールキーパーの動きを見計らったように,緩いボールを逆側に蹴りゴールさせた。明らかに,日本側が落ち着いたプレーをして,プレッシャーを掛けた。その通り,アメリカの2番手も,上に大きく外し,日本選手も2番手が阻止されたが,アメリカの3番手も左側のコースをきっちり読み取り,両手ではじき返し,3連続失敗となった。この冷静なゴールキーパーの判断力は,称賛に値するものだった。PK戦の結果は,4番手の熊谷選手が左上に決め3−1となり,優勝が決まった。

  優勝する執念が優った「なでしこJAPAN」

優勝までの軌跡を辿ってみると,何とかメダルを取って帰りたいとの思いが選手をチーム一丸とさせ,試合毎に成長させた結果が優勝につながったのではないかと感じる。サッカーにそれほど詳しくもなく,熱心なファンでも無いので,勝因の技術的な内容などはテレビなどマスメディアの解説に委ねるとして,ここまで勝ち上がってきた一番の要因は,最後まで諦めない執念ではなかったかと感じる。

決勝戦のアメリカ戦で代表されるように,先取点を奪われても(後半24分),すぐさま追いつく(後半35分)戦いぶり,さらには延長戦でも前半終了間際(前半14分)に点を取られても,あせらずじっくり攻め後半の終わりに(後半12分)確実に同点にする戦いぶりの精神力は大いに見習うべきところが大きい。チャンスは必ず来ると信じ,自分たちのサッカーを最後までやろうと持続した執念は,何とか最後まで諦めず優勝するんだ,と云う集中力に外ならない。

連覇を狙うドイツで準々決勝で当たったが,唯一負けたイングランド戦の教訓を活かして,早いパス回しを武器に戦い,番狂わせで勝ったことが大いなる自信を持たせたことは大きい。準決勝のスエーデン戦でも,パスミスから先制を許し,このままズルズル崩れるのではとファンの心配をよそに,確実に同点,さらには逆転し,3点目は極めつけのロングのループシュートまで決まった。選手一人ひとりの技がどれだけ世界のレベルに値するのかよく判らないが,チームプレーとしては,選手の誰もが言うように気持ちが通じ合った執念が後押しして盛り立てていると感じずにはいられない。

この優勝は,大震災で沈み込んでいる日本人全員に大きな勇気を与えてくれたビッグニュースである。テレビで繰り返されるゴールシーン,PKでの優勝決定のシーン,これらはサッカーに詳しく無い日本人にも大きな感動を与えてくれた。何度見ても,感激に浸ることができる。特に,15歳から32歳に到る長い道程をこの日を夢見て頑張ってきた澤選手,MVPにも輝いたが,それよりも日本の女子サッカーをメジャーにするとの思いを貫いてきて,それが成就したことを一番本人が喜んでいるのではないだろうか。これもひとえに,彼女のひたむきな執念があったからだろう。

 

世界の多くから称賛の声が上がっているが,日本人に感動を与えた功績は金メダルを獲得した以上のものがある。特に,震災で被害に遭われ,未だ避難所におられる方や,何とか立ち上がろうと頑張っている方々には,前を向いて頑張れば報われる勇気を与えたことは最大の功績であったのではないか。是非,これを機に一日も早く立ち直って欲しい。

大いなる執念が成功を導く

 

[Reported by H.Nishimura 2011.07.18]


Copyright (C)2011  Hitoshi Nishimura