■もしドラ (No.219)
『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』が約300万部売れていると云う。NHKでも先々週と先週の10話に亘って,アニメで放送があった。(ストーリーは,http://www9.nhk.or.jp/anime/moshidora/にある。)
女子高校性の野球部のマネジャになった川島みなみと云う女の子が,マネジャの仕事とはどんなことかと本で学ぼうと,マネジャ,マネジメントの本を探していて紹介された本が,P.F.ドラッカーの「マネジメント」だったと云う設定で,野球少年の究極の目的である甲子園に出場することを,何としても実現させてやりたいと思うマネジャの活動で,一話毎に,ドラッカーの言葉が出てくる。
- 第1話:マネジメントに出会う
- 第2話:マーケティング(顧客対応)
- 第3話:人の強みを活かす
- 第4話:イノベーション
- 第5話:イノベーション(過去を捨てる)
- 第6話:戦略
- 第7話:成果を問う
- 第8話:マネジメントのあるべき姿
- 第9話:大切なものをなくす
- 第10話:感動する
10話を見終わっての素直な感想は,余りにも内容が単純化され過ぎていて,ドラッカーの言葉の重みが十分発揮されていないように感じた。即ち,マーケティングにしても,イノベーションにしても,その匂いは出ているが,深さが全くない。確かに,一般受けするためには,このくらい単純化することが必要なのかも知れない。
川島みなみと云う野球部の女子マネジャが,ドラッカーの「マネジメント」を駆使して,やる気のなかった野球部のメンバーを改心させ,やる気を引き起こし,熱心に練習をして,予選3回戦までしか勝ち進めなかったチームが強くなり,ついに甲子園出場までこぎ着けるのだが,その経緯が次々思い通りに進む展開は,物語としてしかあり得ないもので,もう少し挫折を味わい,それを乗り越える場面など実際の状況を踏まえたリアルなものにして欲しかった。実際,甲子園出場を果たすまでには,もう一歩のところで挫折を味わっている高校がどれだけあることか。
一般向けの内容としての「もしドラ」はこうしたアニメ化されたもので十分かも知れないが,少なくとも技術者で次世代を担う人は,もう少し奥の深いドラッカーの思いを是非学んでおいて欲しい。このエッセイで,是非,その部分を取り上げてみたい。技術者向けの「もしドラ」版である。
[Reported by H.Nishimura 2011.05.09]
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