■前向きな姿勢とバランス感覚 (No.214)

東日本大震災の影響で,日本中が沈んだ雰囲気になってしまっている。もちろん,被災に遭われた方々のご苦労やたいへんさはTVなどの映像でしか判らないが,想像以上のものであろうとお察しする。

チャリティ活動や義援金募集など様々なことが各地で行われ,被災した方々を援助しようと日本中が立ち上がっている。原子力発電の問題は未だに沈静化せず,放射能漏れの騒ぎが発生している。これらに対し,アメリカ,フランスなどから国際的な協力の申し出があり,日本の問題ではなく,世界中の問題にまで大きくなっている。風評被害も様々で,海外では日本中が放射能汚染に晒されているような報道もあり,日本から去って行ったり,日本のものは輸入しない措置を採っている国もあるようである。

こうした事態に遭遇して,我々に今,必要なことは何か?

被災された方々は,途方に暮れ,今日,明日をどうしようかと思われている方も多数あるようで,さらには,今後の心配をされている方まで含めると,数え切れない多数に及ぶようである。そんな方々に,頑張ってください,と云うのが精一杯で,何一つできないもどかしさがある。報道で聞く限りでは,気丈に振る舞っておられる方も多いようであるが,現地の実態は報道されていない,或いは報道できないような過酷なものだろうと想像する。

テレビ番組などで,有識者や行政責任者などいろいろな方が,インタビューなどに応じられているが,いずれも,想定外の出来事が起こった,と先ずは応えられる。確かに,100年,或いは1000年に一度と云われるような出来事なので,想定外であったことは容易に窺い知れる。その想定外の対応がなかなか上手く廻っていっていない状況をどのように判断し,どのように乗り越えるかである。原子力発電の是非の云々の議論も必要ではあるが,先ずは沈静化であって,それからの議論で十分である。

地方統一選挙と重なって,党利党略の議論がされているが,そんな場合ではなく,日本中が一体となってベクトルを合わせ,元通りの活力を戻すのにどれだけのスピードで,どれだけのことをやることによってできるか,と云った議論がなかなかされない。批判,責任のなすりつけあいはうんざりである。日本をどのように復活させるか,それには一人ひとりが何をすれば良いのか,こうした前向きの論調がもっと出てきても良い時期に来ているのではないかと思っている。

人の力は後ろ向きに物事を見ている間は,その力が十分発揮されない。そうではなく,目標を立ててそれを必達するために何をやるべきかを考え進もうとする前向きな姿勢があれば,その力の100%以上が発揮されることが良くあることである。過去のことを振り返ること,或いは起こった出来事から反省することは必要なことであるが,やはり前を向いた姿勢の基本が必要だと思っている。物事はひたむきな前向きの姿勢によって,いろいろな困難を克服してきた事例は山ほどある。困難を困難と思わず,チャレンジングなことが前にあり,それを乗り越えることが自分の力になるとの姿勢で臨めば,必ず視界は開けてくるものである。

そのために必要なことは,やはり全体を見たバランス感覚が重要である。いくら何かをやろうとしても,自分一人の力では何ともできないことが多い。だから,全体を見回した中で,何を一番優先してやるべきか,何を後回しにしてやるべきか,と云ったバランス感覚が必要である。つまり,物事はバランスをとるようになっており,何かを優先すれば,当然後退する部分が出てくる。物事によっては,優先するのではなく,すべてを平等に行うことがバランスが採れる場合もある。この平等と云う考え方も,何を以て平等とするかはなかなか難しい。機会均等が平等ではあるが,弱者を優先するような形で活動するのが平等に近い場合もある。

バランス感覚は人によって,考え方一つで,いろいろ変わりうるものである。しかし,一人ひとりが,自分のためにと考えて行動するより,全体を見回して,どんなバランスでやるべきかを考えて行動することの方が,成果も大きいし,やりがいも出てくるものである。何事も上手く処理されている人は,このバランス感覚が絶妙なのである。他人よりもバランス感覚が勝っているのである。

そうした観点で原子力発電のことを考えても,先ず優先させるべきは如何に早く沈静化させることが最優先なことは誰しも異論が無いはずである。一刻も早く,避難されている人々が元に戻って,安全で安心な生活を取り戻されることである。原子力発電の賛否は,今回の事故を素直に反省して,エネルギー政策含めた日本国としてのバランスを考えて,その上で原子力発電にどれだけ頼るのが必要なのか,との議論である。防波堤も効果がなかったことは事実であるが,今回の津波のようなものを予測して,海岸線にすべて防波堤を作らねばならないような議論がなされるが,それも生活とのバランス,納税などの予算とのバランスなど,何を優先して,何を我慢するか,それでいて生活の安心を与える政策が何かを我々自身が,行政に委ねるだけでなく,考えることではないだろうか。

今,我々日本人に必要とされているのは,前向きな姿勢とバランス感覚ではないか,と震災後のゴタゴタしている状況から感じるところである。

前向きな姿勢を以て,共に頑張ろう

 

[Reported by H.Nishimura 2011.04.04]


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