■東北の大地震 3  (No.213)

被害状況は,2週間目に入るが増え続けている。死者だけでも10000人を超えたとのことで,さらに行方不明が10000人以上居るとのことである。

被災者の避難状況が刻々報道され,ボランティアも多くの人が活動されているようである。しかし,報道されて居る所は,物資も届くようになり,仮設住宅の施工も始まりだしたようであるが,報道されていない避難所,或いは自宅で避難している人には,まだまだ救援物資の届いていないところも多いようである。テレビでは,そうした避難生活での格差が出てき始めたことを取り上げていた。

これだけの広域で,指揮命令が統率されてできることは,先ず不可能である。政府の対応云々とコメンテータがいろいろ注文を付けているが,後から,或いは外から言うのはいとも簡単で,今必要なことは,対応の悪さを愚痴っていても何の役にも立たないことである。そんなことを言う暇があれば,自分でできる行動を何か一つでもやれば良いと思う。野党の面々も,政府しかできないので,我々は手を出せないような発言があるが,とんでもないことで,こんな事態では,与党,野党と言っている場合ではないのである。そんな中,地元の医師などに代表されるように自分が今何ができるかを考え,それで以て自ら行動をされている方々が多くおられることに感動を覚えている。

技術者なので,問題の大きさ,対象は全く違うが,プロジェクトが問題を一杯抱え少しも前に進まない状況を思い浮かべる。たった数十人,これでもプロジェクトでは多い人数になるが,問題を多く抱えると,解決したかと思うと違う問題が出てきて,前になかなか進めないことがある。特に,想定外のことが起こると,心のゆとりもなくなり,リーダ自身もどのように振る舞うべきか判らない状態が一時的に起こることがある。例えが適切ではないが,コントロール不十分の政府の状態と似通ったところが見出される。

広報においても,官房長官からの報告と,原子力・保安院からの説明,それに東京電力からの説明(これは少ないように感じているが)が必ずしも,きっちり連携されたものになっていない場面がある。各々の立場があり,且つ,上下関係があると,言いたくとも言えない,或いは上に対する反論ではないが,自分達の主張を言っておきたい,それも声高ではなく,上から抑え付けられていることを暗にほのめかすようなやりとりも見受けられる。それでも,まだ原子力関連は統率が取れている方で,地方自治体の責任者の発言は,政府に対する不満がくすぶっている感じにとれる。そのことは,それだけ現場第一線のご苦労が大きいことの裏返しともとれる。

知事や市長・町長は,それぞれの自治体の一国一城の主で,重要な旗振り役である。したがって,このような不測の事態に陥っても,それぞれの城を守るために全身全霊を傾けてやっておられるようにみえる。しかし,それらに対して,政府などもっと大きな日本としての旗振り役をきっちりやって欲しいと言う願いが込められた発言がある。この点はなかなか難しい。プロジェクトに喩えるが,知事や市長の思いは,我が県のことであり,我が市のことであって,「部分最適」と言ってしまうと怒られるが,そうした面がなきにしも非ずである。これは使命からして当然のことである。

それでは,政府は「部分最適」ではなく「全体最適」の旗振りをしているかと言えば,必ずしもそうでもない。プロジェクトと違うのは,プロジェクトでは大きな目標に向かってベクトルが合っていない「部分最適」があってはならないのに対して,今回のような事態は,被災者個々人に如何に安全・安心を与えるかであって,これは現場個々で対応策も違い,「部分最適」でしかできないことである。「部分最適」が隈無く行き届いて,その結果,日本全体が復興の気運になれば良いのである。ただ,それぞれの部分に大きな格差が出ないように配慮することは政府としては必要である。

実は,石巻に住んでいる知人の行方が気になっていたが,グーグルの被災者の消息情報のコーナーで,名前を入れて検索したところ,無事だとの書き込みがあり,数日後に本人のメッセージも書き込まれていて,無事であることが確認できた。こうしたこともインターネットの力で,そうした手段が無いと,少なくとも2〜3カ月判らない状態が続いていたのではないだろうか。家族や親戚は別の手段で必死に探すが,所謂知人,知り合い程度の付き合いの人の情報が知り得ることはありがたいことである。改めて,インターネットの力の凄さを感じた次第である。

最後に,先週,最後に書いた被災者に対する実家の提供についてのその後である。電話登録した滋賀県の県庁内の部署からは全く応答はない。彼岸で実家へ墓参りに行き,この際と女房が実家の後片付けをしてくれたが,なかなか他人に貸そうとするとたいへんである。いざ貸す段になれば,町役場の協力と云うか,お世話になることもあろうと,町役場へ届出に行った。役所の対応からは,切羽詰まった緊急性はそれほど無く,民間よりも公営の施設の空きを優先されているようで,まだまだ公営の施設があるような話だった。私どもの提供申し入れの気持ちはありがたいと感謝をされた。中には下宿のように一緒に住んでも良いとの申し出もあるとのことだった。

ただ,残念だったのは,県として受入を宣言されている割には,窓口として,聞かれたことは,住所,電話番号,貸す期間,賃貸料(もちろん無料)程度で,そこらにある紙切れにメモ書きで受け付けされた。ルールが定まっていない緊急のこととはいえ,受入の宣言をされて1週間程度が過ぎており,全く初めての申し出者でもなかったはずなので,少なくとも,こうした受入の申し入れを受け付けるのならば(逆の立場だったら),すぐテンプレートを作って,聞く内容を一覧表にして,整理しやすい形での対応をするのに,と思ってしまった。技術者ならではの発想かもしれないが,役所の対応の仕事ぶりを感じた一面だった。

 

被災された皆さんの一日も早い復興を願う

我々でできる援助は僅かであっても協力したい

 

[Reported by H.Nishimura 2011.03.21]


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