■プロジェクトについて 7 (No.209)
プロジェクトについて数回に亘って述べてきたが,最後に,プロジェクトリーダとして,どうすればプロジェクトは成功させることができるかについてまとめてみる。
リーダとして成功させる自信をもって進めること
リーダはプロジェクトの先頭を引っぱる存在であり,自信を持ってことに当たることが大切である。自信の無いリーダの下ではメンバーの力も十分発揮されない。先のことは誰も100%確信は持てないが,進むべき方向がはっきりして自信を持って進むリーダには,メンバーも安心して従って行く。カラ元気は,メンバーにも直ぐ見破られるが,この道を進めば成功の確信が持てると信じて,一生懸命やっているリーダの気持ちは,人である以上,以心伝心で伝わるものである。
これはリーダ一人でなく,大きなプロジェクトではサブリーダでも同じである。つまり,部下を持ったリーダすべてに当てはまることである。リーダはメンバーを選ぶことはある程度できるが,メンバーはリーダを選ぶことはできない。プロジェクトは人の行動で成否が決まる。だからメンバーの一人ひとりが100%以上の能力を発揮してくれれば,必ずプロジェクトは成功する。そのメンバーの力を引き出すのも,力を閉じこもらせるのもリーダの一挙一動のしぐさに掛かっていることが多い。
自信のあるリーダには,自然と良いメンバーが揃う。或いは,自信のあるリーダだから,良いメンバーにみんなが変わるのかも知れない。リーダとしては,少なくとも自信の無い言動は厳に慎むべきであり,プロジェクトの成功には何の益にもならないことを心得ておくべきである。
目標を明確に,デッドラインを設定して進めること
行く先のプロジェクト成功の暁にあるもの,つまり明確な目標が定まっていることは,プロジェクト成功の重要なポイントである。それは,メンバー全員が指示命令のみで動いているのではなく,ある程度自律した一面を持っている。つまり,必要に応じて上司に相談するまでもなく判断しなければならない場面は多い。こうしたとき,目標が曖昧だと判断がブレる。行く先の方向に合っているかどうか,各人が判断できるような環境になっていなければならない。
ところが,目標は明確だがなかなか思い通りに進まないことはプロジェクトでは良くあることである。当初計画したことが不十分だったり,内外の環境変化があってそれへの対応が必要になったりと,順風満帆なプロジェクトの方が少ないと云って良い。そうすると,行く先は明らかだが,ズルズル遅れが生じて,計画した予定の日程に間に合わないことが生じる。1W,2Wと遅れが拡大していくと慌てだして,緊急な対応を迫られることになる。これが多くのプロジェクトの実態である。
ではこれを回避するにはどうするか。プロジェクトには最終完了日程以外に,マイルストーン(中間目標)が設けられているのが一般的である。このマイルストーンを確実にクリアさせることで,そのためには,目先(直近の)マイルストーンをデッドラインにおくのである。1Wや2W程度ではなく,2カ月程度先のマイルストーンである。これをデッドラインにおいて,これが遅れればプロジェクトがご破算になってしまうと想定して,検討することである。そうすれば,事前に何をしなければならないかが明確になり,メンバー自身も自分たちが何をしなければいけないかを真剣に考える。
おしりに火がついた状態(デッドラインが見えた)になれば,人は真剣に考え,行動するようになるものである。この人間の習性を上手くプロジェクトに活かすことなのである。人は逃げ場が無くなると,知恵を出す。それもリーダ一人でなく,メンバー全員の知恵である。これほど心強いものはない。
要するに,プロジェクトの遅れは,多少の遅れは仕方がないとプロジェクト全体に蔓延していることで,特にプロジェクトの初期はこうした雰囲気が漂っている。最初だけなら良いのだが,その雰囲気はいつまでも改まらず,終盤にまで続くケースが結構多い。こうしたデッドラインを設定して進めるやり方は,意外と行われていない。DRなどでも,簡単に後にずらす。適当な言い訳けを見繕って・・。
先手を読み,成功するに必要なことを挙げ,確実に達成していくこと
先手を読むことがなかなか難しい。あれも問題だ,ここにもリスクがあると,遅れそうな要因を探す。リスクアセスメントもマイナス要因を見つける手法で,そのマイナス要因が起こらないようにするために予め手を打つことを推奨している。
ここで云いたいのは,マイナス要因を探すのではなく,プロジェクトを成功に導くために何をせねばならないか,つまり,このプロジェクトの重要成功要因(key Factor for Success)は何かを先ず明確にすることである。つまり,このことはプロジェクトの成功の暁にある姿と現状とのギャップが何かである。このギャップを埋めて,目標への階段を上がるためにやるべきこと(これは課題とも云えるものである),それが何であるか,計画段階で明確にすることである。
この重要成功要因を確実に実施する方法を,戦略的に計画段階で練り,確実に実施できる方策に導くことである。プロジェクトの一般的な進め方の書籍には書かれていない。それは,プロジェクトリーダにもいろいろあって,いきなりこうした戦略的な考え方を求めても,できないからかも知れない。しかし,ベテラン,或いは何度かプロジェクトを経験したリーダにとっては,この戦略的な考え方が,プロジェクトの成否には非常に有効なもので,これが確実にできるリーダは成功率も高い。
謂わば,プロジェクトの計画段階で,クリアすべき課題が明らかになることなので,後は如何にして実行するか,戦術的な工夫をすればよいのである。この戦術的なものは,リーダではなく,メンバーの中からも良い案が出される機会は大きい。こうして,課題を着実に実施することが,目標への階段を上がる一番近道なのである。
ベクトルを合わせ,小さな成功を積み上げること
以上のようなやり方で,メンバー全員のベクトルを合わせて進めることで,このベクトル合わせがなかなか難しい。つまり,2,3人の少人数であれば,リーダの一声で済むし,10人程度までであれば,リーダからもメンバーの行動が把握できるので,ベクトルが合っているかどうかも確認が容易である。10人を超えるとベクトル合わせがなかなか難しく,間にサブリーダ(10人までの小グループ)が入って進めることが出てくる。
そうなると,リーダからサブリーダへの指示,サブリーダからメンバーへの指示となって,間接的な指示だけでベクトルが少しずつズレが生じてくる。このサブリーダは数人(つまり,メンバーが50人を超える)にもなると,サブリーダ間でも行き違いが生じ始める。部分最適の固まりが幾つかできてくる。ここで,リーダがやるべきことは,最終目標を明確にしておくことで,これが揺れると,途端にサブリーダのグループのベクトルの方向が狂い始める。
次に,大きな最終目標はずっと先のことで,頑張っているがなかなか先が読めない状態に陥る可能性がある。そこで,直近のマイルストーンなどを目標にして,確実にクリアしていく方法を取ることである。これによって,サブグループは,小さな成功体験を積むことができ,自分たちのやったことの成果を実感する。この成功の実感が非常に重要で,この感触が次への成功へ繋がる。ここをズルズル成功した実感を持たない状態で進めるのでは,その後のメンバーの活動の差に大きく現れる。
最後は,諦めない執念を持っていること
これはプロジェクトを成功させた者の実感である。プロジェクトに諦めは禁物である。つまり,どのような状態になってもリーダが諦めてしまうことは一番いけないことである。絶対に成功させると云う執念は,プロジェクトが終わるまで持ち続けて欲しい。
プロジェクトを成功させたことの無いリーダは大抵,途中でギブアップしてしまって,日程を遅らせたり,費用をオーバーさせたりして終えることが多い。この成否の違いは,執念である。リーダには,このプロジェクト成功への執念を持ち続けることが,必ず成功できる源泉であることを忘れないで欲しい。
プロジェクトがどうしようもない状態に陥ったときでも,この執念があれば,必ず味方が現れる。それは,力強いメンバーであったり,外部環境の変化であったり,時には,製品そのものが答えを導いてくれる。プロジェクトとはそうしたものなのである。
プロジェクトの成功のコツは当たり前のことを当たり前に実行すること
リーダの明確な方向付けがメンバーを鼓舞し,より良い方へ進むことを信じてやり切ること
[Reported by H.Nishimura 2011.02.28]
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