■プロジェクトについて 6 (No.208)
プロジェクトの進捗管理は重要で,これが上手く廻らないとプロジェクトの成功は難しい。そこで,一般的には仕事の内容を細かく分解してその一つひとつの仕事(タスク)に担当者を割り当てて計画を立てる。所謂,WBS(Work Breakdown Structure)と云われる作業分解で,これをしっかりしておかないと,タスクの漏れや抜け,或いは手待ち状態が発生するなど,仕事がスムーズに進まなくなる。一般的には,計画段階で一番業務内容を把握した者が,タスクを分解して漏れや抜けをチェックして作り上げる。
もちろんこの場合,その前提としてプロジェクトの完了目標時期があって,それに対する大きなマイルストーン(中間目標)がある。このマイルストーンに合致するように検討する。このWBSを引くことは,プロジェクトの計画段階では必須要件で,それを簡単に作ってくれるツールもある。例えば,有名なツールにMS-Projectと云うソフトがあり,これでタスクに分解して,タスクに必要な日数を入れ,従属関係を示し,リソースを充てると,自動的に計画を作ってくれるツールである。これは,さらにリソースの負荷状態も直ぐに判るようになっており,リソース配分も均一化できるものである。
このツールが無い状態では,エクセルを駆使して作ったりしながらプロジェクトの進捗管理が行われている。実際,MS-Projectのまだ無かったときや或いはできてからも高価で,エクセルで管理することでも十分なことが多く,未だにエクセルを使ってやっているプロジェクトも多い。また,エクセルを使いこなしてマクロを使って工夫したりされているのもよく目にする。但し,このようにエクセルでも十分管理はできる状態になるが,専用では無いだけに,作成者が考えながら,或いは管理者が注意を払いながら使っていることが多い。
ところで,MS-Projectのようにプロジェクト管理のツールがあるからと云って,管理が上手くできる訳ではなく,やはりプロジェクトの進捗管理は,管理すべき人が,きっちり状態を見ながら進めるべきで,ツールが自動的に管理をやってくれるものではない。逆に,ツールを利用して進捗管理をしていると,一見上手く管理できているように見えるが,決してそうではない。タスクの従属関係や,クリティカル・パスをきっちり示し,問題がないように並び変えるような示唆はしてくれるだけであって,それ以上の強力な武器では無いように思える。つまり,変化の多い,いろいろな条件変更や環境変化,遅れを取り戻す挽回策などプロジェクトは生き物で,それに上手く対応し,判断を下しながら進めるのがプロジェクトの妙味であって,自動化できているので上手くことが運ぶことは決してない。
その点を十分把握しておいて,ツールを利用し,或いはツールを見て判断するには,ツールに十分慣れ,活用できる状態にしておくことが必要であり,ツールに振り回されているようでは話にならない。その上で,上手くツールを利用することである。MS-Projectのツールは謂わば真剣の刀の切れ味がある。それを慣れない人が振りましては危なくて仕方がない。そうした慣れない人には真剣の刃ではなく,竹刀か木刀(即ち,エクセル)を使えば十分なのである。これで十分戦える(プロジェクトの進捗管理ができる)。
よく論議があるのが,MS-Projectを購入する決裁時で,こうしたツールで上手く進捗管理をしたいと購入決裁を上げる。もちろん,リーダ自身が自分一人だけ使いたいと云うのはまだしも,同じツールをメンバーと共有しないと上手く管理ができないのでライセンスを何本か合わせて購入したいと云うケースがある。こうした場合,よほどメンバー全員が複雑に絡み合って仕事を進めなければならないので必須のツールだと云う場合は殆どない。リーダがみんなに使わせたいので購入するか,或いは進捗管理がなかなか思わしく行っていないので,ツールを利用しようと誰かが先陣を切って提案している場合などで,その後みんなが本当に上手く活用されている例は余り見ない。
つまり進捗管理はツールに左右されることは殆どなく,リーダ自身の意識の部分が大半で,進捗管理をきっちり廻そうと云う意志がどれだけあって,その思いがメンバーにヒシヒシと伝わっているかどうかである。上手くツールを使いたいリーダは,使えばよい。難しくて,或いは慣れないので面倒と思うリーダは使わないで,自分の一番管理しやすい方法を取ればよいと思っている。
プロジェクトの進捗管理は上手くいっていますか?
ツールの善し悪しではなく,リーダの管理意識(上手くPDCAを廻す)が一番ですよ
[Reported by H.Nishimura 2011.02.21]
Copyright (C)2011 Hitoshi Nishimura