■プロジェクトについて 5 (No.207)

プロジェクトは成功した事例の教訓が本当は必要で,そのやり方を上手く活かすことが本当は一番重要なのではないか,と思っている,と述べたので,私の少ない成功事例を紹介しておく。

先ずは最初の計画段階であるが,必ずしも完了目標とした日程の全工程すべてがきっちりとWBSに落とされている必要はない。但し,大きなマイルストーンはメンバー全員で共有する必要があるので,それは明確にしておくべきである。

プロジェクトは成功例が必要で,先ず第一番目の身近なマイルストーンまでの詳細なWBS(少なくとも2,3カ月)は綿密に,担当者一人ひとりがやる業務を明確にして,それらが上手く進むことで,第一番目のマイルストーンがクリアできる計画にする。2,3カ月の計画だと,どこがクリティカル・パスになっているかも,リーダからもよく判る。そうしたクリティカル・パスの担当者の性格など含めた完遂できる割合を読むことである。リスクを感じるなら,その時点で,1週間程度のバッファーを持つか,或いはバックアップできるメンバーを想定して準備させておくことは必要である。

これは所謂デッドラインを定めて進むやり方と同じで,ここが崩れれば,プロジェクトの遅延は回避できないからで,先ずは起こらないような回避策,或いは,発生したときの対応策を予め検討しておき,その納期を死守することである。こうしたデッドライン的な考え方を導入すると,そのために今からやるべきことはどんなことがあるかと知恵を働かせ,考えることができる。つまり,そうした考えが深く,広くなってくると,戦略的な思考方法になってきて,上手く行くケースが多い。リーダがそうした先読みをしていると,その中にいるメンバーもこの人の指示に付いていけば安心できると思う。それだけで,モチベーションは上がるし,120%の力を発揮することができることになる。

それほど難しくないことであるが,失敗する人との差は何か? きっちりと一つひとつ成功事例を積み重ねて進んでいくか,開発など未知な要素を含むものは,多少の遅れは容認しないと,と大まかに考えるかどうかで,それほど大きな考え方の違いは無いのだが,やはり着実に一歩ずつ,小さな成功例を重ねながら進めていくのが,結果的に成功する秘訣である。

また,マイルストーンに対して,リスクをコントロールしながら,未然防止の手を次から次へと打っていくことも上手いやり方である。リスクは目標を明確にするから想定されるのであって,目標が曖昧だとリスクも判らない状態が多い。プロジェクトでは進むにつれていろいろな状況変化もあって,問題点が発生したり,新たな課題が目の前に現れたりと,変化がつきものである。しかし,これらを事前に察知してリスクとして取り上げ,発生を回避する策を打つのと打たないのでは,大きな違いがある。事前に察知して,回避したり,起こったとしても事前検討しているので,対策が容易に行える。プロジェクトでは,こうしたことがよくある。こうした先読みの鋭さを持った人と,希望的観測を根拠に起こらないと判断できない人との差は計画の冒頭ではそれほど差がなくても,プロジェクトが進んでいくと,歴然とした差となって現れてくる。

課題は考えることなく,発生してくるので,どんな課題かと考えることをしなくてもよい。しかし,リスクは事前に察知することなので,考えないと判らない。もちろん,リスクにしろ,課題にしろ,その対応策,回避策は考えて検討する必要はあるが,リスクとして事前から考えておくことは,対応がスムーズに行え,リーダの指揮命令の善し悪しを左右することでもある。

 

プロジェクトの成功の事例を学び,上手く活用しよう

 

[Reported by H.Nishimura 2011.02.14]


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