■プロジェクトについて 4 (No.206)
開発の企画・計画段階で経験者からの教訓,レビューを受ける場面がある。
こうした場合,経験者は自分がプロジェクトで経験したことから,いろいろな面でアドバイス・忠告をする。一方,これからプロジェクトを担当する側にとっては,進んで意見を伺う場合もあるが,ルールやこれまでの慣習上やっておかなければならない義務のように感じながら,ご意見を伺うと云う場合もある。どちらにせよ,早い段階でのこうしたアドバイスは有効であり,活かすつもりでやらないと意味はない。
こうした場面での指摘の多くは,全体の計画や企画内容から,この点に問題がありそうだとか,ここは過去の経験からして見直しておく必要があるのではないかとか,或いは,ドキュメントそのものの書き方が拙いなど経験から,或いは失敗したことの反省からの発言である。ここはこうしたことをやっておけば,上手く行ったので,是非そうすべきではないかとか,このようなやり方をすればプロジェクトが成功するはずだ,と云った指摘は余り聞かない。
元々の目的が,レビューで指摘をしてもらうことなので致し方が無いのかも知れないが,後ろ向きではないが,問題点や課題をあばくことが主流である。
レビューして貰う経験者にも依るが,過去いろいろな失敗をしたことから,いろいろ事前に指摘してあげようと云う気持ちはありがたいが,私のこれまでの経験からは,失敗したプロジェクトからの教訓は,どちらかと云えば誰もが判っていることに近いことが多く,判っていても上手くできずに失敗したことで,それをどのように克服できたかを語ってくれない。つまり,失敗したままでの反省である。得てしてこうした経験者は同じ失敗を繰り返している。だから,同じ失敗をしないようにと言っているだけである。
プロジェクトでの失敗から学ぶことは多い。しかし,学んだだけで実行できないようであれば,私に言わせれば学んだことにはならず,反省した(これも怪しいが)だけに過ぎない。つまり,多くの経験者が語るのは,失敗の記憶の方が鮮明に残っているので,それを元に発言していることが多い。成功した事例もあるのだろうが,なぜ上手く行ったのかはよく判っていない。或いは,たまたま条件が揃っていて上手く行っただけで,失敗を反省した上で克服することはできていないのではないか。
つまり,プロジェクトは成功した事例の教訓が本当は必要で,そのやり方を上手く活かすことが本当は一番重要なのではないか,と思っている。端的な例は,例えばいろいろな問題点を指摘されたとき,貴方ならこうした問題をどのように克服されたか,その具体事例を教えてください,と尋ねればよい。そうしたとき,明解な応えが出てくる体験者であれば,学ぶ価値は大いにある。大抵は,それは君たちが考えることだとか,それは事前に回避する策を検討しておくべきだとか,云った一般論で片付ける体験者は,本当に克服はできていないと思ってよい。
一般論で,プロジェクトは小さな成功を積み重ねることだ,と云われている。この原理は,小さい成功事例を持てば,どうしたら上手く行ったかと云う体験をメンバー全員が持てるからである。だから,次の目標に向かって頑張ろうと云う気持ちになる。それが,予定していた通りのことができずに遅れてしまうと,何とかしなければならないと云う気持ちだけが空回りする。メンバー全員がそう云う気持ちになればまだしも,メンバーの中にはリーダはいろいろ言ってるが,多分できないだろうと思っている人が少なくない。こうしたことでは,次も上手く行かず,結果的にはダラダラ遅れてしまうことになってしまう。つまり,一度リセットして,小さな成功事例を作らない限り上手く行かない。
つまり,早い段階での体験者からの教訓やレビューを活かすには,指摘された課題や問題をどうして克服するか,と云う観点で捉えることが必要である。良い克服策を伝授してもらえばそれに越したことはない。少なくとも自分の頭の中でよく考え,戦略を練って,克服できるストーリーを描き,メンバー全員と共有して計画に盛り込むように努めるべきである。
プロジェクトの早い段階で,体験者からの教訓を克服する策を考えよう
その克服策を計画に盛り込もう
[Reported by H.Nishimura 2011.02.07]
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