■プロジェクトについて 3 (No.205)
話が少し前後するが,計画段階についての視点でポイントを述べてみる。
私自身,新製品企画書は作成したことはあるが,開発計画書なるものをきっちり書いたことはない。それはハードウェア中心の新製品開発(少しはソフトウェアの部分も入っていたが)だったからかも知れない。或いは,新規開発の要素が大きく,開発目標も明確ではあるが,できるかできないか未知数の要素が大きく,そのチェックポイントまで開発して,その時点で次の判断をすると云った開発形式だったからかも知れない。
ソフトウェアの開発では,ソフトウェア開発計画書なるものが作られる。これは,前述したように最後の目標までの工程が明確になった設計プロセスの工程だからかも知れない。また,ソフトウェアなので,ハードウェアと違って,その進捗が物理的に見えず,ドキュメントなどで結果を積み上げていく開発だからかも知れない。いずれにせよ,計画段階でソフトウェアの開発計画書なるものが作成される。その構成は,各々多少の違いはあるが,次のようなものである。
- 開発概要(システム),特長
- 開発体制
- 開発日程(マイルストーン)
- 開発規模
- 人員計画
- 開発環境
- 評価体制
- 品質目標,品質計画
- 構成管理
- 制約条件,前提条件
これらの内容は,計画書でドキュメント化することで,目標に対して開発計画,工程を明らかにすることであり,情報共有と云う意味でも非常に優れたやり方であると思う。ところが,リーダ含む開発者は,計画段階から結構忙しく,こうした書類の整備に時間を採るよりも,開発に必要なシステム仕様書や機能仕様書を書く方が大事だと感じていて,DRの審査向けにまとめる義務があるから,仕方なく作らされているとの感じを持っている人が少なくない。
そこで,開発計画書のポイントとしてまとめてみる。
狙い
プロジェクトの基本となる計画を作成し,目標を定めるものであって,この計画に沿って実施できれば,QCDバランス良くプロジェクトを成功に導くものである。また,この計画と実績の差異をきっちり分析し,次のプロジェクトに活かせるデータ蓄積にもなる。
作成のポイント
1.プロジェクト成功への道標
・成功に導くストーリーが出来上がるように,戦略的な思考を駆使し,よく考えること
→ そのためには大局的な見方ができていること
・計画の立て方がプロジェクトの成否のカギとなる
→ プロジェクトのスタートは計画。その計画が重要。
・リーダが自信を持った計画にすること
→ メンバーのモチベーションを左右する2.リスクが明確になっていること
・全体を先読みして,リスクがどこにあるか明確にしておくこと
→ 最低限,クリティカル・パスが判っていること
・リスクの未然防止を考えておくこと
→ 日程に必ずバッファを設けておくこと
(バッファが取れない場合は加速計画を組むこと)
→ リスクを予め検討しておくことが,タスクの実行に余裕をもたせることになる3.変化に対応した修正が掛かること
・計画書はプロジェクトのPDCAの源であり,状況変化に対応できること
→ プロジェクトに変化は付きもの。作り放しはNG。常に管理状態にあること
・スピードを念頭に置くこと
→ DCP(Decision Check Point)を設け,デッドラインの設定を常に心掛けること
→ 素早い判断ができる環境にしておくこと4.経営成果に結びつくこと
・計画書の狙いをよく理解し,経営成果に結びつく視点を意識すること
→ 管理のための指標,報告だけのための指標は不要
・次のプロジェクトに活かすことを前提に作成すること
→ プロジェクトの成功は計画通りにできること
→ 目標精度がスパイラルアップすること最後の経営成果について,言われると理解できるが,真に理解できている人は少ない。経営成果に繋がらない仕事は良くなるよう改善すれば良いのである。それが経営者がプロジェクトに求めていることであり,プロジェクトとして進める意味があることなのである。
以上のようなことを十分理解して,作成されたソフトウェア計画書は,自分たちのプロジェクトに非常に役立つと共に,次世代へ繋がるデータ蓄積にもなり,開発精度が高まり,成功確立が上がることになる。
プロジェクトの計画段階の,ソフトウェア開発計画書を重要視してみよう
よい計画は,よい結果をもたらす
[Reported by H.Nishimura 2011.01.31]
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