■プロジェクトについて 2 (No.204)
プロジェクトは立てた目標,及び計画に沿って実行するが,実際始まってみると,当初計画したことと違った場面に幾度となく出くわすことになる。そうした環境(内部・外部共に)の変化に如何に素早く対応し,計画通りに実行するか,その上手い舵取りがプロジェクトリーダには求められる。
新製品開発などのプロジェクトでは,新製品開発のプロセスが決められていて,それに沿った形で進めることが求められている。それは,先人の過去の経験のノウハウが凝縮されたもので,そうしたプロセスを踏まずに新製品開発をすることは,許されないし,たとえ遵守しないでやろうとすると,必ず抜けや漏れがあって上手く目標に到達しない。
ただ,そのプロセスも単に遵守すれば良いと云うものではなく,プロジェクトの規模などを加味して行わないと,規定は守ったけれど時間や費用が余分に掛かってしまうこともあり,本来の規定や基準の狙いがどこにあるか良く理解して対応することが必要である。一般的に,途中のプロセスに必ず,デザインレビュー(DR)と云うものがあって,開発者だけでなく,これまでの経験者などを加えた形で,途中経過を吟味する工程が設けられている。そのタイミングは,当初計画でマイルストーンとして設定される。
このDRなるマイルストーンは,その時点でパスクライテリアに相当することができていなければ,最終目標の必達が危うくなるとして設けられているもので,必ずパスしなければならない関門である。関門となると,人間は不思議なもので,何とか上手くくぐり抜けようとする。そのパスクライテリアを達成するために,遅れていると,DRのタイミングが遅れてしまう。そうして何とかパスすることが目標となってしまう。しかし,本来,タイミングをずらさずに実施できないと,後の日程が危うくなることで,遅れた時点でしっかりした挽回計画を立て,確実に挽回できる計画にしなければならない。
ところが,プロジェクトが慢性化し,遅れが出ることも常態化すると,ますますくぐり抜けるために,と考えてしまう。遅れがあると云うことは,川でたとえれば,流れに押されている状態で,定位置からずれてしまっていることを物語っている。通常,1カ月程度の遅れは,1年間以上に亘るプロジェクトの場合,良くあることであるが,それ以上の大幅な遅れは,なかなか挽回が難しい。プロジェクトリーダもそうなると,何とか取り戻そうと,気ばかり焦って,冷静な判断を失い勝ちである。
つまり,きつい川の流れに立って必死に定位置から遅れないようにしている姿で,それに耐えることが精一杯である。この流れに対抗して,計画した元の状態に戻そうとすると,相当なエネルギーが必要である。多くのプロジェクトリーダは何とかして挽回しなければいけないと焦りの気持ちが先行して,本来冷静に判断してやるべきことをやれない状態に陥っているケースが多い。そうしたプロジェクトリーダに遅れを取り戻せと叱咤激励しても空砲で,挽回計画が立てられたとしても,挽回が確実視できるケースは少ない。
要するに,早い流れの中では,流れの中での判断で,立ち止まって冷静に流れを見直すことは不可能に近い。そのことをきっちり見抜くのがDRのタイミングでもあり,指導に当たる上位層は,そのままプロジェクトリーダの言葉を信じてやらせるか,それとも言葉を鵜呑みにせず,自ら現場に立って状況を見定め,どうすべきか判断をすることがマネジメント層の役割である。マンネリ化しているプロセスでは,責任を下に押しつけるだけで,マネジメント層が自らの判断を放棄していることが多い。DCP(Decision Check Point)にならなければならないDR監査が,上への状況報告だけで終わっている例を幾つか見てきた。
こうしたやり方では,プロジェクトの成功はたまたま上手く行くケースもあるが,殆どはQCDのいずれかが,或いはすべてが破綻していることの方が多い。プロジェクトリーダは,プロジェクトを成功させるしっかりとした目標をもっているのは当然であるが,次期マネジメント層として,経営的な視点,特に,QCDのバランスの取れた運営をすることが求められているのである。どうも,プロジェクトリーダが小粒になり,あたえられたミッションが,技術面だけとか,スケールが小さくなっている感じを受けている。
プロジェクトの進行に変化はつきもの,その対応は必須要件
デザインレビューでは,マネジメント層がDCP(Decision Check Point)として判断を下そう
[Reported by H.Nishimura 2011.01.24]
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