■プロジェクトについて 1 (No.203)
会社では組織で仕事をするのが一般的であるが,技術においてはプロジェクトとして,組織横断的に仕事をすることがよくある。このプロジェクトについて,いろいろな場面を考えることにする。
先ず,プロジェクトが始まるスタートは,書物などで書いてあるようなスマートなキックオフができるプロジェクトばかりではない。2,3人で企画検討している中で,これは商品的に魅力あるものになりそうだと上位層が判断すると,プロジェクトとして進めろ,と云うこともある。或いは,中期計画的な,このタイミングではこの商品開発をやるべきと決められた計画に基づいて,要素技術開発から進めるものもある。多くのプロジェクトは最初から,十分なリソースが与えられて進められることの方が少ないかもしれない。
謂わば,初期段階はプロジェクトとして成り立つかどうかを決めかねている場合も多い。したがって,リソースは不十分なままで様子を見ながら増強を図ろうと上位層では考えていることだってよくある話である。或いは,プロジェクトは,通常,組織横断的に人を集めて発足するので,暇で手の空いている人ばかりではない。他の仕事をしている人を横から抜くようなことになるので,発足時には間に合わないことだってよくある話である。理想的なプロジェクトは,発足時に必要なリソースがきっちり揃って,計画を立ててキックオフするのであるが,限られたメンバーで,先ずキックオフすることが多いのが実情である。
プロジェクトのキックオフは,あまり明確な形で行われることが無いことも多く,通常,企画段階である程度全体像の把握もでき,計画の立案ができた頃に,企画会議とか,開発会議,或いは,デザインレビュー的な形で,計画についての決裁を採ることが,正式なスタートになることもよくある。
この企画段階での計画は,大雑把で,新しい開発要素が多いものほど,見通しがなかなか立てられないもので,量産時期の目標など,スケジュール的なものからマイルストーンを定め,いつのタイミングまでに決めるべきこと,或いは判断すべきことを明確にしておくことで,スタートしながら修正を加えていく新製品開発もある。
ところが,不思議なことにソフトウェアに於ける開発では,一般的にプロジェクトの期間すべての計画を綿密に立てることが行われている。通常,ハードウェアの新製品開発では,未知な開発部分があれば,すべての期間の計画がWBSのような形で立てられる筈がない。ソフトウェアの開発では,ハードウェアでの新製品開発はなく,むしろ設計をすることに相当しており,設計であれば,どのような手順でどれだけの人数でとWBSの詳細な部分まで決めることができる。ソフトウェア開発でも,経験が全く無いものは,WBSを引くことができないはずで,WBSの計画がすべての期間立てられることは経験したことのある設計と言えるようである。
ところで,計画段階でリソースから導き出したWBSでの日程と,要求される完了日程が合致しないことがよくあある。通常一般的には,上位層が決めた日程を守るとか,或いは営業が市場競争の背景から要求される日程に合わすように決められるとか,開発者で計画した日程を修正して合わせ込むことが多い。リーダ始めサブリーダなどが,しぶしぶそれらの要求を受け容れることが日常的である。もちろん,開発者の計画に余裕が全く無い訳ではなく,予めリスク対応的なバッファーを準備していたものが,削られてしまうことになる。
バッファーが無くなる程度であればよいが,計画を大幅に短縮せざるを得ない状況で,エイヤー的に外部環境に合わせて短縮する場合もある。通常,こうした場合はリーダは使命感でやろうとするが,サブリーダ以下の実務部隊には不満が残ることが多い。無理やり日程短縮させられたと云う思いが残っていると,何か拙いことが発生すると,それの逃げ口上になる場合がある。或いは,元々無理な日程を押しつけられてと云う思いがサブリーダにあると,それはメンバーの指揮命令に影響し,結果的にはメンバーのモチベーションの低下になることだってよくあることである。
こうしたときの考え方であるが,マイナス思考で捉えてばかりいると,上手く行くものもよくならず,悪い方向へ向かう。逆に,日程短縮を無理やりさせられた場合,リソース増強は多少許されるとか,資金的に多く使うことが許されるとか,プロジェクトとしてプラスの面もどこかにあるはずである。こうしたプラス面を上手く利用してやろうと思う強かさを持つことが大切で,こうしたサブリーダの下では,プロジェクトは必ず良い方向に向かう。前向きで,何とかしたいと云う思いが部下に伝わるからである。メンバーからリーダになるとは,こうしたプラス思考の前向きな態度は非常に大切な考え方である。しかし,こうしたことはなかなか書物には書かれていない。そうした場面に遭遇して,その場で云われると,なるほどと腹落ちするものなのである。
プロジェクトについてはいろいろなケースがある
[Reported by H.Nishimura 2011.01.17]
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