■なぜ,考えることができないのか?(思考力不全) 5 (No.193)

次に,「組織・チーム」に於ける思考力不全を考えてみることにする。

  【組織・チーム】

  1.「事実」を的確に捉えられていない

仕事をする中で,問題点にぶつかることはよくあることである。そこでいろいろ原因究明をしたり,その解決策を検討することがある。そうしたとき,よく考えているつもりであっても,第三者的に,「事実」を的確に捉えているかと見てみると,なかなかそうでないことも多い。そうした要因はいろいろあるが,大きく分けて,次のようなことが考えられる。

  @素直にものを見ていない

「事実」を的確に捉えることは,考えることの基本中の基本で,それができていないと,その後の考えそのものが無効になってしまう。しかし,簡単なようであって,この「事実」(本質的な部分)を確実に捉えられている人は意外と少ない。それは,次のようなことだからである。

  1. 一部分しか見ていない
  2. フィルターが掛かってものを見ている
  3. 一方向からしかものを見ていない
  4. 偏見でものをみている

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「自分はそんなことはない。きっちり事実を把握しようとしている」と云う人に限って,実際にはできていないことが多い。つまり,自信家は自分の経験などを下に判断しようとする。その経験が,フィルターを掛けたり,偏見を助長したりしている場合が多いのである。やはり,素直にモノを見ようとすれば,他人の意見なども尊重するなど,自分の見方へのフィードバックも必要なのである。

  A大局的な見方ができていない

これは若い人,経験の浅い人に多い傾向がある。即ち,「事実」は目の前の事柄ではあるが,それはもう少し広い範囲,或いは高い視座から見ると違った見方ができる。むしろ,目の前よりも,こうした大局的な見方をする方が,「事実」として的確な場合が多い。

つまり,目先のことに焦点が集まると,どうしても狭い視野で物事を見てしまう傾向に陥ってしまう。また,全体からよりも,詳細な部分に興味が行ってしまって,肝心なことが見えなくなってしまう危険性がある。よくあることであるが,現場へ行かなくても,情報を少し聞いただけで,上司の方が的確な判断を下せることがある。それは,目の前のことばかりに気を取られている本人よりも,違った角度からの情報をきっちり把握して,そうして現場の声を聞くと,事実の裏側,背景も見えてくるのである。

「事実」を捉えることは,目の前の現象を単に捉えることではなく,その現象の本質的な部分に何があるか,それが重要なのである。そうした,本質的なものを的確に捉える訓練が必要なのである。

 

 (続く)

「事実」を的確に,本質的な部分まで捉えることはやさしいことではありません。

 

[Reported by H.Nishimura 2010.11.01]


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