■なぜ,考えることができないのか?(思考力不全) 3 (No.191)
【会社の文化・風土・習慣】
4.「考えること」を評価する風土が弱い
@結果がすべての評価になっている
物事の良し悪しは結果によって判断される。しかし,結果がすべてでは無いことも明らかで,結果(成果が上がること)が出ることは重要だが,同時にそのプロセスも重要である。つまり,何をどのようにやっても結果さえ出せれば良いのではなく,やはりきっちりとしたプロセスを踏んだ上で結果を出すことが大切である。そうしないと,同じように成功することができなく,たまたま良かった,悪かったで終わってしまう。
同じように,結果ばかり追い求めると,各々が結果ばかりを気にして,自分たちの結果が良ければそれで良い,と云った部分最適に走ってしまう危険性もある。求められているのは,やはり全体最適であって,自分たちの仕事のお陰で,後工程が上手く行ったと云う場合も多い。これは,当にプロセスを理解し,評価するからこのようなことが生まれるのであって,プロセスを軽視して,結果ばかり追求するとこうした活動は止まってしまう。
結果オーライのやり方は,結局組織として極めて未熟な状態である。とにかく,やってみて結果が良ければ良い,結果が出なければ悪い,と云うことである。こうしたやり方は「トライ&エラー」と云って試行錯誤しながらやることである。これがすべて悪いと云うことではなく,ときには必要なやり方ではあるが,やはり効率良く仕事を進めようと考えるとき,そうしたやり方は拙い。良い結果が出そうだと云う仮説の下に進めるのとでは結果も大きく違ってくる。
A「考える」よりも「行動する」が評価される
「考えている時間があったら行動をしろ!!」と云うような言葉が飛び交っている職場がある。特に営業など,足で稼ぐことが多い部門ではよく聞かれる言葉である。確かに,職場でじっと考えているくらいなら,顧客に出向いて話をしたり,要望を聞いたりすることの方が余程メリットが大きい。なかなか営業成績の上がらない社員には叱咤激励もあってよく言われることである。確かに一理はあって,経験上からもそのような指導が良く行われる。
営業と云う職業では,それもありだが,じっくり考えることもせず,ただ動き回っているだけでは成果は覚束ない。どの職種でも,先ずはじっくり考えてプランを立てて行動することが正しく,成果も出やすい。ところが,現実はなかなかそうではなく,じっくり考えていることは仕事をしていない,とみなされる職場が多いのである。昨今はパソコンを使って仕事をする機会が多いので,じっと座ってパソコンをしていると,いかにも考えているように見えるがとんでもない。ただ,考えずに黙々と作業を続けたり,メールのやりとりをしている人が多い。そんな人に,じっと座っているばかりではなく,行動をしろ,と云うのとは少し訳が違う。
じっくり考えることを評価されるのはなかなか難しい。頭の中でいろいろプランを練っていても,なかなか形に表せないので,本当に考えているのかどうかが良く判らないのも事実である。仕事はPDCAをきっちり廻すことで,上手く行かないやり方は必ずと云って良いほどPDCAがきっちり廻っていない。一時的には行動派が評価されるケースもあるが,長い目で見れば,やはりきっちり考えて行動している人の方が成果も大きくなるのは間違いない。
5.多様性を認めない
@一つの価値観に縛られている
価値観・考え方が同じと云うことは,仕事上は同じ目標に向かって進む場合非常に重要で,同じベクトルで進めることができ,目標達成も容易に可能な力となり,大きなメリットである。特に高度成長時代はそうしたパワーが全開してフル回転で成長を遂げてきた。ところが昨今の混沌とした状態では,それらは過去の栄光で,現在では通用しないことが多い。つまり,どこに向かうべきか,何をすれば良いかなど,方向を見つけなければならない。そうしたとき価値観が一つだと,新しい発想や考え方が乏しく,それ以上の発展が望めなくなってしまう。
多様性があることは,いろいろな考え方があることで,お互いが刺激しあうことになる。そうなれば,お互いが議論しあい,その中で切磋琢磨されることにもなる。高度成長期には大きなメリットだった価値観の均一性が,この低成長時代には不透明,先行きがわからない中で,取り残されてしまうリスクが高い。つまり,現代には多様性は必須要件になっている。
Aダイバーシティ(多様性)の考えになじめない
しかし,未だに幹部は,どちらかと云えば高度成長期に業績を上げた人が残っている。そうした幹部の頭は,まだまだ多様性には馴染めていない人がいる。「出る杭」的な個性を発揮する場をなかなか認めてもらえない。そうした環境に長く浸かってしまうと,だんだん人間は考えなくなってしまう。こうしたことで,会社・組織の発展が滞ってしまうことになるケースも出てくる。
また,統率力のある,非常にリーダシップの強い組織では,リーダの言うことがすべて正しいとなってしまっていることが多い。ここでは,多様性は回避されてしまう。つまり,みんなが思い思いに考えることを無くしてしまう集団になってしまう。上の言うことだけを聞いて仕事をする方が楽であり,それで何の支障も無いからである。これでは,将来の組織に陰を落とすことになる。
B時代遅れ・組織硬直化の現象
価値観が均一化されてしまっていることは,時代遅れであり,組織が硬直化してしまっているに他ならない。この先行き不透明な時代にそぐわない組織である。誰もが自ら考えようとしない組織では,組織集団の体をなしておらず,ただただ没落して行くのを待っているだけである。多様性が欠落していると云うことは,即ち危険信号が発せられていると理解するのが正しい。
(続く)
「考える」よりも「行動せよ」,ってよくあるパターンではありませんか?
多様性のない危険信号が出ていませんか?
[Reported by H.Nishimura 2010.10.18]
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