■サブリーダの役割 (No.187)

  先を読む

全体を見据えて先を読むことはリーダの仕事であるが,サブリーダも同じである。リーダよりも現場に近い立場なので,現場目線からはリーダよりも優位な位置に居る。だから,現場でこれから何が起こるかは,誰よりも一番良く見えているはずである。そのこれから起ころうとしていることをどれだけ見通せるかによって,プロジェクトが上手く進むか,それとも大きな壁にぶつかって前に進めなくなるかが決まってくる。

そうしたプロジェクトの成否のカギを握るサブリーダの立場で,上手く進めている人は,やはりその先々で起こることを事前に予知している。問題が起こる前から,つまりリスクがあると認識して,それに対応する方策を予め検討している。したがって,問題が発生しても対応が早く,大きな問題に発生する前に抑え込んでしまう。したがって,大きな騒ぎにもならずに,通常の小さな問題で終わってしまう。

ところが,普段から先が読めていないサブリーダは,問題が起こってから対応策を考えることになる。当然,手遅れになるケースが出てくる。そうなると,いろいろなところで支障が出てくる。先ず,対応する余分なリソースが必要となる。それによって,スケジュールが狂わされる。場当たり的な対応が横行することが多く,手戻りや品質悪化を招く。良いことは一つも無く,悪いサイクルがまわりプロジェクト全体へも悪影響を及ぼすことになる。

全体把握することはサブリーダの立場から難しい面はあるが,やはりプロジェクト全体がどうなっているかを把握していることは非常に重要なことで,自分の任された部分だけに終始しているようでは,なかなか効率的に動くことができないことが多い。スピードが求められ,変化が激しい中にあって,自分の任された範囲ではどうしようもないことが起こる。やはり,全体把握をしているのとそうでない場合では,対応の仕方に優劣がつく。先を見据える中で,全体を見る目も同時に養いたいものである。

  リスク・課題を常に整理

プロジェクトはリスク・課題との戦いと云ってよい。どれだけリスクを顕在化させずに未然に防ぐことができるかであり,そのためには,常にどのようなリスクがあるかを把握しておかなければならない。リスクにもいろいろあって,顕在化する確率が高いか,低いか,また,そのリスクによる影響度合いが大きいものなのか,小さなものなのか,それによって対応する重要度合いも変わってくる。そうしたことを,日頃からメンバーとよく意見交換して,如何に未然に防ぐか,或いは顕在化したとしても,影響度合いを小さく抑え込むことができるか,である。

大きな流れから来るリスクもあるが,殆どは現場で事前に把握できるリスクが多い。したがって,サブリーダが現場の状況をきっちり把握しているかどうかで,リスクに対する心構えも違ってくる。プロジェクトに変化は付きものなので,いろいろなリスクがQCDの観点で立ちはだかる。こうしたことに常に備えておくこと,つまりゆとりを持っておくことが非常に大切である。もちろん,スピード勝負の時代,ゆとりなどとても取れないと言うのが現場の声である。確かに,バッファーを十分持つとか,少し余分なリソースを持つことなどは許されなくなってきており,やりくりが思い通りにならないことが多い。しかし,サブリーダが心のゆとりを持っていると,それに従うメンバーも安心して仕事ができることがある。

心のゆとりとは,日頃からリスクを先読みしたり,課題が発生しても,すぐさまその原因究明を図り,着実な解決策の手が打てるなど,日頃の活動の中から生まれるものである。先の見通しが十分把握できなかったり,課題があっても対処療法的なやり方を繰り返していたりしているようでは,自らゆとりを放棄しているようなものである。職場の基本は5Sからとも言われるが,プロジェクトでもきっちり整理した進め方ができれば,上手く進むことが多いのである。

  幹部の声を直接聞く

プロジェクトを進める中で,デザインレビューなど呼び名はいろいろあるが,プロジェクトの状況を報告する会合がある。もちろん,そうした場面で報告をするのはリーダであるが,是非,そうした会合に参加して欲しい。経験豊富な方から,いろいろな指摘を受ける。受審側にとっては,つらい場面もあるが,みんなで何とかプロジェクトを成功させるために提案してもらっていると思えばよい。そうすれば,それほど負担にはならない。

参加して欲しい理由は,いろいろな意見を直接聞くこともあるが,特に幹部からの指摘を冷静に受け止めて欲しい。なぜならば,仲間や関係者(もちろん目上の人を含む)からは,どちらかと云えば技術的な,或いはプロジェクトそのものの中身に関する指摘などが多い。しかし,幹部の経営的目線での指摘は,なかなかリーダの考えていることと違っていることが多い。もちろん,サブリーダもあまり日頃は考えていないことである。

こうした場面の幹部からの指摘は,もちろん技術的な面も含まれているが,どちらかと云えばリーダとして育ってもらうことに対して不足している部分の指摘・指導が多い。自分が足りないと思っているところをズバリ指摘されることも多いが,やはり目線が違っている。特に,経営的な目線は日頃,現場の問題に忙殺されていると,なかなか気づかないことが多い。こうした指摘・指導を直接聞く機会は少ない。だから,サブリーダはこうした会合には必ず出席して,自分が話す機会は無くとも,幹部からの指摘・指導を自分に言われていると思って聞くことは非常に有益なことで,そうした指摘・指導を真摯に受け止めて,現場のプロジェクトを進めると,やがてはリーダの風格が持てるようになり,上司からも仲間,部下からも信頼されるようになる。

この機会を逃さないようにして欲しい。

(続く)

先を読み,リスクに備えることはプロジェクト成功のカギである

積極的にデザインレビューなどに参加しよう

  

[Reported by H.Nishimura 2010.09.20]


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