■プロセスの改革 4 (No.185)

プロセスの改革について,最後に。

  継続した仕組み(プロセス)になりうるか

プロセス改革を進めてきたのだから,その改革したプロセス(仕組み)が定着しなければ意味がない。改革ができたからすぐ定着すると思っていると大きな間違いを犯す。つまり,改革するエネルギー同様,定着させることにも結構なエネルギーが必要なのである。なぜならば,全組織が一気にプロセスを改革するのではなく,最初は代表的な部分から始めることが多い。つまり,全組織の一部でプロセスの改革ができたから,全てでも簡単にできる訳ではない。安定したプロセスとして定着させるには,ある年月が必要なのである。

典型的な拙い事例は,コンサルタントなど外部の力を借りてプロセス改革を進めた場合である。確かに,コンサルタントが居る間は,上手く進んだプロセス改革も,居なくなった途端にそれ以上進まないか,或いは後戻りし始めるケースさえある。つまり,自分たちのプロセスとして十分手中に入っているものなのかどうかである。そのためには,着実に規定やガイドラインと云った仕組みに落とし込まれ,着実に遵守できるようになっていることである。

定着のプロセスは,一部の人でなく,組織として大多数の人が運用されるようになることで,それには時間を要する。しかし,そこまでできないと本当の改革にはならない。つまり,改革がイベントのような一時的な花火で終わっては意味が無い。さらに云うならば,継続するだけでなく,更に改善・改良が積み重ねられる仕組みまでになっているかである。

  改革が上手く行かなかった事例

最後に,上手く改革ができなかった事例を挙げておこう。

優秀な人が居るから改革ができて,居ないからできない,と云うのは間違いである。反って,優秀な人が多くてなかなか改革が進まないこともある。或いは,優秀な人が多いから,改革運動しているときはその振りをしていて,終わったら元通りのやり方に戻してしまうことだってよくある話である。大企業で改革が進まないのは,元の仕組みががっちりできていて,プロセスを改革したつもりでも,元の鞘の中での出来事の一部に終わったケースもある。これは,反対派が多い少ないの問題ではなく,プロセスの改革の目的が不十分だったことに起因していることである。

つまり,従来からあるプロセスはその出来上がった年月,使われてきた年月で磨きを掛けられていることが多い。それを時代に沿わないから,或いは他社に遅れを取るからなどと云った理由で,プロセス改革に走ってしまうと,最初は流行や改革の勢いなど恰もプロセス改革が進んだかのように見えるが,実は元元のプロセスが結構根深い,組織文化の下で育てられていたことに改革を進めてから初めて気づくことである。特に,大企業のプロセスにはこうしたケースが結構多い。したがって,プロセス改革をやろうとするときは,組織文化までも変えることを念頭に置くことが必要なことがあることを十分承知しておいて欲しい。決して,組織文化に根付いているから,改革を止めろと云うつもりはないが,そのくらいの覚悟を最初からして欲しいのである。

今回の説明の中で,繰り返し述べてきたが,改革推進に当たる幹部の役割は大きいことを述べた。改革を始めようとした推進リーダは情熱もあり,そう簡単に止めようとはしないが,幹部の中には,役柄仕方なくプロセス改革を推しているような人が居る。こうした人の下では,改革が上手く行った試しは少ない。つまり,権限を持った立場の人間が,改革に腹落ちしていない状態では,いつひっくり返されるか判らない。これではいくら推進リーダが情熱を持っていたとしても,周りの人間がついて行けないことになる。逆な見方をすれば,推進リーダは権限を持った幹部を十分丸め込んで,プロセスの改革を進めることが非常に重要で,同じ思いが常に幹部から発せられる環境を作り出しておくことである。

 

プロセス改革へのチャレンジに取り組もう

 

[Reported by H.Nishimura 2010.09.06]


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