■プロセスの改革 1 (No.182)

これまでやってきた仕組みがなかなか上手く機能していない,或いは,世間一般で行われているやり方に乗り遅れているので何とか仕組みを改革したいなど,これまでのやり方を変えようとするプロセスの改革が行われようとするが,なかなか一筋縄で上手く行かないことが多い。そこで今回は,プロセスの改革について考えてみる。

  目的が明確か

まず,プロセスの改革をやろうとする背景が明確になっているか,どうかで,このしっかりした背景のもとに会社組織として必要性をきっちり認識できているかどうか,が今後の進め方,及び改革の成功,不成功に大きな影響をもたらす。

プロセスの改革の目的であるが,最初から全員一致でやろうと云うことは先ずない。誰かが,どこから得た知識かはともかく,今のままでのやり方では拙い,会社の将来を考えるとやり方を改革しないと,会社の将来は無いと云った危機感を感じることから始まる。この危機感を,上手く醸成しながら,大きな力に変換していかなければ,理想論だけを訴える評論家的存在にしかならない。

したがって,危機感を感じた優秀な人は,改革をやらねばならないことを訴える資料の準備をしなければならない。自分たちの置かれている背景,社会的情勢,競合他社の動向,技術動向など外部要因と,社内の特長,持てるスキル,モチベーション,販売額や利益の見通しなど内部要因など,自分ひとりではとてもできないが,どんな点に焦点を当てて検討する必要があるかをじっくり考えることが必要である。こうしたしっかりとした改革しようとする核が無いと,流行に任せただけの改革になってしまう。

ここで,改革しようとする背景,その目的,目指す姿など改革の骨子が先ずできることが重要で,これは一人でできることではなく,改革を必要と感じる仲間を集め,そのメンバーで十分な議論を尽くし,必要あれば外部機関のコンサルタントの力を借りることも良い。こうした議論の上できあがったプロセスの改革の骨子をトップ及び会社幹部にアピールして,そのお墨付きを貰うことが第一である。

  改革の風土が出来上がっているか

トップ(幹部)のお隅付きがあることが,こうしたプロセスの改革には必要最小限だが,これで改革が進む訳ではない。ここからが,改革のスタートである。もちろん,プロセスの改革と云えば,組織改革に通じることなので,危機感を感じている少数精鋭だけで進められるものではない。プロセスの改革の必要性を組織全体に広めることが必要である。

そのためには,最初に考えた改革のシナリオを,会社組織全体に理解できるような準備が必要である。改革をする背景・目的を明確に伝え,その改革によるメリット,デメリットについても,きっちり整理して伝えることが大切である。会社全体に行き渡るように,プロセスの改革を説明する機会を設けることも必要で,そのときには必ず,トップ(幹部)の口から会社として,改革を進める宣言をしてもらうのが良い。こうした準備を怠ることなく進めて,改革をスタートさせる。

しかし,従来のやり方を変えることに対して,必ず抵抗勢力と云うものがある。この存在の大きさも考慮しておくことが大切で,無闇に頭ごなしに抑えつけてやろうとしても上手く行かないことが多い。反対派の主張を聞き流すことなく,それに対して改革することによるメリットをきっちり説明して理解して貰うことに努めよう。一旦反対した人がそう簡単に賛成してくれることはないので,根気よく説得するしかない。こうした反対を主張する人は,自分なりの考え方をきっちり持っている人が居るので,そうした人を説得して賛成にまわってもらうと逆に心強い味方として変身することがある。あせらず,じっくり説得してみよう。

新しいことへ挑戦するので,いろいろな不安材料も出てくる。それらを一つずつ前向きに解決していくことで切り拓かれることになる。だから,組織としてこうした新しいことへ挑戦する風土づくりが大切で,最初から上手くは行かない。小さな成功を積み重ねて行くしか方法はない。目指す姿へ少しずつでも進んで行くことが,見え出すと加速される。この取っ掛かりの部分が微妙で,ここを上手く乗り越えることが成功に導く秘訣でもある。

  トップ(幹部)の改革に対する意識は

会社全体の組織改革なので,トップ(幹部)の改革への認識が十分あるか,否かは,成否を大きく左右する。一番問題は,トップの社長ではなく,その下の幹部クラスの意識である。トップの社長は,やれと決断して号令を掛けるだけで済むが,幹部にとっては,部下からの苦情など,或いは,改革に必要なリソースの新たな捻出など,場合によっては頭の痛い問題が降りかかることになる。

つまり,こうしたいろいろな事情を踏まえて,幹部が多少の痛みを感じながらも進めようとしているか,どうかが問われる。社長がやれと言われているので,それを真っ向から反対はできないが,心の底にそんな改革が上手く行くとは思えないとか,そんなことまでする必要性に疑問を持っているとか,そうした幹部が居る状態では,なかなか思い通りに改革は進まないことが多い。総論賛成,各論反対のような態度の幹部の存在である。

こうしたことは,改革には多かれ少なかれつきもので,改革を推進しようとする人にとって克服しなければならないことである。こうした改革にネガティブな事象に敏感に反応して,改革を遅らせようとしたり,改革のシナリオから外れたことをやり出すと,反対する人の思う壺で益々改革することが難しくなってしまう。特に,幹部を説得する立場は,改革推進しているメンバーと云うより,組織ではその上の中間管理者層であることが多い。この中間管理者が頼りないことが多い。部下の推進メンバーからは圧され,上の幹部からはなかなか思い通りの改革推進に協力的でない場面が出てくると,役割を放棄するような態度に出る人が見られる。

こうした深刻な事態を引き起こさないためにも,トップの社長から,幹部の改革への協力をきっちりお墨付きのようなものをもらって進めることも必要なことである。幹部の言動が改革を大きく左右する要素の一つであることは間違いない。

(続く)

貴方の組織のプロセスの改革は順調ですか?

プロセスの改革の目的・背景が十分共有されていますか?

 

[Reported by H.Nishimura 2010.08.16]


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