■立ち止まって冷静に判断することの難しさ (No.178)

我々は仕事をする中で判断が求められることが良くある。冷静に判断すべきであることは誰しもよく判っている。感情をむき出しにして判断したり,相手によって判断を変えたり,きっちりと冷静に判断できない場合がよくある。

  リーダの判断は状況を大きく左右する

一般的に,リーダや責任者は適切な判断を下すことが,非常に重要な仕事であって,冷静沈着な判断をしなかったために不利な立場に陥ったり,或いはプロジェクトが思わぬ方向に迷走したりすることがある。

特に,プロジェクトを進める中,いろいろなトラブルがあって遅れが発生していると,挽回しなければならないと云う使命感に駆られることがよくある。ところが,日程に押されていると,リスクがあって先々を考えれば,きっちり今のうちにやらねばならないことも,つい火の噴いた現実の課題のやりくりに追われて,先々のリスクは先延ばしにしてしまう。そうせざるを得ない状況に追い込まれていると云った方が正しいかもしれない。

しかし,プロジェクト全体で冷静に判断すると,先延ばしよりも,リスクの顕在したときの大きさを,今の段階で推し量って,どのような対処法が考えられるかを検討した方が,次に起こる問題を未然に防ぐことができ有効な場合が多い。でも,なかなかリーダ自身が,大きな流れに逆らって先読みするのは,結構大変な勇気が必要である。先を見て主張しても,今現実に問題を起こしていることを突かれるとどうしようもないのである。リスクは,今は見えていないので,それほど重要だと思っていない人が多い。そうした中,立ち止まって判断できる人は,かなり優秀な人である。

こうした場合,渦中に居るリーダよりも,その上,又は二段上の上司が必要に応じて,当事者として,現場に近いところに立ってリーダの判断を支えることが大切である。間違った判断をしている場合は,こうした見方で見れば正しく判断できるとか,判断を先延ばししようとしている場合には,自らが先頭に立って冷静な判断を下すことである。このことは,リーダにとって良い見本となり,今後のリーダの成長の糧にも大いに役立つ。

ここで上司の役割を考えてみると,リーダだから何とか考えて切り抜けろと追求することも必要ではあるが,これを繰り返しているだけでは,なかなか解決しない。大きな流れ,負担が押し寄せている渦中のリーダを責めても無理な場合が多い。いつも手助けするのも良くないが,一方的に追求するだけも良くない。難題を解決させることは必要だが,結果的に解決できなく会社に損失を与えるようでは,組織として成り立っていないことになる。つまり,リーダが大きな流れの中で冷静な判断ができない状態に陥っているとみれば,上司として冷静な判断の手助けをするのが役割である。でも,なかなかこうした上司も少ないのが現実である。

別の方法として,プロジェクトを第三者的に見ている人が必ず居るはずである。そうした人を常に身近に置いておき,ご意見番のような役割をしてもらうことである。少なくとも渦中に居る人よりも冷静且つ沈着であるはずである。また,日頃からご意見番として,辛口のコメントもしてくれるはずである。もちろん,それらをすべて聞いて反応するのは大変であるので,本当に必要とするときに,意見を聞くことにする。このような関係ができておれば,上司の指導とはひと味違ったやり方ができる。

 

冷静な判断は口で言うのは簡単だが,現実にはなかなか難しい

[Reported by H.Nishimura 2010.07.19]


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