■日本経営品質賞(JQA) セルフアセッサー資格更新(No.177)

日本経営品質賞のセルフアセッサーの更新が2年に一度あり,更新を受講した。2年前にも感じたことだが,今回の受講でもやはり同じで,更新に来られているメンバーで果たしてどれだけの人が本当に,JQAの考え方に沿って行動ができているのだろうか,と云う疑問だった。聴講だけでは判らないがグループ演習など,考え方や分析の仕方を見ていると,果たしてこれでアセッサーが務まるのだろうか?と云った疑問である。

  顧客認識について

演習にて,顧客認識を問う課題演習があった。これまでの親会社から下りてくるビジネスから脱皮して,新たなビジネスを始めようとしているが,なかなか思い通りに行かず景気の変動に左右されている子会社的な企業がモデルとなっていた。その企業の5年間の販売・利益が並んでいて,現状,60%強が親会社からの仕事であり,新たに始めた部分が未だ20%にもなっていない状況で,この会社にアセッサーとして入ったとき,どのような質問を投げかけ改善を図るきっかけを作ろうとするのか,考えてみなさい,と云った設問で,グループディスカッションすることになった。

経営数値が出されていても,販売が伸びているか,利益が上がっているかは誰もが気になる。こうした問題は,一般的に赤字ではないが,少しの利益が出ており,販売状況も,景気と共に浮き沈みが繰り返されている。だから,こうした販売・利益だけでは,何も答えを導き出すことができないようになっている。こうしたとき,やはり個人の経験から見ようとすることが多い。アセッサーなので,経営者的感覚で見ようとするが,やはり経験がないとなかなかポイントが見出せない。

みんなの目のつくところは,やはり子会社的存在ではなかなか伸びないので,新しいビジネスに取り組もうとしているところに目が行く。しかし,設問はそうした新しいビジネスがどんどん伸びて行く姿はなく,やはり親企業からの仕事が全体の60%を超える設定にされており,親企業から直ぐに飛び出すと云う発想はできないようにしてある。しかし,経験が無いと,やはり新しいビジネスをどのように伸ばすかと云う方に目が行き,親企業のビジネスは当分のつなぎ程度に考えるのが一般的なようである。

ここで,顧客認識に対するポイントが注目される。JQAでは,顧客認識を原点にビジネスの展開を考えることが云われており,組織プロファイルなるものを基本において論じられるが,ここの原点が顧客認識なのである。つまり,企業にとって顧客は誰なのか,顧客が自分の企業に望んでいることは何なのか,この認識をきっちり把握することが重要であるとされている。これらは,「もしドラ」(もし,高校野球のマネジャがドラッカーの「マネジマント」を読んだら)でも,人気が上がっている,ドラッカーの顧客とは,に当に通じるところである。

このことはJQAでは何度となく云われていることであるが,アセッサーには個人差はあるにしても,顧客認識と云う言葉と,顧客認識をどのようにして意識するかとでは,全く違ったよう感じられる。つまり,顧客認識が重要と云うことはJQAの知識として誰も知っているが,それではどのようにして顧客認識をするかとなると,個人の経験が出てくる。つまり,経営経験が少ないアセッサーには,経営数値と顧客認識の接点が見出せないようである。だから,経験してきたことを中心にいろいろな設問をしようとすることから始める。

人材育成に関心の強い人は,人材育成の強化を前面にして展開し,トップのリーダシップがいつも気になっている人はトップのリーダシップの課題を挙げる。これは当然の成り行きであり,こうしたいろいろな側面があるからグループでの討論をさせようとする狙いがあるのかもしれない。どれもが正解ではなくとも,必要なことである。ただ,優先度でどうかと見ると極めて優先度の低いレベルでの討議になってしまっている。グループの発表があっても,流石よく考えているなあと感心することは少ない。もう少し,アセッサーなら経営者と対抗できるレベルの回答ができないものか,といつも思う。

私は設問に対して,先ず分析が足りない。つまり,親会社からのビジネスと新しいビジネスが,各々販売・利益としてどのように推移しているのか,また,それは計画したことに対してどうだったのか?それを見ないと,企業としてどうしようと考えているのか,また考えてもいないのかさえ判らない。だから,まずその分析をすることを求め,それがプラン通りになっていれば,計画が実行できる能力があると認め,プラン通りになっていないならば,どこが違っていたのか,その分析をすることで是正させるようにする。もちろん,計画も不十分となれば,企業としてのPDCAが廻っていないことで,先ずそこから始めさせる。とまとめてみた。

講師からの説明では,顧客は親会社なのか,それとも新しいビジネスの顧客なのか,どちらなのか?を考えなければならない。当然,現状では,どちらか一方的にする訳には行かない(そのような設定になっている)。だから,顧客毎に,自分たちに求められているものは何なのか,それが判るような質問をしなさい,と云うのが回答であった。

顧客認識を肌で感じることはなかなか難しいことである

[Reported by H.Nishimura 2010.07.12]


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