■ワールドカップ観戦より (No.176)

ワールドカップの決勝トーナメント1回戦で日本は敗退した。南アフリカへ向かうまでは,予選リーグ敗退が濃厚だっただけに,決勝トーナメント進出,ベスト16になったことで,大いに日本中が盛り上がった。決勝トーナメントのパラグアイとの一戦も,なかなか見応えある試合で,夜の11時キックオフで始まったが,延長戦,PK戦と2時前まで観ることになってしまった。

決勝トーナメントのパラグアイとの戦いは,ボールの支配率は圧倒的に相手方が優勢であったが,守り中心のチームで,見ていてオランダ戦ほどとても勝てない相手とは感じず,ヒョッとすると勝てるのではないかと云った印象で始まった。観戦していても,それほどヒヤヒヤする場面は少なかったように,本当に互角の戦いだった。共に惜しいと思う場面も2,3度はあったが,なかなかゴールネットを揺らすことはなく,延長戦に突入し。それもゴールならず終わってしまった。

PK戦は,これも川島のファインセーブの場面を思い出してか,日本側に有利ではないかと云う気さえしていたが,結果的には,3番目の駒野選手が,ゴールバーに当たって決まらず,これが敗戦に繋がってしまった。ガックリする日本選手を向こうに,パラグアイは喜びを爆発させていた。彼らにとってもベスト8は初めてのようである。そのまま,すぐ床についたが,翌朝から,何度も何度も同じPK戦のシーンが映し出され,特に駒野選手には気の毒な気がした。

しかし,関西空港へ帰ってきた面々が明るい様子で,ユーモアたっぷりで,現代ッ子だなあと思わせるように感じた。また,それを讃える出迎えの人々も,日本中を感動に包んでくれた選手に惜しみない歓迎振りだった様子がTVに映し出されていた。

専門家ではないので,報道などで言われていることだが,今回のここまで戦えた要因は,チームワークだったようである。長谷部キャプテンが言っていたが,カメルーン戦の勝利がすべてを良い方向へと変えたようである。あの初戦の一勝が無ければ,当然,決勝トーナメントに進めなかっただろうし,負けこそしたがオランダに善戦することも,デンマークに勝つこともできなかっただろう。

つまり,カメルーン戦での一勝が自分たちにもできるんだと云う選手一人ひとりのモチベーションを高めるとともに,チームワークも随分良くなって行ったように思われる。それらが,今回日本中を感動させ,サッカーをそれほど知らない人まで,素晴らしい感動を与えることになったのである。日本代表と云うだけで,日本中の視線が注がれ,その一挙一動が良い方にも悪い方にも一方的に傾くきらいがある。今回は,その良い方へ傾いた事例である。

だから後付で,チームワークが良かったから,岡田監督の采配が良かったから,守り中心で対応したことが良かったなど,いろいろ解説が並ぶ。しかし,行くまでは決定力を欠いた布陣とか,チームワークが良いなどあまり聞くことも無かったのに,一気に手のひらを返した歓迎ぶりである。とにかく,日本中を感動の渦に巻き込み,人々にやればできるのだ,と云った勇気を与えてくれたことは事実である。

チームプレイは一人の力ではどうしようもない。全員が上手く機能することで,今回のようにスーパープレイヤーが居ない日本チームでも世界の強豪と互角に戦うことができることを証明してくれた。ベスト16なので互角とは言い過ぎかもしれないが,世界に恥じないプレイをやってくれた。誰もがよくまとまったチームだったと言う。みんなが自分の役割を認識し,目標が明確で,モチベーションが高まった状態にあったからこそ,ここまで力が発揮できたと言える。これはスポーツでの出来事だが,ビジネスの世界にも通じることである。

日本のチームプレイが世界と互角に戦わせた

 

[Reported by H.Nishimura 2010.07.05]


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