■仕組みで解決できるのか? 3(No.174)

仕組みやプロセスで再発防止を図るようしたと云うのが一般解であるが,本当にそうなのか?と云う疑問から,課題提起をしている。

  コミュニケーションの問題

役割・スキル・モチベーションに関して述べたが,もう一つコミュニケーションの問題が残っている。つまり,役割を明確にすることが重要だと述べたが,日本の組織では曖昧にしたままで運営されることが多いのである。それを補っているのが,日本人同士のコミュニケーションであり,グローバル化が進んだとはいえ,まだまだ日本の組織では,コミュニケーションが果たしていることは大きい。もちろんグローバル化した組織でもコミュニケーションの重要性は同じだが,日本人同士の阿吽の呼吸などと呼ばれるコミュニケーションが存在し,それが重要だと云う訳ではない。

日本の組織における仕事上で,仕組みやプロセスを円滑に進めていることの一つにコミュニケーションがある。役割や仕組みをがんじがらめに決めてしまうより,曖昧な部分を残しながら,お互いにコミュニケーションを図って進めることで仕事が円滑に上手く行くケースが多いことがある。仕組みとスキルとモチベーションの重なる部分を大きくし,発揮能力を高める作用をするのがコミュニケーションであるが,逆に,コミュニケーションが上手くできていないと,どんな立派な仕組みやプロセスを作っても上手く行かないことの方が多い。それほど,コミュニケーションは大切なのである。

つまり,我々の仕事はドキュメントで取り決められたものが遵守されれば,すべてが上手く行くわけではないことを物語っている。このことは,何か問題が起きたら,直ぐ仕組みの欠陥,プロセスの欠陥と考える前に,一度冷静になってコミュニケーションはどうだったのか,と考えることは非常に大切なことなのである。人と人が接触し合って仕事をしている以上,仕組みやプロセス同様,そこにはコミュニケーションが重要な働きをする。その潤滑油に相当するコミュニケーションの部分が油ぎれでは,思い通りのプロセスや仕組みにならないことがあるのは当然とも言える。

日本人は問題を人(個人)のせいにすることを嫌がり,仕組みやプロセスにしたがる。それがごく一般的な対応方法である。人の問題にしてしまうのではなく,仕組みやプロセスに落とし込むよう教えられている。でもそれは必ずしも正しくない,むしろ間違いであることもある。コミュニケーションの問題を追及しようとすると,個人を責めることになってしまうかもしれないが,やはり真の原因究明には必要なことである。特に,どんな人の組み合わせでも起こる問題は,仕組みやプロセスの欠陥と云えるかも知れないが,特定の個人の組み合わせにだけ起こったことを仕組みやプロセスに落とし込もうとするのは少し無理があるように感じている。

通常の組み合わせ,通常のコミュニケーションでは起こらないことまで,仕組みやプロセスに規制を掛けること自体,本当にそれが良いやり方なのか十分吟味する必要がある。通常の人が余分なこと(管理や責任範囲の拡大)までしなければならないようでは,反って組織活動を停滞させることになってしまう。そのようにならないように見るのは現場責任者である。現場に任せてしまうと,ついいろいろ細かいことまでが議論の俎上にあがり,肝心要の内容が本来の狙いとは違った方向に進められてしまうことがある。当事者が一番良く判っているので判断は正しいとの観点は間違いではないが,よく知っていることと正しく判断する能力とは必ずしも同じではない。むしろ,現場の責任者が経営的観点も踏まえながら判断する方が良い場合もある。

そういう意味で,現場責任者が当事者意識をなくして,部下に任せてしまう,或いは間違った先入観で判断してしまう危険性は残っている。特に,組織が大きくなると,現場感覚に疎くなってしまう責任者も多い。

 

組織課題の真の原因究明には,コミュニケーションの善し悪しも考慮しよう

 

[Reported by H.Nishimura 2010.06.21]


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