■仕組みで解決できるのか? 2(No.171)

仕組みやプロセスで再発防止を図るようしたと云うのが一般解であるが,本当にそうなのか?と云う疑問から,課題提起をしている。

  役割(責任と権限)は明確だったか

仕組みが不十分,プロセスが抜けていたと云う前に,本来あるべき役割が明確だったのか,と云う疑問が,いろいろな場面で起こっている。つまり,仕組み,プロセスは人がミスをすることを前提に,たとえミスを犯しても,仕組みやプロセスでカバーできるものである。そもそもミスと云うのは決められたことをしていなかったとか,忘れていたとか人間の初歩的な間違いである。

ところが,会社での仕事では,決められた役割が先ずあって,それができているかいないかである。その役割が曖昧だったらどうだろうか。それを,仕組みやプロセスでカバーしようとするのはできるのだろうか?役割も仕組みの一部だとも云えないことはないが,組織での仕事にはきっちりとしたミッション(役割)が重要である。

そのミッションを曖昧なままにして,仕組みやプロセスがどうかと論じること自体がナンセンスではないか。

例えば,リーダに十分な権限と責任(役割)を与えずして,問題が起こってから,仕組みが拙いとかプロセスに欠陥があるなどと論じることが間違いではないか。そうした場合に必ず,リーダの意識が不十分だったとか,もっと全体を把握して判断すべきだったとか,結果からは何とでも言えるし,上からの指摘はこうした内容が多い。しかし,そうした場合,よくよく考えて欲しい。リーダに責任と云う前に,それだけの権限が与えられていたのか,それが役割として明確だったのか?と。

日本の組織では,そうしたことは常識の範囲と片付けられることもあるが,必ずしもそうでなく,役割が明確でなかったことが原因になっていることも多い。しかし,そうはなかなか言い難い。つまり,上司や幹部が決めていなかったことになるからである。誰も,上司には楯突かないので,面と向かって言う人は少ないが,役割が不明確,つまり権限も与えないで,責任だけ追及することになっていないか,冷静に判断して欲しい。

組織力が弱いところでは,こうした仕事の役割が極めて曖昧な形で,できる人に委ねる組織になってしまっている。したがって,できる人がやっている間は,仕組みやプロセスの問題にはならない。人に依存しているからである。ところが,普通の人がやると,仕組みやプロセスの問題として浮かび上がってくる。何のそれは,仕組みやプロセスの前提にある役割の明確化ができていないことに依るものである,と云うことが起こるのである。

  真の再発防止策は,真の原因究明だが,これがなかなか難しい

前回述べたように,再発防止策=仕組み,プロセスの改善 と一義的に決めつけているようでは,本当の再発防止策にはならないことは判ったとしても,なかなか真の原因究明ができないところに問題が潜んでいる。

実際,再発防止は起こした人がその原因を究明し,対策を考えるのだが,その検討されるレベルが極めてお粗末な場合が結構多いのである。なぜならば,起こした問題の張本人は,あまり人には知られたく無い,と云う心理が働く。したがって,適当に大きな問題とせず,何か一寸した仕組みやプロセスを改善する程度で終わらしたと思っている。そんな人に,真の原因究明をやらせても,十分な内容が出てくる訳がない。

人を責めず,行動を反省させる,或いは組織行動の改善を図ると云った明確な目的が無いと,なかなか難しい問題なのである。関わっていた多くの人の意見を聞くことも大切だが,リーダなど責任者クラスが,組織行動として同じ過ちを侵さないために,どうすれば防げるか,と云った観点で議論しないと,真の原因も,再発防止も図れない,と云うのが私がこれまで,現場で感じてきたことである。だから,ミッション(役割)がどうだったのか,と云うのが先ず原点にある。このミッションを基点に検討をするのが再発防止なのである。

その基点がしっかりすれば,スキルなり,モチベーションなりがどうだったのかも明確な反省材料となり,真の原因究明が明らかになってくるのではないだろうか。

真の原因究明には,まず,ミッション(役割:責任と権限)を明確にして進めると判りやすい

 

[Reported by H.Nishimura 2010.05.31]


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