■展示会での結果 (No.169)
先週,3日間展示会の説明員で参加した。
初日は天候の関係もややあって出足が少なかったが,後の2日間は盛況であった。
顧客ニーズは様々
展示会を久しぶりに説明員側から覗いて見ることになった。ソフトウェアの品質プロセス改善を謳った内容を説明する立場だったが,顧客からはいろいろな質問が飛び込んできた。顧客の会社名や所属組織,役職は名札を見れば判るが,具体的にどのような品質プロセスを以てやっておられるのかは判らない。したがって,最初顧客から具体的な質問や問い掛けがあれば,それに応えるように説明をするが,通常は会社案内のようにこちらの提供できる内容の概略を説明することから始める。
そうすると,いろいろな反応がある。単なる情報収集目的で聞く人,何か課題を抱えていてそのソリューションがないか探している人,また,自分の仕事と同じ内容なのでどんなやり方をやっているのか探ろうとしている人,或いは,若い人に多いが,自分の勉強も兼ねて最近の技術動向で新しいものが無いかどうかを探している人と,そのニーズは千差万別である。最初は,その状況が判らないが,こちらの話に対する頷きや疑問の投げ掛け方でその人の目的が大凡判ってくる。
そうするとこちらの話のトーンも顧客ニーズに応じた内容に変えていくことになる。また,どうしても全体概要とは言いながらも,自分の得意とする分野の話に持っていくことにもなる。あまり反応の少ない顧客が一番説明が難しい。それと対象的なのは,この内容が知りたいので,その点を詳しくと言うのが,一番話易いし,不得意な内容であれば,それを得意とする仲間の説明員に振ることもできる。
中には理屈っぽく絡んで来られる人も居た。話を素直に聞こうとはせず,自分の偏った意見を持って,それで相手をねじ伏せようとするタイプの人である。大手企業の部長クラスの人でそう云った人に出くわした。どのように説明しても定量的な値を要求され,定性的な説明だけでは納得されない。すべての説明に定量的にはどのようにしてその値を求めようとするのか定量的でないと判らないと執拗に食い下がってこられる。仕事のすべてが定量的に出せるようなツールなんてあり得ないが,そうしたツールを以て上手いやり方をするのがコンサルタントの仕事で,ツールのないコンサルタントなんて要らない,と端から話が噛み合わない。こうした人には議論に勝ってもムダでそれ以上話が前に進まなかった。こんな上司の下で働いている部下が居るのか,さぞかし可哀想にとさえ感じた次第である。
事前アポイントの効果
事前アポイントの効果は覿面だった。面会する時間が予め設定することがお互いの了解で可能で,具体的な相談内容もメールで事前にやりとりができる。私の場合,折角相談しようと思って来られるのに,十分な回答も無いままでは済まないと事前に回答の資料を準備しておいた。メールでのやりとりだけでは十分理解できず,こちらの勘違い的な部分もあったが,概ね相談内容には的確にお応えができたように感じている。展示会の中での短い時間内(と云っても1時間程度あったが)でのやりとりしかできなかったので,改めてお伺いして説明することになった。商談の第一歩の成立である。
他にも,是非こちらの内容をご紹介したいところがあり,これも仲間の人が知り合いで展示会で面談する時間を設定されており,同席させて貰って,こちらの要望の話をすると,こちらの想定していた内容がピッタリ一致して,是非一度改めてお伺いすることになった。このように,展示会で事前のアポイントシステムを活用することで,お互いの要望が満たされる機会が拡がることになった。
他の仲間のアポイント内容からも,結構な成果が得られたように感じられた。
悩みは同じ
説明員に立って,困っておられる内容などを聞くと,大凡似通ったところに悩みがある。つまり,同じような課題を持ちながらソフトウェアの開発や品質保証が展開されていることがよく判る。大手の一流企業でも,必ずしもきっちりできている訳ではなく,現実の場面では,似通った問題を抱えて困っておられることが判る。
一方,その困っておられる内容の解決策をご紹介すると,素直に自分たちの困っていることで,なるほど自分たちの解決策と似通った やり方で自分たちのやり方も間違っていないと自信を深められるタイプの人と,もう一方は,目新しい解決策にはほど遠い,何かこれはと云う解決策があると思って聞いたのにと残念がる人とに分かれる。
ソフトウェアの品質を何とかして上手く向上させたい,そのための新しい情報やツールを用いて成果を求めている人は多い。しかし,よく云われることであるが,「銀の弾丸は無い」(魔法の杖のような一発で解決できるものはない)とあるように,品質向上策の特効薬的なものはないのであって,優れたやり方,確実なやり方を地道に積み重ねることが一番効果的であることは良く判っているはずである。ところが現実は,なかなか地道な積み重ねができないところに悩みがあり,同じことが繰り返されているのである。
我々は地道な積み重ねができるようコーチングしようとしている。
事前アポイントは非常に効果的だった
[Reported by H.Nishimura 2010.05.17]
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