■真の顧客サービスとは? (No.165)
昨今の社会情勢から,セキュリティに対してはかなり厳しくなってきている。特に,個人情報保護法(2005年4月1日施行)が制定されてから,何かと親しみや仲間の交流を阻害するような事態も出てきている。
先日,こんな事態に遭遇した。
我が家の貯金通帳で私名義の公共料金など家計のいろいろなものを処理しているものがあり,主に女房が代理で使っていることが殆どである。もともと暗証番号を判りやすい生年月日にしていることから,都度,暗証番号を変える要請のメッセージが出てきて,遅ればせながら,そろそろ変えようかと云うことになって,ATMの窓口へ行って貰った。
暗証番号の変更は,一般にはATMで簡単に変えられるのだが,心配になって行員の方にこのやり方で良いか,尋ねたそうである。そうすると,年配の方が丁寧に教えてくれたのである。さらに,その方が,「このカードはかなり古くなっているので,新しいものと変えられた方が宜しいですよ。セキュリティもしっかりできていますし・・」。そのように言われると,それもそうだなあ,30数年使い続けたカードで,銀行名そのものも変わってしまっているカードだから,と思ったようである。「簡単に手続きできますから」とその行員に言われるままに,カードの変更の手続きも終えたのである。
その行員いわく,「新しいカードは1週間ほど掛かりますので,その間はこの古いカードで利用できますから」,と。
暫くして,女房がお金が必要になったので,ATMで引き出そうとすると,「暗証番号が間違っています」と出てきたので,アレッと思って間違ったのかな,と再度入力しても同じ現象だったそうである。その時は,銀行の窓口のあるところではなく,ATMの端末しか置いていないところだったので,諦めて帰ってきたそうである。何とかお金の工面はできそうだったので,新しいカードが来るまで待っておこうとということになった。
1週間ほどしたら,新しいカードが書留で送ってきた。今度は,窓口にある銀行に行って,新しいカードを入れると,暗証番号を入れるまでもなく,「このカードは使えません」とメッセージが出てきて,窓口に相談したところ,このカードの古いカードで間違った暗証番号で使われた形跡が残っていますので,新しいものと交換しないと使えません。その際,新しいカードの発行に1000円必要になります。また,本人か,代理申請の用紙が必要です。女房にとっては,全くキツネに摘まれたような話で,窓口で丁寧に説明されても,なかなか納得出来ずに帰ってきた。
そこで,本人の私の出番になった。経緯を詳しく聞くと,暗証番号を変更に行くつもりだったのに,カードも変えろと言われたことが問題の発端である。
- 暗証番号は,古いカードでATMで教えて貰って変更手続きを済ませた。
- その後,カードが古いので,変更するように進められた。
- その案内に従って,新しいカードの申請を行った。
- 古いカードがまだ有効と聞いたので,「古い暗証番号」で使ってしまった。
- 暗証番号間違いでカードが使えなくなった。
こうしたケースは多くないかも知れないが,古いカード=古い暗証番号,新しいカード=新しい暗証番号 と思うのはよくある話である。もし,行員の方が「古いカードでも使えますが,暗証番号は「新しい番号」に変わっていますので気を付けてください」との一言があったら結果は違っていたように思われる。
私が窓口へ行って間違った事情を説明すると,行員の方も困ったような顔をされた。「こちらの理解が足りなかったことは認めますが,行員の方は当然なことでしょうが,素人で,しかも暗証番号を変えにだけ行ったものが,カードも新しくと言われれば,前後のことの理解よりも,新しいカードから暗証番号が変わると勘違いすることはあり得ることではありませんか?サービスのサポートをされている方の説明も,暗証番号は変わっていますから,と一言足りなかったのでは?再発防止も必要ですよ」と交渉してみた。新しいカードが来たのに,使えずしかも交換料金1000円を要求されているのである。
責任者との相談された結果,交渉が成立した。
身近な些細なことであるが,こうしたサービスの行き違いは時々起こる。しかし,今回は上手く交渉が成立したが,間違ったのはそちらでしょうと,詰め寄られても仕方なかったことである。ここに真のサービスが顧客にとってどうなのか,真意が問われるところである。たった1枚のカードのムダではあったが,顧客と接する窓口は常に顧客サービスとは何かを考えておくことが大切である。論理だけを押しつけることも時には必要だが,感情を和らげることが,顧客獲得には非常に重要なことであることを,逆の立場ながら感じた次第である。
顧客サービスは十分ですか?
[Reported by H.Nishimura 2010.04.19]
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