■事業計画について 2 (No.159)
事業計画の内容
次に,実際の事業計画の内容について触れてみよう。これは,各社いろいろなやり方があるので,事業形態や規模,人員構成などによって経験的に編み出された方法が取られてきている。一般的には以下のような内容が盛り込まれる。
@前年度の反省
今年度の計画を立てる前に,先ずやるべきことは前年度の反省である。これは,前年度事業計画で計画したことが実行できたかどうか,計画で決めた目標に対して達成できたかどうか,など,計画したことの実行度合いの反省を行うことである。これが無いと,計画を立ててやるだけ,やりっ放しでPDCAのサイクルが廻らない。反省の中では,できなかった主原因を突き止め,同じことが今年度も繰り返されることが無いようにしなければならない。この反省がきっちりされていることが計画の先ず第一歩である。
計画がすべて上手く出来たと云う場合はそんなに多くない。すべて満点だったとすれば,それは逆に計画そのものが甘かったのではないか,と云った反省になる。通常はなかなか計画通りには行かないのである。それは,計画そのものがある程度背伸びをしたアグレッシブな目標になっていることが多いからでもある。自分たちでこうしたいと思っても必ずしもそのまま認めて貰えず,上位方針や計画から目標値の積み上げなどが必ずと云ってよいほどある。
また,事業を展開する中では,環境変化に大きく左右されることが大きい。特に,経済の大きな流れはグローバルに展開されており,景気の波は自分たちだけではどうしようもないほど大きい。だから単に利益額や利益率の比較ではなく,同じ市場環境で戦っている競合他社との比較で市場のシェアがどう変わったかなどは,重要視されるポイントでもある。そんな競合比較など含めて,前年度の業績がどうだったかを振り返ることが求められている。
A事業方針:今年度の方針
次には,今年度どのような事業方針で臨むことにするか,と云った活動全体を示す方針を立てる。これは,目指す姿から今年度はこんなことを中心に展開するなど,大きな方針を定める。具体的な計画に入る前に大きな方向付けを先に行うことになる。もちろん,具体的な計画を立てて,その後に微修正される場合もあるが,基本的には先に決められるものである。
もちろん,これに続く市場動向や技術動向,及び競合の動向など,外部環境の変化を先読みして方向付けがなされることは云うまでもない。活動組織全体がこの事業方針に則って活動することになるので,明確な方針であることが求められる。
B収支計画:販売高,利益
次に,活動全体の目標値である。具体的な目標数値は細かい活動を積み上げたボトムアップの計画になっていなければならないが,その前に,会社組織として目指すべき姿から,事業としてこうあらねばならないと云った販売高と利益目標が全社的な方針,目標設定の中から下りてくる。或いは,会社存続の基本として,利益目標は5%以上などと最低限の目標値が定められていて,これをクリアしないと事業として認められないと云った基準値がある場合もある。
一般的には,前年度実績値と市場の経済動向などから,会社として販売高,利益の目標値を決められることが多い。大企業では,それらから部門毎の目標値の割り当てがなされ,その示された目標値に対して,どこまで積み上げることが可能なのか,具体的な事業活動を計画してボトムアップで事業計画値として提案することになる。
この場合,提案がすんなり一度で通る場合もあるが,なかなか具体的な計画の積み上げだけでは確実な数値の足し算で指定された目標値に到達していないと,再度計画見直しとして販売,利益ともに積み上げ要求が上から下りてくることがある。できないいい加減な計画は,年度末で目標未達として成績を付けられることになるので,裏付けのない計画は立てられない。しかし,会社全体で目標に達しないと一度だけの見直しでなく,再度見直しとして積み上げ要求が下りてくることもある。
こうしたことを繰り返して,販売高,利益の目標を社長或いは幹部にコミットメントしたものが収支目標値(事業計画)となる。
C事業目標値:生産高,原価,固定人件費,間接固定費(活動費),研究開発費,設備投資,在庫,営業利益,利益,人員
こうした,販売高,利益は上からの要求はあるが,事業計画として綿密な計算をした上での値である。そのためには,事業目標値として,生産高,原価をどのようにするかの検討から行われる。販売目標に沿った形で生産を行う必要があり,販売目標から生産高(数)が計画される。その生産数をするには,一個の単価に対して原価としていくら掛けるか,即ち,生産原価として,材料費と工数(加工費)をいくらに設定するかである。ここでも,材料費のコストダウン計画があり,工数削減計画が計画として組み込まれる。
さらに間接費として,自分たちのリソースの費用である固定人件費や事業活動費(間接固定費)を幾らくらい使うか,それも月単位で計画が立てられる。さらには,研究開発費や設備投資を開発のアウトプットに対してどれだけ使うかも検討される。規模の小さな企業では,こうした間接費は直接関係する内容が多く,増減も自分たちの活動範囲を変えることで可能だが,大企業になると,直接は関係しない費用でも,配賦固定費的な生産高の何%など割り当てられる費用もある。これら全社共通的な活動は,こうした形がとられることになる。
つまり,事業の目標値は1円単位,或いは材料費では銭単位の計算を積み上げて,ボトムアップで事業計画値が成り立っている。市場変動が大きいので細かい計算をしても狂ってくるので,といい加減にするようでは,計画と実績の分析が十分出来ず,丼勘定になってしまって結果がすべてと云うことになる。こうした企業では,経営の基本サイクルが廻ることなく,長い目で見ると,企業としての成長も芳しくないことになる。
大きい企業だからできるのではなく,小さな企業でも,事業計画の目標値を立てることは経営の基本中の基本であり,確実に行われるべきものである。また,製造業だから必要と云うことでもなく,やり方は業種によって違いはあるが,組織として個人の活動につながる事業の目標値は経営を司る基本要件である。
(続く)
あなたの会社の事業計画はありますか?
事業計画に沿った活動が展開され,その反省もされていますか?
[Reported by H.Nishimura 2010.03.08]
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