■なぜ,行動(実行)できないのか 4(No.155)

【意識,意欲,意志】

次は,人の心の課題に触れる

●知識・スキルはあるが,やり遂げる意志が弱く,やる気が起こらない

同じ行動をするにも,意欲的に取り組むか,そうでないかによって結果を大きく左右する。つまり,本人はできる知識やスキルを有しているのだが,方針や目標が曖昧であるために,何のために行動するかが十分納得できていない場合がある。そうすると目標もなく自分が行動していること全てが,組織としての成果に結びつかなくても仕事をしたことに置き換わっている。或いは,大きな目標を見失い,自分のやったことの成果だけを自己満足していて,結果的に経営成果に結びつかないことが起こる。こうしたことは,大きな困難な目標から目を逸らせ,最後までやり遂げる意志が萎えてしまっている。自己弁護の言い訳だけを考えている。

物事を最後までやりきることは並大抵の努力ではできない。途中にいろいろな障害が出てくる。時間がない,次々新たな問題が出てくる,何でもかんでも技術だとふってくる,など,自分の掛けられる時間を遙かにオーバーした負荷が掛かることがある。一般的に,ついついこうした流れに流されてしまう。いつまでにやらねばならないと云った意志の方が負けてしまう。結果,当初目論んだことが実行できない事態が起こってしまう。

こうしたことが続くと,これをいつまでにやらねばならない,と考えることが憂鬱になってくる。起こってくることを順次こなしていく方が楽である。つまり,最重要と思われる課題がいつまで経ってもできなくなってしまう。つまり,やる気さえなくなってしまう。

このようなことにならないようにするには,組織責任者は重要な課題を冷静に整理する時間を設け(事業計画の立案時など),それに対するマイルストーンをきっちり決めることである。一貫した目的意識をとり,モチベーションを超えた「意志の力」をもって目標に到達しようと努めることである。さらにそのことを,トップ自らが時々チェック,フォローすることで,やり遂げねばならないと云う意志を上手く再燃させ,大きな経営成果に結びつけることである。

●できればやりたくない(やるだけ損をする)

消極的な行動をとるケースである。個人や部門で考えると全体的に見ればすばらしいことであっても,チャレンジすることを認める風土がないとなかなかやろうとしないことがある。もし失敗すれば,或いは計画通りに行かなかったら叱責,或いは責任追及されるとあれば,個人や部門で考えれば,できればやりたくないと思うのが普通である。また,やろうとしても誰も協力しようとしない,権限は与えられず責任だけが求められる。これではやろうという気はなくなってしまう。(「出る杭は打たれる」職場環境)

しかし,一方で少々失敗しても構わない,やらないより(無行動)もやった方がよいと考える風土のあるところでは,どんなことが起こるだろうか。誰もが積極果敢に挑戦する。失敗しても諦めずに,再度チャレンジする。できない部分もあるが,半分でもできると,前に進むことになる。こうしたことが積み重なると,全体で見ると,結果的には前に進んでいることになる。行動していることが成果になる。リーダがこうした挑戦する気概を讃え,誉めてあげ,責任は自分が持つ,と云ったことをすれば行動も変わってくる。

この差は,組織全体で考えると大きい。

●従業員満足度が低い

以上の状態は,言い換えれば従業員の満足度が低い状態になっていることを示している。従業員満足度が低いと顧客満足度も低くなると云うのが一般的である。つまり,従業員の士気が低い状態では成果も上がらないことを証明している。まして昨今のように,外部社員が多くいる職場環境では,全体が盛り上がるようにするには従来とは比較できない難しい局面が出てきている。

この従業員満足度の低い要因はいろいろあるので,ここでは述べきれないが,大きくはその組織の風土・文化と云ったものにつながる。長年培われたものは簡単には良くならない。「公平感」,「達成感」,「連帯感」などの要素が大きく左右する。経営トップや組織責任者としては,最も重要視すべき課題である。

(続く)

 

人の意識,意欲は行動を大きく左右する

 

[Reported by H.Nishimura 2010.02.08]


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