■なぜ,行動(実行)できないのか 3(No.154)
【環境,組織 2】
環境,組織の続きを考える。
●行動を評価する風土が弱い
世間一般であるが,地道な行動をしている人よりも,口先だけで大きな事を言っている人の方が評価されることが多いことはないだろうか。もちろん,有言実行が望ましい姿ではあるが,それ以上に,口先だけで大風呂敷を広げているような人の方が目立ち,結果が全く伴わない場合は別にして,それほど結果が出て無くても,声の大きい人の方が評価されることが多い。
それは発言の量と質は誰もがすぐ評価できる。ところが行動はすぐに結果として表れないことが多く,すぐ評価することは難しい。つまり,結果がすぐ見える方に人の評価はなびく。これが組織風土としてあると,行動することが後回しになり,結果として行動できない組織体が出来上がってしまう。こうした風土は一朝一夕でできるものではなく,長年の積もり積もった結果なのでなかなか変えることが難しい。
こうしたことは,上に立つ人が一番気をつけなければいけないことである。しかし,上になればなるほど,幹部になればなるほど,現場の声がなかなか届かない。現場の声はフィルターが掛かって上に上がっていくので,大抵は耳障りな,悪い情報は途中で消されてしまうことが多い。だからと云って,現場のメンバーと幹部の懇談会のような形で,できるだけ現場の生の声を聞く機会を持とうと試みるケースもある。しかし,幹部にしてみれば,そうしたことで十分現場の声も聞いていると云う人もいるが,実際にはなかなかそうしたところで本音をズバリ云う人は少ない。そうしたところで云える人は普段でも主張している人である。
だから,上に立つ人は,会社組織を活性化させるには,実行力,行動を評価するメジャー(評価基準)を自ら持っていなければならない。もちろん行動した結果の成果は重要だが,そのプロセスなどもきっちり評価することが大切である。一番良いのは,会社組織の評価基準に行動力を評価するメジャーがあることだが,これまでの経験から云えばこうした人事評価基準は,なかなか真から行動力を発揮している部分を評価するよりも,やはり口先だけではないが,大風呂敷を広げた方が評価されやすい基準になっていることは否めない。
会社組織が,活発化し活力ある職場になっているか,そうでないかで,この行動を評価できている組織なのかの判断ができる。
●もたれ合いの風土
高度成長期にあっては,見習うべき見本があって,みんながそうしたお手本を参考にして努力していれば報われて,会社組織の成長も見られた。ところが,昨今のような,低成長になると,また激動の時代となると,お手本を見習うのではなく,自らが考え,率先してやらないと報われないようになってきている。ところが実際の職場などにおいては,みんなを引っぱっていくのはリーダの役割だとか,誰かがやってくれるので,それに従ってやれば良いのだと考えている人も多い。
確かに,組織はリーダが先導して活動すべきものであるが,指示が無いと行動が伴わないような弱り切った組織もたまに見かける。そうしたケースでは,自分に不利な状況が発生すると,会社が悪い,上が悪いと言いふらすだけで,自らが率先して何かをやろうとはしない。出る釘は打たれると云う風土がはびこってしまっている。先頭を走って失敗するよりも,後から付いていって無難に仕事をこなす方が楽である。確かに,世渡り的には上手いやり方かもしれない。
組織が硬直化し,自らを変えようとしない人の組織集団ではありがちな光景である。そして,会社組織として活発な活動ができているかと見ると全く正反対で,どんよりと暗い,成長が全く見られない組織になってしまっている。生きるための最低限の給料さえ貰えればそれで十分で,こんな状態ではいけないので何とかこうしたことから脱却しようと云う気力も見当たらない。
もたれ合いの風土で代表的なものが,最近新聞で賑わしている,JALの政官業(政界・官界・産業界)の癒着構造,もたれ合い体質である。国がバックアップしてくれるから絶対に会社が潰れることはない,赤字経営でも何とかしてくれる,と云った風土・体質がJALの中にあったのではないかと思われる。こうした依存型経営では,有効な手がなかなか打てなく(活動ができていない),沈んでゆくだけでしかない。
同じように会社倒産に纏わる話題には,もたれあい体質がよく言われる。公共工事における銀行とゼネコンのもたれ合いなど,世間を見渡すとこうしたもたれ合いの構図はいっぱいある。これは,社会として考えても良くないことであるし,公正な競争をしながら成長すると云う本来の会社としてのあり方からも逸脱している。それは結局,活動を鈍らせる体質を作ってしまう根源になっているように感じる。
●負のサイクルに落ち込んでいる上記のような風土が根付いていて,何か問題があっても自分たちの問題とは考えない,所謂,他責が蔓延している組織がある。自分が拙いと感じないものだから,反省しようとはしない。今回の失敗を振り返って,次は何とか上手く成功させようと云う流れにならない。とにかくすべてが,悪い方,悪い方へと向かっていくことがある。それは,その渦中にある人は決してそうは思っていないのだが,結局解決の糸口が掴めず,元に戻ってしまって,結果的には負のサイクルが廻ってしまっていることがある。
危機感を持って行動するのとしないのでは,結果にも大きく響く。しかし,伸びている,あるいは儲かっている企業は,組織全体がピシッとした正しい危機感を持ちながら,何をすべきかを考えている。だから行動も的確なやり方で結果が伴っている。ところが,儲かっていない赤字企業は,本来しっかりとした危機感で対応すべきなのだが,そういう組織に限って,危機感でなく,不安感,不信感が蔓延している。ところが,その不安感を間違って危機感と捉えてしまっている。だから不安感からの行動なので,行き当たりばったりで,後ろ向きな行動が多く,当然成果も出ない。
こうした場合,考えていることが,「なぜ,できないのか?」ばかり考えている。確かに反省は必要だが,一番肝心な,「どうしたら実行できるか」を考えていない。反省で,出来ない理由を並べても行動には結びつかない。だが,こうした場合に限って,上手い言い訳けを考えつくものである。これでは,前向きな活動に結びつかない。
行動の成果はすぐにはなかなかでない。だから,執念深く,じっくり成し遂げないと成果にはならない。しかし,負のサイクルが廻っている組織では,あきらめが早い。少しでも結果が見えないとすぐ諦め,違う方法に変えてしまう。短期的な成果を性急に求め,中長期的な視点は全く入っていない。実際には,長い期間の成果で見ると,じっくり諦めずに取り組んでいる方が成果が出ていることが多い。
自分の周りの重要な課題,例えば,新製品がなかなか出てこない,赤字経営から脱却しない,販売が伸び悩んでいる,方針がくるくる変わる,社員が減っている,などいろいろな課題を抱えている場合が多いはずである。こうしたとき,上述したような負のサイクルがグルグル廻っているだけで,解決の糸口がなかなか見つからないと云う状態になっていないか,見直しして欲しいものである。
(続く)
あなたの職場風土は,行動力を認めていますか?
あなたの職場は負のサイクルに陥っていませんか?
[Reported by H.Nishimura 2010.02.01]
Copyright (C)2010 Hitoshi Nishimura