■2010年を迎えて 1 (No.150)

21世紀も10年目に入る。歳月の経つのは早い。昨年1年間を振り返ってみて,いろいろな出来事があった。

  政権交代

何と言っても最大の出来事は,自由民主党政権が終わり民主党政権に変わったことだろう。戦後から,1990年代の一時期を除き一党独裁の政治が続いていたが,国民目線から離れてしまった自由民主党にNOを突きつけたのが,8月終わりの衆議院選挙であった。民主党有利との予想はされていたが,圧勝に終わり,鳩山新政権が発足した。

脱官僚を謳い文句に,政治主導の運営が行われ,その最たるものが事業仕分けに代表される予算の見直しであった。これについても既に述べているので多くは述べないが,これまでとは違った新たな切り口で国民の前に我々の税金がどのようなものに使われようとしているのかを示してくれた。事業仕分けの対象となったものは予算のごく一部ではあったが,その中にもムダな予算があることが判り,その必要性を訴える側の上手,下手があらわになった。

こうした交代による新鮮さとは裏腹に,日米関係は沖縄の普天間基地の移設に関してギクシャクしている。日米の安全保障条約の関係を対等な立場で対応しようとする思惑はよく判り,且つ社民党,国民新党との連立政権と云う足枷のもとで,十分な舵取りができない状態で,米国と対峙しようとしているので自ずと無理が生じており,鳩山外交を問題視する声も大きい。日米安全保障条約の基本理念に則った判断が重要で,国民の声を大切にすることは必要なことであるが,国と国としての関係をきっちり守って欲しい。言うべきことはしっかり言うことは大切なことだが,日本の安全を米国が守ってくれている条約の相互の役割,負担を十分理解した上で判断することが大切だと思う。

そもそも鳩山総理のスタンスがみんなの意見を十分聞いてから判断すると云うのだから,なかなか結論が出てこない。総理自身の決断力を疑問視する声も出始めている。新政権100日(3カ月)が過ぎ,いつまでも前の政権の悪口を引きずってばかりではいけなくなってきている。一番の問題は,経済政策で二番底とも云われ,景気回復の兆しがなかなか見えてこないところである。新政権になって良かったと言う声がまだ残っているものの暮らしはどんどん悪くなってきていると感じている人が増えてきている。また,自由民主党の終焉に目立った二世,三世の内閣総理大臣の閉塞感が政権交代してもまだ続いていると感じている人も多い。

マニフェストは公約なのでそれを破るのは選挙民を裏切る行為だという声が大きい。確かに,マニフェストを信じて投票した人も多いだろう。しかし,景気回復が遅れ,税収が低迷している状況で,マニフェストを厳密に守ることよりも,景気回復で国民の生活を豊かにする方が,本来の政治のあり方ではないか。政治の目的は何か,公約は確かに重要なやるべきことには違いないが,経済状況など世界情勢の変化に対応して国民生活を守ることの方が優先されるべきで,きっちりとマニフェストを変更する理由を国民の前に示せば,多くの国民は理解するのではないだろうか。目的は何か,本質的なことで判断すれば良いのであって,人気取りが政治ではないはずだ。人気取りだけの政治姿勢では長期政権維持は難しいのではないだろうか。

「コンクリートから人へ」と税金の使い方を変えることも主張の大きな一つである。子供手当新設など,すべての国民が子供を育てるのだと云う高邁な理念の基に作られたものであるが,ばらまきだと云う声もある。確かに,子供手当と云いながら支給されたお金が子供を育てることに使われるかどうかは判らない。ただムダな公共投資よりもましだとも云える。しかし,コンクリートで代表される公共事業は,地方の経済を大いに潤しており,公共事業が無くなると地方は疲弊してしまうとも云われている。それは,公共事業に代わる産業をきっちり示し,地方が元気になる道筋を示しておくべきである。大阪の橋下知事のようにパフォーマンスが上手でマスコミを味方に付ける術を知っている知事ばかりではないし,地方格差は大きい。だからこそ,「コンクリートから人へ」と云う地方でのシナリオを国は示すべきだと思う。

  新型インフルエンザ

メキシコを発端に新型インフルエンザが流行した。最初は水際作戦として,入国者のチェックを厳密に行う措置が取られたのも束の間,日本へ上陸,あっという間に全国各地に広まった。特に,子供など抵抗力の弱い年代が重傷化する確率が高く,ワクチンも医療従事者を初めとし幼少児童を優先的にワクチン接種が行われている。勤務先でも,家族が罹って濃厚接触者となり,出勤を止められた人も居たようである。インフルエンザの一種と云えばそれまでだが,日本中がこれほど大々的な対応をした例は経験したことがない。

これほど感染力が強く,且つ高熱で,ひどい場合には死亡に到る病気で,誰もがその危険性を持っているものは少ない。感染の恐れを避け,一般患者との区分も厳密にされ,一時は病院に行く前に保健所など特定機関に届出をして,その指示に従うなど大変な騒ぎになった。

こうした恐ろしい病気は,何年かに一度世界のどこかの国で発生し,あっという間に世界中に広まると云う経験をしてきている。何か人間の力では不可避な大きな力が働いているのではないかとも感じてならない。環境汚染など,人間が自然界を破壊してきたツケが,このような形で返ってきているのではないかとさえ思うのである。

幸いにも重傷になられた方は私の周辺にはおられないが,日本では不幸にして亡くなられた方も出てきている。しかし,いつ何時,自分の身に降りかかってくるのではないか。それに対して,手洗い,うがい,マスクの使用など,出来る限りの予防を心掛けておくことは重要なことである。自分だけは大丈夫だと,油断する心構えが一番危険性を呼び込む基ではないだろうか。過度に敏感になったり,不安になったりと心の安定を失うことがないようにしたいものである。

(続く)

2010年,今年は景気回復した素晴らしい年でありますように

 

[Reported by H.Nishimura 2010.01.04]


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