■WBS(Work Breakdown Structure)について 1(No.144)
プロジェクトで仕事をしている人には馴染みのあるWBSであるが,通常のオペレーションの仕事をしている人には馴染みの少ないことばである。このWBSについて考えてみる。
WBS(ダブリュー・ビー・エス)とは
プロジェクトマネジメントの計画フェイズにおける主要なツールで,プロジェクトの成果物あるいは仕事(work)を詳細区分(breakdown)して階層構造(structure)化した図表,あるいはその図表によってプロジェクトのスコープ全体とその中で作られる成果物ないしは作業の関係を体系的に集約・把握する手法のこと。
WBS作成はプロジェクト計画の初期に行う作業で、プロジェクトで実施されなければならないすべての作業を洗い出し,同時にプロジェクトマネジメントにおけるコントロール単位を明確化するものとなる。WBSはその後のプロジェクト工数の見積もり,日程計画(ネットワーク図など),調達管理(外注化判断),資源配分計画(役割分担表など),予算/コスト管理(EVMSなど),リスク管理といったフェイズのベースとなるもので,プロジェクトマネジメント全体の基盤となる。(以上,@IT情報マネジメント用語事典)
つまり,プロジェクトを進める中で,目標達成に向けて誰が,何を,いつまでにやるかを全体的に網羅したものであって,これを基に作業を進めることになる。
WBSの作成目的
最終目標を必達するために,やらなければならない仕事を分解し,階層化して順序立てられた仕事の一つひとつにリーソースを充て,プロジェクトを確実に進めるために作成される。もちろん,分解した仕事に抜けがあってはいけないし,順序が間違っていても予定通りに進まないため,十分考慮して作成しなければならない。
大まかなスケジュールはトップダウンで作れるが,規模の大きなプロジェクトになると,トップダウンだけでなく,ボトムアップの精緻なWBSが必要となる。これらが,工数見積もり,日程計画(委託先,外注先を含む),要員計画(リソース),コスト管理,リスク管理などあらゆるものの大元となる。したがって,このWBSがしっかり出来上がることが,プロジェクトにとって非常に重要なものとなる。
また,このWBSの中で,通過しなければならない重要なポイントをマイルストーン(中間目標点)として,最終ゴールへの影響をチェックするポイントとされ,プロジェクトの経過過程で必ずチェックを行うシステムになっている。
WBSの管理
WBSの管理は,昔はアローダイヤグラムなど,各仕事の始まりと終わりを明示して,それに日付け,及び担当者を決め,並行で進むもの,順序を追って進むものなど一覧の図表で明確にしていた。昨今はパソコン上で,使い易いように自分たちで工夫したものを用いたり,或いは,MSプロジェクトといった専用のソフトもあり,これは各仕事の始まり,期間,担当者,従属関係を入れると,自動的に工程チャートを作ってくれるものもある。
いずれにせよ,仕事に対して計画として明確になっているので,実績を入れて遅れが生じるとすぐ判り,その原因も掴み易くなっている。各仕事が最小単位の仕事にまで分解されており,この最小単位をWP(Work Package)と呼び,WP数の消化具合をカウントしてプロジェクトの進捗を大枠で見ることもできる。
WBSで重要なことは,多くのWPが存在するので,その一つひとつの遅れを気にしていると限りがなく,その仕事が遅れると全体の日程に影響を及ぼす仕事がある工程を,クリティカル・パスと呼び,そのパスの管理をすることで全体の遅れをコントロールする手法が用いられる。これは,クリティカル・パス以外の工程では,多少の遅れはバッファー(余裕の日程)が設けられており,バッファー内の遅れまでは後工程に影響を及ぼさないからである。
つまり,プロジェクトリーダはWBSを管理する重要な手法として,先ず,WBSの中からクリティカル・パスの工程を選び出し,その工程の遅れが無いかどうかをチェックすれば,全体の大凡の管理はできることになるからである。
(続く)
参考:プロジェクトマネジメント 3.2 作業を分解する〜3.5 負荷ならしをする
WBSの目的をよく理解しよう。
WBSを有効に活用して,プロジェクトを成功に導こう
[Reported by H.Nishimura 2009.11.16]
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