■ISO9001について 3 (No.142)
最後に,ISOに関することで感じていることを述べよう。
普通一般にISOと云えば,その管理部門は品質部門であることが大半である。確かに品質管理の基本であり,的を得た部門である。しかし,私の経験からすると,そもそもISOの管理,旗振り役を品質部門が中心になって進めているから,ISOの審査員も確かに品質管理経験者が多い気がするが,これがISO推進の間違いの基と云える。
つまり,すべての品質管理者とは云わないが,どちらかと云えば品質部門と云えば管理することが主体である。従って,当初のISOは文書管理中心で,その推進に当たるのが品質部門で良かったが,2000年度版では,品質管理中心と云えばそうであるが,その変更の主旨からすれば,むしろ経営企画,経営管理部門が主体で,ISOを事業にどのように活かすかを検討すべきである。品質部門が主体でやっている限りにおいては,2000年度版以前のISOのままである。世間一般にISOが文書管理主体で経営にどう役立つのか,と疑問符を抱き続ける人が未だに多いが,それは多分,品質管理部門が旗振りをしていると思う。
前回,説明したように2000年度版ではISOとしてどのように活用して経営貢献するかである。ここのところが変わらない限り,会社内でISOが非常に有用な手段,ツールとは認められないだろう。残念ながら,ISOが経営に貢献しうるシステムと認識されていない会社が大半である。しかも,一度取得したものを,維持管理として継続審査を受けている。品質部門に変われと云ってもムダなので,やはりISOを正しく理解した者,特に,経営部門が立ち上がるべきである。
トップの前向きに取り組む姿勢が重要である。
私がISOを活用する方向に変えた手法を披露すると,まず,第1はトップの意識である。これまでのISOはともすれば,品質部門の恒例の活動の一環とのとらまえかたで,決して積極的に改革につながるような活動にさせると云った思いは皆無に近かった。これは,ISOが文書管理中心の,品質中心の考え方が支配していた。それが,今なお受け継がれてきている。しかし,ポイントを改革することにおけば,すばらしい手法に変身すると思われる。そのためには,まずトップのISOに対する意識,意欲が重要である。
旗振り役を改革部門へ移管
旗振り役を現状の品質部門から,改革推進部門(企画Gでもよい)にすべきで,事務局としては手法を心得た品質部門でよい。内部監査のポイントを仕事の改革,改善に的を絞り,改革の推進のフォローにISOを活用する。
部長クラスの意識がポイント
トップの次に一番要となっている部長クラスのISOに対する意識である。非常に意識の高いレベルから,全く無視のレベル,或いは部下任せのレベルと様々である。この関心のなさの大きな理由は,ISOをやっても効果が上がらない。特に,経営的効果が望めないと思っている人が多い。このクラスの意識がISOの内部監査を仕事の改革にポイントをおいたものにする意識に変えることが必要である。
内部監査員の質の向上と改革意識の醸成
内部監査員の質も,従来型の決まった手法で監査するタイプを一掃し,改革意識のある人を内部監査員に養成し直す。品質マニュアルを改め,改革マニュアルなるものに作り直す。即ち,基本をISOに置きながら,改革,改善のポイントに焼き直す。それをもとに内部監査員の教育もやりなおす。
間接部門の効率化など容易に達成可能では
仕事の基本に沿った合理的なやり方が求められており,内部監査によって,ムリ,ムダ,ムラの発見が容易で,間接部門の効率化などが,簡単にできる手法の一つでもある。アンケートなどを採って間接部門の効率化を図ろうなど何度も繰り返されているが,全くナンセンスである。そんなことでできるようなら,既にできている筈である。プロセスの見直しからきっちりやらなければ,掛け声だけでは,間接部門の効率化などできはしない。ISOにはこのプロセスから見直すことができるツールである。
以上のように,活きたISOがツールとして使えるのである。
活きたISO9001を正しく活用しよう。
[Reported by H.Nishimura 2009.11.02]
Copyright (C)2009 Hitoshi Nishimura