■ISO9001について 2 (No.141)

前回に続き,ISO9000の正しい認識について述べてみる。これは先に述べた2000年度版として,これまでのISOの批判内容も受け,経営に貢献する形としての規格のあり方として見直されている。

2000年度版で変わったこと

当初のISOが求めたものは,確かに形式を重んじ,書類の印鑑一つの有無が問題になっていた。活動の中身ではなく,正しく文書管理に終始し,多くの部門が膨大な管理ファイルを作り,管理することにあった。しかし,それらは日本の阿吽の呼吸で仕事をするやり方には正反対のマニュアル中心の欧米スタイルの仕事のやり方であった。やがて日本だけではなく全世界において,企業活動にそぐわない,効率的でない面が見直された結果,ISOでも改良が加えられることになり,これが2000年度版として示された。

改定された主な内容は,@顧客志向,A継続的改善,Bプロセスアプローチ,の導入で,品質マネジメントシステムの有効性と効率の改善を通し,全ての利害関係者の利益を追求しながら,市場の声に応えている。

この理解に当たっては,2000年度版の改良の基本的な考え方になった「品質マネジメント8原則」があり,これをまず理解しておけば,2000年度版が目指すところの本質が判るので,これを以下に示す。

原則1 顧客志向の組織 組織は顧客に依存しており,それゆえ現在と将来の顧客のニーズを理解し,それを満たしつつ顧客の期待を超える努力をすべきである。
原則2 リーダシップ リーダは,組織の方向と目的の調和を確立する。リーダは,従業員が組織の目的達成に向け全力を出せるような内部環境を構築維持するべきである。
原則3 従業員の参画 全ての階層の従業員は,組織の根本的な要素であり,従業員の全面的な参画によりその能力を組織の利益に向けることができる。
原則4 プロセスアプローチ 関連する資源と活動をプロセスとして管理することにより,意図した結果が効率良く達成できる。
原則5 マネジメントのシステムアプローチ 与えられた目的に対し相互に関連するプロセスのシステムを明確にして,理解し運営管理することが,組織の有効性及び効率を改善する。
原則6 継続的改善 継続的な改善は,組織の永遠の目的とすべきである。
原則7 事実による意志決定 有効な決定は,データ及び情報の分析に基づく
原則8 供給者との互恵関係 組織と供給者の独立かつ相互に有益な関係は,お互いの価値創造能力を強化する。

以上が,ISOの根幹をなす基本的な考え方で,具体的なやり方についての詳細な内容は,章立てになっていて従来のやり方とそれらがどのように変わったかが示されていて,ISOのやり方を学ぼうとする人にはHow-toとして示されている。しかし,それらを学ぶ前提として前述した基本的な8原則を忘れてはならない。むしろ,ISOの2000年度版はこの8原則をしっかり理解しておくことが重要なのである。

仕事のやり方の基本がISO9001 2000年度版にある。

ISO9001はグローバルスタンダードとあって,仕事のやり方の基本がここにあり,これまでの個人を中心にした仕事のやり方を,組織を中心にした仕事のやり方(グローバルスタンダード)になり,効率UPになる。そのポイントは,

@ビジョンを組織の末端まで徹底することが容易

トップの役割から,末端の活動まできっちり整理ができているので,トップのビジョンが徹底されやすい仕組みになっている。且つ,どのように組織的に展開しているかのフォローができる。

A顧客志向を重視した仕事の進め方

優良企業の多くが,顧客を重視した仕事のやり方に変わってきており,ISOの要求も2000年度版から変わってきている。まだまだプロダクトアウトの考えが根強い中で,顧客を重視した観点での仕事の進め方に改革できるツールでもある。ISOを上手く活用することが,諸課題を解決できることにつながる。

Bプロセスアプローチによる全体像を把握した仕事

仕事の流れ,組織間の連携など,仕事のプロセスを明確にすることが求められている。このことは,日本流のドキュメントの無い,阿吽の呼吸で仕事をしているやり方から脱皮し,グローバルに通じる効率的なやり方を求められてきている。一見,ドキュメントやマニュアルの作成など余分な作業が発生し無駄なように思われるが,人の変化が激しくなってきた時代には必要不可欠なものである。長い目の効率を考えよう。

CPDCAのサイクルで継続的な改善

仕事のやり方で,言った方が勝ち(有言無実行タイプ)のようなところが多い。大風呂敷を広げるだけでフォローが無いのが大会社には多い。グローバルに力量を持った企業は,PDCAのサイクルがきっちり回り,継続的なフォローがしっかり出来ている。今一度,小さな一歩から改善するやり方を見直すべきである。

と,云ったものである。少なくとも世間一般で言われる文書管理中心ではないことは明らかである。ISOの2000年度版として,考えるべきことが多いのではないだろうか?

(続く)

ここでもう一度,ISO9001を正しく理解して活用しよう。

 

[Reported by H.Nishimura 2009.10.26]


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