■ISO9001について 1 (No.140)
入社したとき,会社としてデミング賞を取った2,3年後だったので,品質管理には結構うるさかったように記憶している。その後,品質管理の考え方や研修は定期的に行われており,ある意味必須でもあった。それがいつしか1990年代になってISOの導入が始まった。詳しくは記憶していないが,海外会社をはじめ全社でISO9000,その当時は9001〜9004まであって,設計などのプロセスから仕組みを持っている部門はISO9001と,物づくり中心の工場はISO9002と分かれて取得していたように思う。
とにかく,ファイルがカウンターにぎっしり一杯入り,書類を整理して保管することがその代表のようで,ISOと云えば文書管理を連想させられた。当初は,こぞって文書管理のための文書を作ったり,それを管理するための管理をやったりとどうみても効率的には思えない産物で,開発設計をやっていた私などには,品質部門が管理するために作業をさせていると云う印象しかなかった。だから,言われたときは従っていたが,みんながこぞってISOと叫ぶことに違和感を覚え,一線を置いていたように記憶している。
受審する前に内部審査があって,事前に職場内で監査をしておく必要があり,会社内で内部監査員と呼ばれる事前審査員が数名必要で,それほど興味もなかったが,やらされることになり,内部で監査員の研修を受けなければならなかった。丁度ISOの節目で,2000年度版が出され,その内容を理解するために研修を受けることになった。そこで,事前に2000年度版になってどこがどのように変わったのかを知るために,以前の版(96年度版)と2000年度版の違いを比較した書籍を入手して,どのようなものか理解することにした。
ちょうど,ISOそのものが曲がり角と云うか,ISOをやり始めても,文書管理などやることはいろいろあって管理はされるようになるが,その効果を疑問視する声もあり,ISO機構自身が見直しを迫られていたようでもある。このことは定かではないが,変更の理由など,従来版の違いを知ると,これまでの形式中心,押印のあるか無いかの判断などから,経営に貢献するようなやり方への変換を余儀なくされているようであった。だから,その主旨を良く理解できたので,これまでのISOのイメージがこのときから変わってしまった。
しかし,研修の中身たるや,散々なもので,昔からISOに携わっている品質部門の主任クラスが問題などを出しながら教えてくれるのだが,肝心の考え方の基本には簡単に触れただけで,如何に上手く受審するか,その事前審査のテクニックのようなものの研修だった。確かに,内部監査員を養成する研修なので多少は仕方ないにしても,これだからISOが役立っていないのだと感じることに直面したことを今でも覚えている。
それはISOの内部監査員の講座の事例研修だったが,ある部署で必要なファイルを整理,管理されていた。しかし,ISOの仕組みには,それらのファイルは入っていないファイル類だった。しかも最新版管理が不十分なものだった。このときの指導員の発言が次のようなものだった。「ISOの監査では,先ず最新版管理ができていないことはまずい。このようなファイルを持ち出してくること事態が間違いで,このようなものは隠しておくべきです。」 そのとき私は,みんなの受講者を前に反論した。「それはおかしい。ISOの考え方からしても,必要なファイルはむしろ管理される仕組みにすべきで,審査をパスするためには隠すなど,全く発想が逆ではないか」と。勿論,指導員は説明が拙かったと訂正された。ISOの監査員として登録されている人は多い。しかし,本当にISOの考え方を正しく指導できる人がどれだけいるのだろう?内部監査員の指導員を養成する場ですら,このような発言が出たのである。
これを機会に,ISOの内部監査員として,監査そのものよりもISOの考え方そのものを普及させ,正しくISOを理解し,経営に役立つようなシステムとして使う人を増やそうと誓ったのである。
(続く)
ISO9001を正しく理解して活用しよう。
[Reported by H.Nishimura 2009.10.19]
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