■新政権発足に思うこと 2 (No.138)
NHKの特集の「日本の,これから」と云う番組で鳩山政権のことを,多くの参加者を交えて討論をされていた。
脱官僚依存
前回,脱官僚と云うことを述べたが,民主党政権ではマニフェストにもそう書かれているとの説明があったが,「脱官僚依存」と云うのが正しい表現とのことである。つまり,官僚に依存した状態の自由民主党時代のやり方を変える,と云う主張である。
討論でもはっきり言われていたが,これまでのやり方は,官僚がでしゃばっていたわけではなく,政治家が余りにも頼りなく,官僚が政治家の領域まで入らざるを得ない状態だったそうである。大臣が,派閥の順送りなどで決して適切とは思えないような人がなり,何も判らない大臣に官僚がいちいちレクチャーをしなければならないことが常態として起こっていたようである。特に,国会の答弁たるや官僚の書いたメモをそのまま読み上げるだけの大臣が多かったようである。
民主党は,国会は政治家同士の討論の場にしたいと。官僚があれこれ準備した報告書を答弁するのではなく,大臣自らが考えた内容を議論しようとしたいようである。このためには,大臣はもとより政治家自身がもっともっと勉強しなければならない。もちろん,いろいろなことを調べるために官僚に指示して調べさせるのは良い。つまり,あくまでの主体は政治家が握っていて,それを上手く補佐したり,専門的な内容でアドバイスするなど官僚が協力することは非常に大切なことである。
それにしても,よくここまで日本の政治がいい加減な状態で放置されていたものだとあきれかえるばかりである。これも50年も続いた自由民主党時代の大きな弊害である。我々国民はそれを良しとはしないまでも,それを許してきたことは反省すべきことである。今回の政権交代は,まだ始まったばかりであるが,こうした積もり積もった膿を出すには良い機会である。是非,遠慮無く頑張って欲しいものである。そして,優秀な官僚を大いに使って,良い意味で活躍できる場を提供していただきたい。
サンクコスト
また,八ッ場ダムの議論にもあったが,これまでの公共事業は一旦走り出すと止めることを一切しなかった。だから,時代が変わり環境が変わっても作り続けてきたのがこれまでの政治である。それを民主党は,公共事業も止めることはあることを,この八ッ場ダムを先頭にしてやろうとしている。もちろん,政治に翻弄され続けている地元住民のご苦労は計り知れないものがある。住民感情からは,いい加減にしてくれ,と言いたくなるのは当然である。それと,こうした税金の無駄遣いは切り分ける必要がある。
八ッ場ダムの例では,総事業費4600億円でこれまで既に3200億円をつぎ込んでいる。しかし,当初計画から2倍の予算をつぎ込むことになっているようである。このこと事態非常に大きな問題である。計画時点で小さく見積もり国会の承認をさせ,それからは殆どチェックもなくどんどん税金をつぎ込んでいる。このようなことが行われていたことは今回初めて知った。こんなことは,到底許されることではない。プロジェクトマネジメントで云えば,計画時点の2倍もコストを掛けるなど,即不合格である。
また,これまでつぎ込んだ税金がムダになるとの議論もある。これは「サンクコスト」*と云って,民間の事業でも問題にされ,どうしようかと云う議論になる。しかし,一般的には,これからの費用対効果がどうか,と云う判断が優先される。つまり,つぎ込んだお金が大きいから何とかしなければ,と云うことよりも,今後のことを考えて判断するのが良いとされている。しかし,報道では一切そう言った説明もないし,議論もされていない。なぜなのだろうか?サンクコストのことを知らない訳ではない。難しいからなのだろうか?
*「サンクコスト」とは,埋没費用のこと。
事業に投下した資金のうち,事業の撤退・縮小を行ったとしても回収できない費用をいう。
サンクコストの代表例としては,イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機,「コンコルド」がしばしば例に挙げられる。
コンコルドは,高度5万5,000〜6万フィートの高々度を,マッハ2.0で飛行する。
しかし,騒音などの規制,乗客定員が100人と少なく,燃費も悪い,低コスト化が進む航空業界の情勢等々,開発段階から,サンクコストは免れないことがわかっていた。
英仏当局は,それまでの投資を惜しみ,投資をやめられなかったのである。そして,2000年8月15日、コンコルドは姿を消した。
この商業的な失敗の背景から「コンコルド錯誤」という言葉が生まれたのである。
サンクコストを思い切って切り捨てる勇気。
私たちは生きている限り,その判断が必要な場面に度々直面するが,「価値」を見極め,適切に決断する洞察が必要である。
鳩山新政権の活躍を願う
[Reported by H.Nishimura 2009.10.05]
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