■開発工数削減 2(予測・実績の差を分析する) (No.136)
プロジェクトを進める中で,予測を立て,それに対して実績を管理しながら進めていくことがある。実際には,なかなか予測通りに進まずいろいろな変化が生じる。かといって,予測がいい加減であってはならない。プロジェクトは予測を立て,予測通りに完了できることが最も良いのである。開発工数を削減するにしても,先ずは基準となる工数があって,それをどれだけ削減しようとする計画を立てるのである。
今回は,開発工数の基となるデータをきっちりとさせる意味で,予測と実績の差を分析することに関して述べてみる。単なる予測・実績差だけではなく,量と質の差に関して,きっちり分けて分析する。
工数は一般的に,ある工程の作業数とその作業の単位時間を掛けたもので表される。作業数をM,作業単位時間をTとすると,
工数(日)=M×T/8 で表される。(1日の作業時間を8Hとする)
ここで,予測作業数(M),実績作業数(m),予測作業単位時間(T),実績作業単位時間(t)とすると,工数は下図のような面積で示され,共通面積からはみ出した部分が,作業数に依存する増減分,作業単位時間に依存する増減分になる。下図では,作業数の減分,作業単位時間の増分となる。(増減が各々の増減で4つの場合ができる)
単なる工数比較だと,予測と実績で工数全体の増減(上図の面積に比較になる)だけである。しかし,各々の差分からはみ出した面積を出すことにより,予測と実績の差分がどちらに依存したものか明らかになる。つまり,作業数(量)の差分と,作業単位時間(質)の差分に分解することができ,それぞれの差の大きさが判る。
事例として,A〜Dの工程の作業数と作業時間の予測・実績が次のようになったとしよう。
予測
実績
差分
工程 作業数M 作業単位時間T 工数(日) 作業数m 作業単位時間t 工数(日) 工数(日) D A 25 1.25 3.91 23 1.10 3.16 -0.74 B 30 4.00 15.00 35 3.80 16.63 1.63 C 60 2.20 16.50 55 2.30 15.81 -0.69 D 20 1.50 3.75 22 1.75 4.81 1.06 これから各々の面積を計算すると次のようになる。(黄色が工数削減できた)
工程 量 差分(m-M)T 質 差分(t-T)M 補正分(m-M)(t-T) 作業数(量)差分 作業単位(質)差分 補正分 工数差 A -0.31 -0.47 0.04 -0.28 -0.43 -0.04 -0.74 B 2.50 -0.75 -0.13 2.38 -0.75 1.63 C -1.38 0.75 -0.06 -1.38 0.69 -0.69 D 0.38 0.63 0.06 0.38 0.63 0.06 1.06 これをグラフにしたのが下図である。
これは,工数の予測と実績の差分をグラフで示したもので,各工程での工数の差分が何に依存して発生したかが,量と質に分けられて示されている。これらを基に,量の差,質の差の要因を分析することにより,問題点も明確になると共に,今後の工数削減を検討する基準の見直しにも利用できる。つまり,単に目標の達成を論じるだけでなく,中身までをきっちり論ずることができる。こうした,分析はきっちりデータを蓄積して利用することを行っている仕組みではごく当たり前のことである。
工数削減も単なる数字合わせではなく,中身の吟味をして論じよう
量と質を分けて検討することは重要なことである
[Reported by H.Nishimura 2009.09.21]
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