■開発工数削減 1(目の付けどころ) (No.135)

プロジェクトを進める中で,スケジュール通りに完了させることは誰しもが容易に判ることであり,関心が高いが,決められたリソースで完成させられるかどうかは,経営的に見ると非常に重要なことであり,特に,経営幹部,上司からの要求,追求は厳しいものがある。これらに関しては先ず,プロジェクトリーダがきっちり把握して管理することが基本である。そこで,今回は,プロジェクトに於ける開発工数削減に関する話題について述べる。

  開発工数を削減するには

工数削減を考えろ,と言われたプロジェクトリーダは多い。特に昨今のように経営状況が厳しくなると,先ずは残業規制,さらに進むと外注(開発委託)規制,と進む。こうしたことは,結果として工数削減になってくる。つまり,限られた工数で予定通りの仕事をしなければならないので,効率を上げてやるしかないのである。このように,周囲の環境変化でやらざるを得ない状況になることが,工数削減には最も有効な方法の一つである。

しかし,一般的には周囲の環境変化を待っている訳ではなく,通常,企画段階などでも,リソースに関して,つまりプロジェクトでどれだけの費用を掛けるかは,トップの決済事項になっていることが多い。だから,時には,工数10%削減を目指せと条件付きで承認されることもある。或いは,事業計画時点で,生産性向上を目指すとして,方針的に,前プロジェクト比で30%の生産性改善を求められたりすることもある。

こうした場面に遭遇すると,先ずプロジェクトリーダが考えることは,前プロジェクトからの引継で,改善が可能なところを抽出し,効率を上げるために,一部自動化を考えたり,品質が下がらない程度に内容を省略したり,各工程のムダを無くすことを検討する。しかし,経験を積んできているプロジェクトであれば,前プロジェクトから30%も改善することは困難なことが多い。せいぜい,いろいろな改善を積み上げても前プロジェクト比,10%程度の改善になれば良い。

30%もの改善を要求される背景には,従来のやり方でなく,抜本的な見直しをこの際やって欲しい,との思いが込められている場合がよくある。しかし,プロジェクトリーダは,技術的な内容には強いが,こと経営的な内容にはまだまだ未熟な部分が多い。だから,どうしても技術的な面での改良,改善に縛られてしまう。それだけではなかなか効果は上がらない。

  管理工数の中身は

そこで,一度,プロジェクト全体に占める管理工数(実作業に含まれない,管理者の工数,会議,打ち合わせなどの工数)は,どれほどあるか,考えて見て欲しい。どこまでを管理工数とするかには,異論があるかもしれないが,少なくとも,開発に必要な実作業以外の工数は結構比率としては大きいのである。

例えば,昨今は社員だけでなく委託会社の人がプロジェクトに参画するケースも多い。そうすると,派遣者のように直接指示できるケースもあるが,請負ではそこの責任者から指示がでる。つまり,そこに管理者が余分に必要となる。経営的には,そうした管理者を増やしてもレート差(社員の費用と請負の費用の差分)によって成り立つことになってはいるが。こうした,通常では必要ない管理者が,大きなプロジェクト,複数社に委託しているプロジェクトになると結構な数になる。

実作業者10人に1人の管理者は少なくともおり,数人でも管理者が居るケースは多く見かける。仕事内容が複雑化,専門化してくると,ますますこうした専門家集団に任せるケースが増えてきているのが実情である。オフショア開発になれば,オンサイトとオフサイト,各々に管理者が必要となり,さらに増大する要因になってきている。

こうした管理者は,プロジェクトが実施される期間ずっとおり,それらを見直し,1人削減するだけでも,必死になって工程の開発効率を上げることよりも,簡単に工数削減できることがある。会議も同様で,定例会議を1/2の時間,又は1/2の人間でやることにするだけでも,毎週のことだと結構大きい。

プロジェクトの規模,組織構成,などいろいろな条件で違うので一律では言えないが,管理工数の比率は,15%〜25%程度にはなっていないだろうか。それを遙かにオーバーしているようだと,どこか通常とは違った余分な部分が発生しているのではないか。

  隠された工数とは

ここまでは,プロジェクトリーダも気づき,工数削減の検討対象になっている。しかし,実際に,プロジェクトに当たっていると,隠された(なかなか表面化しない)工数があることに気づく。

つまり,プロジェクトメンバーは8時間労働として,1日何時間実労働に就いているかである。40H/週とか,160H/月とか,計算の基本となる数値はある。しかし,実際8H/日,実労働しているかと言えば,そうではない。昨今,メールなど,仕事をしている部分と仕事とは言えない部分とが混ざったものがあり,こうしたものに時間を取られているケースも多い。容易に情報伝達できるメリットは大きいが,情報過多で実労働の時間が少なくなっているのも事実である。

これまでの経験では,管理者を除いて,一般作業者が実労働している割合は,70%〜80%程度である。(会議,打ち合わせ,メール確認,電話などは実労働以外として)

工数削減を本当に絞りきろうとするには,こうした隠れた工数部分にメスを入れることが重要で,後ほど述べるが,計画工数を8/Hで計画すると,隠された工数を引いた6.4H/日との差がどんどん開いていくことになり,プロジェクトが遅れていく要因にもなる。この20%〜30%の工数を削減することが,全体の工数削減には有効な場合がある。ただ,日頃の慣習として行われている日常活動なので,なかなか簡単に変えて削減することは難しいことではある。ここに着目することも必要である。

  目の付けどころ

開発工数を削減するには,どうすれば一番良いか?それは,できることを探して積み上げる方法よりも,工数全体を把握して,どこに一番工数が掛かっているかをしっかり見定めることである。その大きな割合を占めるところの削減を考えることが,一番効果的なことである。是非,プロジェクトリーダの皆さんは,全体から把握する観点を養って欲しい。

(続く)

プロジェクトを全体から見ることは,非常に重要なことである。何事も,先ず全体把握を!!

 

[Reported by H.Nishimura 2009.09.14]


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