■人材育成のあり方 4(No.134)
人材教育の観点ではなかなか難しい問題も多い。最後に,人材教育のあり方,と云えば大袈裟かも知れないが考えていることを述べることにする。
人材教育のあり方
人材教育は,会社にとっても個人にとっても非常に重要なことである。大会社はこれまでの経験を基にした,教育訓練のシステムが出来上がっていて,その年代,その立場に応じた教育が施される仕組みになっている。これらについては,何の言いようもないものである。
しかし,まだまだ多くの企業,特に新しく会社を興したベンチャー企業などは,こうした教育システムはない。もちろん,いろいろな情報でどのような教育が必要かについては十分検討もされている。しかし,実際にきっちり教育が行われているかと云えば,必ずしもそうではない。ただ,関心は強く,各企業のホームページを見ればよく判り,優秀な人材を集める目的からも,どのような教育をすれば良いかについては述べられている。
その一つに,いろいろな資格制度や認定制度があり,このような有資格者が何人いるとか,こうした認定を受けているなどと云ったことを会社のPRにしているところも多い。特に,若い企業はこうした資格や認定が無いことから,資格者を増やすとか認定を受けるとか,こうしたことに非常に関心が高いことが多い。人材教育の一環として,こうした有資格者を増やすこと,或いはある認定制度を取得することを目指すと云ったことが行われている。
その実態をすべて調べた訳では無いが,その状況を垣間見ると,私の経験から言わせると違った見方が出てくる。つまり,ベンチャー企業や新興企業の経営者が,直接指示命令しているわけではなく,中間管理職なる担当者が社長の言明を受けて色々苦心している姿がある。その人達は経営的立場よりも自分の立場で物事を判断しており,目的が有資格者を増やすこと,ある認定を取得することになっている。実態として必要なことは,そうではなく会社のシステム,仕組み,プロセスをしっかり構築することの方が優先されるべきである。
中間管理職でこうした会社として何が一番重要かを真剣に考えて,社長に意見具申している人になかなかお目に掛かれない。もちろん,私の狭い経験や情報なので必ずしも全ての方がそうだとは思っていない。しかし,多くの中間管理職は,自分の立場で物事を見,判断していることは確かである。つまり,会社として,或いは社長として,会社をどのような方向を目指そうとしているかとの思いが先ずあるはずである。そのあるべき姿に近づくやり方としての人材教育がどうあるべきか,これが最も重要なのである。経験が少ないベンチャー企業,新興企業では,その重要なポイントが抜けていることが多い。もちろん,本人も抜けていることすら自覚がない。
人材教育とは,やはり会社としての目指す姿,それに必要な人材を育てることである。個人的にも,会社の目指す姿を求め続ける中で個人としても成長したいと願っている。つまり,双方にとって願うべきことなのである。それらが果たして,個人としての資格を取ることや会社として認定を取得することなのか,特に人材教育に携わっておられる中間管理者はよくよく考えて頂きたいものである。
人は自然に育つ
人材教育とは別の見方となるが,人は会社の重要な仕事だと認識して仕事をすることによって,知らず知らずのうちに成長している。だから,改めて人材教育としてやらなくとも,OJTで教育されている。それに,自分で目的をもって仕事をしておれば,その成長も著しいものがある。言われたことをただ黙々と仕事しているのとでは大きな違いが出てくる。
1年の経験と,3年の経験では明らかに,3年経験した方が成長している。このことは,自然に育っていることを示している。もちろん,この場合,狭い経験した範囲内での成長ではある。いろいろな教育を受けた人とでは,知識としての差は出てくるだろう。知識は持っているだけではダメで,それを活かすことが重要である。だから,知識をいくら持っていても,と軽んじてはこれもダメである。実行力は知識の中から出てくるものであり,もちろん判断力は知識を伴う。
昨今の激変する社会では,知識だけでは不十分で,変化に対応した実行力が求められている。だから,単に座学の教育を受けるだけでは不十分であり,最近の教育も座学だけでなく,ケーススタディを学んだり,実際の場面に遭遇した演習を行ったり,といろいろな工夫は凝らされてきている。これらは,資格を取る教育ではなく,実践を意識した教育である。人は実践を通じて教育される。会社の重要な幹部になっておられる方は殆どが,会社に重要な貢献をされてきている。つまり,実践を通じて大きく成長されているのである。決して知識が豊かだけではない。
人材教育のあり方をよく考えてみよう
[Reported by H.Nishimura 2009.09.07]
Copyright (C)2009 Hitoshi Nishimura