■人材育成のあり方 1(No.131)

人が育って欲しい,部下がもっと伸びて欲しいと思っておられる社長や幹部,或いは中間管理職の方も多い。社員が育つことは会社にとって大いに役立つことであり,これを願っていない人は誰も居ない。社員自身も自分として成長したいと思っている人が殆どである。ところが,なかなか思い通りに育ってくれないのが実態である。

  人が育たないと嘆く裏に何があるか

いつまで経っても少しも成長しない人は少ない。各々時間と共に成長はしているが,その成長のスピードが思っている程でないとき,もっと成長してくれたら・・と嘆く。或いは,役職のポジションはあるのだが,そのポジションに就くには,もう一歩と云う人ばかりだったり,また上に上がって貰おうと少しレベルの高い仕事を与えたところ,期待していたような仕事をしてくれなかったり,と。

人を育てると云うことは,パターン化された一定のやり方ではなかなか思い通りにはならず,各人各様のやり方で育てなければならないのが実態である。もちろん,大企業など人材が多いところは,一定のパターンの教育で順次振り落としていって,残った優秀な人を採用していくと云ったやり方ができる企業もある。しかし,こうしたケースは希で,やはりそこに居る人を如何にして育てるかが一番重要な課題なのである。「製品を作る前に人を作る」(松下幸之助)と云われたこともある。

普通一般に会社では,社員として採用され,これまである程度基本的な教育を受けているので全く仕事ができないと云う人は先ずいない。そこから一皮むけて,期待する通りに,或いは期待以上に育って欲しいと思うから,その期待とのギャップが社長や幹部,或いは上司をして,もっと育ってくれたら,と嘆かせるのである。

ところが,現実には仕事の実態は結構残業など,一日目一杯の仕事をさせていて,じっくり考えて仕事をする機会などを与えていないことが多いのである。人は忙しく仕事をするだけで,十分満腹感を感じて,それ以上勉強しようとか本を読もうとか,何か目的が無い限りしないのが普通である。週5日間,ぐったり仕事に疲れ,土日は子供などを中心の家庭サービスで精一杯の日々である。昇格試験などがある場合を除いて普通のサラリーマンはこうした日々で追われている。だから,仕事をする中で成長できるのが一番で,一般的に云われるOJT(On the Job Training)で学び成長することが重要である。

人が育たないのは教育の機会が無いからであり,何か別途新たな教育の機会を設けたら人がより育つと思う人もいる。教育の機会が無いよりもある方が良いのは確かである。しかし,学習の機会はいろいろな場面にある。忙しく仕事をしていても,得るものが多い人もいる。学ぼうとする,或いは成長したいと思う気持ちが強ければ,人は成長するものである。また,会社によっては社員教育のプログラムがきっちり決められているところもある。なかなか自分でどのような勉強をすべきか判っていないケースも多い。だから,あるポジションには少なくともこのような教育を受けておくべきだと会社として指針を示すプログラムができていることは有効なことである。

以前は社員教育として社内できっちり教育の機会を与えて,日常の仕事とは別に時間を与えるところが多かった。もちろん,今でもきっちりそうした教育を重視してやられている会社もあるが,それほど余裕のない会社も多く,個人の学ぶ意志を大切にし,会社が費用などの援助をしているケースも増えているようである。無理にではなく,自分自身が申告して,外部機関の教育を受けることをさせている会社も増えているようである。形はいろいろあるが,社員の育成をなんとかしようとされている。

また,もう一つリーダやマネジャークラスの人がなかなか育って来ない問題を抱えていることもある。各人そこそこのスキルや技術は持っているが,いざそれらをまとめて上手く製品化に結びつけたり,大勢の人間を使ってプロジェクトとして仕上げることに長けた人間が育っていないケースである。人間の成長の過程で,社員から役職を順番に上がって行くので,自然の流れのように見えるが,所謂技術職と管理職ではその仕事の質が違い,そこにはギャップがある。そのギャップを乗り越えられるかどうかで,リーダとして,或いはマネジャーとして仕事ができるかどうか,と云う問題がある。このことについては,後で詳しく述べることにする。

(続く)

なかなか人は育たないと嘆く前に・・

人の育成は難しい,でも非常に重要なことである

 

[Reported by H.Nishimura 2009.08.17]


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