■改善計画進行と実態との乖離 2(No.128)

  3.リーダの判断力

改善計画は自分たちで立てたものである。もちろん,リーダはその全責任力を担っていることになる。ところが,実際に改善計画を実行していくと,なかなか思い通りにならないことが多い。前述したように,計画時点の拙さがまともに出てくる。特に,計画時点の落とし穴で説明したように,数値の差は歴然としてくることが多い。

ところが,マジックではないが,数値目標だけを見ると,そこそこの値になっていて安心していると,とんでもないことが待っているので,リーダは,きっちり実態を把握しておくことが肝要である。と云うのは,担当者でも気づくことは多いが,担当者にとっては与えられた目標値に何とか近づけようと頑張るが,その差がどんどん開いて行くと,自分の能力が低いのか,目標値が高すぎるのかの判断はなかなかできない。どちらかと云えば,特に真面目にやる人にとっては,自分の能力不足と感じてしまう。少しの差の場合は,いろいろな工夫で挽回も可能だが,差が大きくなるとそうは行かない。また,ずるい人と云うか要領の良い人は,見かけ上の目標値だけをクリアさせることを考え,管理されている部分だけを維持しようと努め,実態ではどんどん乖離が進んでいる場合もある。

こうしたいろんなケースに遭遇しても,リーダやサブリーダが真の実態がどうなのか,現場を見ながら判断できなければならない。つまり,担当者は限られた範囲でしか見ていないが,リーダはそうではなく,全体を見ながら判断を下すことができるのである。それをせずに,担当者同様,狭い範囲でしか物事を見ずに判断しようとすると,間違いを犯す可能性が高くなる。部分最適は必ずしも全体最適ではない,と云われるように,改善計画全体としてどうなのか,と云う判断力である。全体から,特に経営的見地から物事を見,判断できるようになっているリーダは心強い。つまり,経営的観点が大切で,このことは即ち全体最適を表していると云っても良いくらいである。なかなか若いリーダにはこの経営的観点が付いていないのである。

現場の第一線の指揮者が,実態を敏感に感じないで誰が感じると云うのか? つまり,リーダやサブリーダは管理監督と共に,第一線で担当者を引っぱっていく役割を担っている。その指揮者が,計画と実態の乖離の事実を一番的確に把握できなければいけない立場であり,その判断力が大きく全体の成功,不成功に影響を及ぼす。したがって,乖離がひどくこのままではヤバイと感じた時点で,咄嗟に判断することが重要なのである。それをせず,判断が遅れるのはまだしも,感づいてもいないようなリーダでは失格と云っても良いくらいである。

リーダにとって,計画した通りの実行ができることが望ましい。当然,そんなケースは殆どなく,計画乖離は付きものである。この変化をどのように,読み取るか,その手腕がプロジェクトリーダには求められているのである。

  4.計画乖離の挽回策

最後に,挽回策にも触れておこう。

一般的な計画乖離の挽回策は,リソースの補充である。真の原因追及も大切だが,素速いアクションがまず必要で,リソースの不足分はすぐ補う申請をすることである。ズルズルと乖離が大きくなる前に手を打つ必要があり,その効果確認も重要である。リソースの補填ができたからと云って安心していてはいけない。必ず,その効果を全体から見て確認をしておかなければいけない。と云うのは,打った手が正しかったかどうかの確認は一番基本的なことであり,これができないようでは,何をしても上手く行く筈がない。

ところが,単純な場合は,打った手の効果がすぐ現れるが,複雑な問題を抱えている場合は,効果が見えにくい。一番厄介な問題は,技術的なハードルが高すぎたり,改善目標を必達するスキルがメンバーに欠如しているケースである。こうしたケースの見極めはリーダの仕事であり,的確な判断が求められることになる。

改善計画に無理があった場合など,目標そのものを改善することも重要である。安易に目標を変えることは賛成できないが,場合によってはいつまでもできない目標を掲げるよりも,目標を変更した方が良い場合もある。それらは,リーダが勇気を以て判断すべきである。スケジュールの延期も同様である。安易な延期は避けたいが,適当な時期に判断して,上の承認を取り付けることも重要な役割の一つである。

プロジェクトに変化は付きものである。その対応を如何に上手く,素速くできるかがプロジェクトマネジメントである。このことは,計画はいい加減なもので良いと云う意味ではない。計画そのものは十分検討して作成しなければいけないし,絶対に成功させることを前提に作られなければ意味がない。でも,環境変化は起こる。一番ベストなゴールを目指す意味で,適切な挽回策を選ぼう。

そして,最後には振り返りで,計画乖離の真の原因を突き詰め,次回,同じようなことが起こらないように反省をし,再発防止策をきっちり自分だけでなく,仲間にも伝承できるようにドキュメント化しておこう。

あなたのプロジェクトは当初の目標通りに行っていますか?

その目標乖離の実態を的確に把握できていますか?

挽回策はベストな選択ですか?

 

[Reported by H.Nishimura 2009.08.03]


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