■報告書作成のポイント 2 (No.127)

報告書作成のポイントを続ける

  3.ストーリー性がなく,理解しづらい

報告書はきっちり読まれてこそ価値がある。ところが,作ることに精一杯で,読み手を無視したような報告書を見かけることがある。その第一の特徴は,自分が見た順序や,思いついた順序で羅列したようなものである。確かに,自分にとっては順番で,都合が良いのかも知れないが,読み手はいきなり詳細な内容に入り込まされたり,そうかと思って読んでいると,突拍子も無い方向へ飛んでいってしまうなど,頭の中を混乱させられ,言いたいことが何か判らなくなることになる。やはり,報告書とは順序だてて説明しないと,なかなか読み手を惹きつけないものである。順番は整っていても,いきなり詳細な部分を説明されると,つい全体はどうなっているのだ,と聞き返したくなる。そういった点で,先ず全体像を示し,その上で詳細な部分に入ると云った順序が必要である。そうすれば,ストーリー的にもすんなり受け入れられることになる。報告書として,誰に,何を訴えたいか,それが明確でなければならない。

当事者同士でのやり取りの場合は,詳細なデータを示し合うだけでも話が通じる。しかし,報告書としてまとめると云うことは,当事者以外の第三者,上司であったり,関係者だったりが読み手になるはずである。と云うことは,いきなり詳細な部分の報告をされても,すぐにそのレベルに付いていけるとは限らない。話としての順序があるはずである。拙い報告書は,こうした観点が抜けていることが多い。つまり報告書を作成すること事態が目的化してしまっている。期限内に何とか作り上げることに必死である。これでは,なかなか自分の言いたいこと,主張が相手には伝わり難い。とにかく,手っ取り早い自分中心の偏りのある報告書になってしまっていることが多い。

こうした状況は,自分独りではなかなか判らないことが多い。読み手がきっちり批判をしてくれれば判るが,読み手がわざわざ指摘してくれるケースは少ない。報告書をまとめる段階で,仲間からレビューを受けたり,上司から指導を受けたりすることで,それらの点をきっちり自分のものにしていくことである。こうしたことを着実にできれば,報告書としての完成度は自然と上がっていき,読み手に自分の訴えたいことが素直に伝わる報告書となっていく。

  4.辻褄を合わせることはメリットが少ない

監査など受けるために,報告書を作成する場合があるが,こうしたときの落とし穴は,良い点だけを拾い集めたような報告書になることである。人間の心理として,悪いところはできるだけ見せたくない。良いところを強調して,プロジェクトや仕事が順調に進んでいることを見せたいと云う思いが強い場合がある。そうすると,評価の対象となる部分の数値はできるだけ良い値になるようにしようとする心理が働く。つまり,監査や審査対象となる部分は,余り指摘することも少なく,非の打ち所が無いとまではいかなくても,そこそこの出来上がりになっている。こうしたケースで監査,或いは審査を上手くパスすることはある。

ところが,実態はプロジェクトとして見ると,遅れが出ていたり,品質に不安があったりと芳しくない点が気になるのである。このように,報告書での報告と実態が合っていないケースがある。こうしたとき,鋭い上司はすぐに矛盾点を突き当てる。当の本人は報告書としてある程度上手く辻褄が合ったものにできあがったと安心しているのに思わぬ綻びを追求されることになる。若い担当者,リーダでは何とか上手くごまかせたと思っていても,経験豊かな,或いは現場に精通した上司には簡単に見破られてしまう。つまり,報告書として辻褄合わせを一生懸命やったとしても,一時しのぎになる場合(上手くパスしたとき)があるだけで,実態は何も,そうした監査や審査で変わることはないのである。結局は自分に帰ってくることをよく知っておくべきである。

報告書としてまとめることは,実態を簡潔に相手に判らせ,よきアドバイスや支援をもらう機会と捉えるべきである。即ち,辻褄合わせをして良い点だけを見せても,メリットは少ないのである。報告書を作るに当たっては,こうした心掛けを基に作成すべきである。



[Reported by H.Nishimura 2009.07.20]


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