■再発防止における原因分析のあり方 (No.123)

いろいろな問題を起こして,再発させないためにと原因を分析して対策を練ることがある。しかし,その内容を見ると様々な問題点が含まれている。このことに関して,今回は述べてみる。
重大な問題点を起こした場合,必ず再発防止策はどうしたか,と問われる。つまり,一度の過ちは大目に見よう,けれども,次からは同じ過ちを二度と繰り返さないで欲しい,と云ったことから再発防止策が検討されるのである。これまで,いろいろな事故が起こっている。人命に関わる重大な事故から,人身事故ではないが,会社に大きな損失を与えたようなことは,自分だけでなく,他の人も教訓として学んで欲しい,と云う意味が込められている。
しかし,現場でいろいろな再発防止策と云うのにお目に掛かるが,本当にまともな再発防止策を見たことがない。それほど大きな事故が出ていない裏返しなのかもしれないが,きっちりとしたものは少ない。そうしたことがなぜそうなっているのか,要因を探ってみる。

  1.言われたので,期限までに回答しなければならない。

最も多い例で,自らがじっくり反省するのではなく,上司などから反省しろ,いつまでに,と云われて検討したものがある。これらは,揃いも揃って,みんなが思いつきそうな対策,しかも時間も要し,その効果もどれくらいあるかあやふやなまま,取り敢えず手っ取り早く出来ることを並べて,再発防止策として回答するものである。その多くは,起こった現象を並べて,その現象を裏返しただけのような対策案をズラーッと並べたものである。方策がいろいろ書き並べられ,しかも担当者まで割り当てられ,真面目に取り組んでいるかのごとき回答である。こうしたものに,まともなものはない。

まず,検討にどれだけ掛けたか,思いつくまま適当に列挙して整理した程度である。現象が起こった原因がどこにあったなど,どうでもよい。とにかく,同じことが起こらないために,やるべきことを並べてみた対策になっている。彼らに能力が無いのなら仕方がないが,能力はあっても,そんなことに時間を掛けるのが惜しいのである。取り繕った回答を上司,または関係部門に回答することが目的である。

  2.深く考える習慣が無いので,どのようにすべきかわからない。

若い人に多いが,再発防止は重要なことは頭で理解できても,どのような考えるべきかよく判らない,と云った場合である。特に,対策を求められるので,先にできそうな対策を考える。それに辻褄の合うような現象と原因を整理し,対策案としてまとめる。とにかく,手っ取り早く終えてしまいたい思いが強い。先ずは起こった現象に目が向くので,その現象に対する対策,つまりここでもすぐ現象を裏返して対策にしてしまう。これではもぐらたたきも良いところで,同じ要因から次から次と違った現象が出てくる。

起こった現象にはその原因となったことがいろいろある。昨今では,品質改善策を考えるには,なぜなぜと5回程度繰り返さないと,真の原因に辿りつかないと,問題を発生した部署には徹底して原因まで深堀させられる。こうした仕組みを経験した人や,システムとして取り入れられている組織では,徹底して原因まで追求されている。こうしたことが強い体質を生む大きな要因になっている。深く考える習慣が無いのではなく,考えようとしないだけで,誰にだってやろうと思えばすぐにでもできることである。すぐに,質が向上するかどうかは別にして,いろいろな考えをすることになる。

  3.仕組みで解決しようとする。

再発防止策は,誰がやっても同じことが二度を起こらないようにするには仕組みに落とし込まないと人が変われば再発する危険がある。しかし,何でもすべて仕組みで再発防止ができると考えては大間違いである。仕組みを無理に入れようとすると,どうしても先にできる仕組みを考えて,それに合わせた回答が出来上がってしまう。つまり,人間のやる失敗なので,その原因が仕組みで解決できればそれに越したことはないが,先に仕組みの答えを考えるのでは明らかに間違っている。

人の失敗なのでスキル不足の場合もあろう,また,モチベーションが下がった状態での失敗もある。その真の原因が何なのか,それを突き詰めるのが先決である。単に現象を裏返しているのでは,スキルやモチベーションと云った原因へは決して到達はしない。真底の要因にそうしたものが潜んでいる。先ずは,こうした真底に潜んでいると思われる要因を洗いざらい出してみることから始めなければいけない。

こうしたことが出来ているかどうかはすぐ判る。立派な報告書だけでは判らないが,その下書きとなった分析資料がどのくらいあるか調べれば一発で判る。何一つ分析資料が見出せなかったとすれば,それは報告書をまとめるために,必死に思い付きを並べているに過ぎない。そうではなく,地道に分析をして例え立派な回答に辿りつかず終えたとしても,それで十分である。そこまで詰めておくと,あるとき,ハッと気づくことがある。人間の頭脳は良く出来ていて,潜在的に記憶されていたことが,何かの拍子で思い起こされることがある。きらりと光る,重要な点が発見されることがある。こうした地道な仕事をきっちりやることが再発防止に一番有効なのである。

  4.問題の重要性の認識が甘い。

これも若い人に多いが,再発防止策を検討しろと上司や関係者から言われても,その仕事の重要性の認識が甘いことがよくある。つまり,再発防止も何か一つタスク(仕事)が増えた程度に考えてしまっていることがよくある。つまり,若いときには失敗が付きもの,その一つぐらいの感覚である。上司や関係者が再発防止を考えろと言われる場合にはそれなりの意味がある。単なる失敗であれば,次回から気をつけろで済むが,再発防止策を考えろ,と云われることは,そのことが重要で,同じような過ちを繰り返さないように若いときからしっかり反省して取り組め,と云う合図である。

したがって,いい加減に回答を作って持っていけばよいと云うものではない。成長過程として重要だから,じっくり考えてみろ,と云う場合だって大いにあることである。そんなチャンスをいい加減にするようでは,後が思い知らされる。上司や関係者がわざわざ再発防止策をと言ってくれることは,一緒になって考えてやろう,指導してやろう,と云う現われなのである。成長を期待しない人に,再発防止を考えろとは言わない。成長が期待されるからこそ,じっくり考えて答えを出してみろ,と云うことである。そうした先輩の想いに応える人間であって欲しい。

再発防止の原因分析をしっかりやろう!!

再発防止は大きなチャンスと考えよう!!

 

[Reported by H.Nishimura 2009.06.22]


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