■プロジェクトの成功 1 (No.118)

プロジェクトマネジメントについて,当事者としてリーダでプロジェクト推進していた過去と,現在ではコンサルタントのような立場で傍らで,当事者でなく第三者的立場でプロジェクトを見ている状態では見えてくることが違ってくる。この第三者的立場でプロジェクトの成功を考察してみると,リーダ,サブリーダの自信度が影響していると見られる場合がある。これらについて考えてみる。

先ず,冒頭に結論を言うならば,プロジェクトの成功は,リーダ,或いはサブリーダのプロジェクトを成功させる自信度が結果を大きく左右する,と云うことである。つまり,プロジェクトは未知な要素がいろいろあり,決まりきった仕事をするのと違って,100%確実性があるとは限らないものが通常一般である。したがって,プロジェクトとして決められたスコープ(仕様範囲),品質目標(Q),コスト目標(C),納期目標(D)をどの程度首尾よく達成できるかは,活動如何によって変わることになる。また,プロジェクトと云ってもいろいろなものがあるが,ここで云うプロジェクトは一大プロジェクトで一回きりの全く初めての大イベントのようなものではなく,新製品開発のような,一連のプロセスはあるが,開発する内容が技術開発など難易度の高いものや,大規模な人数で開発を行なうなど,未知な要素がある程度入っているプロジェクトを想定して述べている。

リーダやサブリーダにとって,こうしたプロジェクトマネジメントは,行なうプロセスは周知だが,その開発内容が未知な要素が多く,特に技術難易度が高いものになると,メンバーのスキルがどの程度,対応可能なのか,それによっても大きく違ってくる。こうしたことを踏まえながら,プロジェクトとして全体の計画を立てることから始められる。普通一般には,未確定要素が一つも無く,計画時点ですべて把握できていると云った開発プロジェクトはむしろ少ない。いや皆無と云ってよい。なぜなら,すべて判っているならば,開発とは呼ばず,仕事を着々と進めるだけで出来上がるからである。そうではなく,未知な要素,リスクと思われる要素が含まれるから,それらをいつ明確にし,或いはリスクと思われる潜在要素を抑制させて進めることが求められる。

こうした中で,リーダやサブリーダはプロジェクト全体を俯瞰する立場にある。与えられた部分しか判らない,と云うのではリーダとは云えない。サブとついていて,自分の担当範囲が限られていても,全体を俯瞰できない立場や自分の範囲だけで他の部分はそしらぬ態度をする人はリーダとは呼べない。つまり,リーダやサブリーダは計画段階から,全体を俯瞰しながら,自分の範囲を上手く対処して,全体との調和をとり,プロジェクト全体の成功に導こうとする。したがって,リーダやサブリーダがプロジェクトの成功に対して自信があるか,無いかは,プロジェクトの進捗に大きく左右するのである。一番大きな影響は部下に対する士気である。自信のなさそうなリーダが指揮命令する場合と,自信溢れたリーダが指揮命令するのでは,結果が違ってくるのは明らかであろう。自分達のやっていることが正しく,着実にプロジェクトが進んでいるのが判るのと,やっていて大丈夫なのだろうかと疑いを持ちつつやるのでは,そのモチベーションが違ってくる。人のモチベーションの差が仕事の成果に大きく左右するのは,明らかなことである。

私の経験から,リーダやサブリーダの成功への自信度が,例えば80%だったとすると,部下が優秀で能力を最大限発揮したとしても,80%を超えることは先ず無い。これはプロジェクトと云った一回限りの仕事ではこうしたことが多い。組織的な仕事では,リーダが頼りなくても,その下が逆にしっかりして補うことはよくあることである。これはヒエラルキー組織における全体としての仕事の場合で,プロジェクトと云った場合では,的確な指示のなさ,士気の低下などマイナス面が先に立つ場合が多く,こうした優秀な部下が補える部分を期待できることが少ない。むしろ,経験知として,リーダの自信度の2乗,つまりリーダの自信が80%であれば,64%(80%×80%)程度が部下を含めた,プロジェクトの成功割合のように思える。

それほどリーダやサブリーダはプロジェクト成功のカギを握っているのである。したがって,未知の要素,リスクと思われる要素など事前に把握して,その対応策を,未然防止策を如何に準備し,それらのマイナス要因を極力避け,部下に適切な指揮命令ができるようにすべきである。また,その自信度はプロジェクトの内容にもよるが,非常に難しいプロジェクトでも80%以上の自信度,通常のプロジェクトであれば,計画時点では90%程度の自信度をもって欲しいものである。自信の度合いは性格的なものもあるが,それらを加味してもリーダとしては,この程度の自信度を持ってプロジェクトを始めて欲しいものである。

また,リーダやサブリーダがこうしたプロジェクト成功への自信を持つためにすべきことは,先ずは計画時点の参画度である。計画を一緒になって立てたとか,目標を自分の思いを込めて作ったとなると何とかやり遂げたいと思うのが人間である。どうしても他人が立てた計画をやるように言われると,できなかったときの逃げ口上が最初から出来上がってしまう。やはり,計画を自ら参画してつくり,その計画に対してコミットメントして,プロジェクトに当たるべきである。そうすれば,部下への指揮命令にも自信が沸き,その思いが人間同士でつながるはずである。サブリーダであれば,リーダが作る計画に参画することが一番だが,例え参画しなかったとしても,計画時点で十分リーダと意見を交わし,自分が立てた計画と変わらないくらい納得しておくことが重要である。サブリーダが居るということは,プロジェクトそのものの規模が大きいとか,拠点や会社間を跨っているとか,その必要性があって置かれているので,実質的なリーダ役になる場合が多い。したがって,サブリーダだから,リーダが自信を持っているから大丈夫と云うわけには行かない。サブリーダもしかるべき自信を持っている必要があるのである。むしろ,サブリーダが実質リーダ役をやっていて,リーダは名目上のリーダと云う場合だってある。だから,サブリーダの自信度の方が重要な場合が多いこともある。

(続く)

あなたのプロジェクトのリーダやサブリーダは成功への自信をもっていますか?

 

[Reported by H.Nishimura 2009.05.18]


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