■高速料金と渋滞(No.117)

今年のゴールデンウィークは例年になく高速道路の渋滞が激しかった。理由は,高速料金が土日,祝日割引で,1000円でどこまでも行けるようになったためである。場所によっては,予想の渋滞をはるかに超えることが起こったり,Uターンラッシュが,連休1日前の5月5日の予想だったのが,ドライバーの心理で渋滞を避けようとさらに1日前の5月4日から渋滞が始まったりといろいろなことが起こった。

  高速料金の値下げ

2年間の暫定処置として,景気回復を狙ったものである。首都圏と京阪神を除く高速道路はどこまで走っても1000円にこの3月28日から暫定的に料金値下げがなされた。テレビなどのニュースで見る限りでは,遠くまで足を伸ばす人が増え,もちろんガソリンの消費は増えると共に,行った先で,高速料金の安くなった分だけ得した気分になって財布の紐がゆるむらしい。経済効果は十分ありそうである。

そもそも多額の税金を投じて作られた道路費用を,利用して恩恵を被るドライバーに負担して貰う発想で高速料金が設定されている。償却費に相当する額を利用する車の台数を想定して料金が決められているのとは思うがよくは判らない。多分,元が取れている道路は極限られたところで,殆どが元は取れていないだろう。しかし,自分たちが払った税金で作られた道路とはいえ,料金が安くなって反対する人はいない。随分得をした気分になっている人が多いことだろう。

  ゴールデンウィークの渋滞

例年,ゴールデンウィークは高速道路の渋滞が起こる。渋滞を承知で,この機会に実家に帰ったり,或いは旅行に出かけたり,なかなか休みが取れない日本人にとって,年中行事の一つでもある。しかも,渋滞する箇所は予め決まっている。渋滞することが判っていれば,何とかそれを回避する方策は無いのだろうか?二車線を三車線に変えるとか,方策は講じられているとは思うがなかなか思い通りにまではなっていないようである。

普段から高速道路をそれほど利用していないドライバーまでも高速を利用するので,事故も多いようである。運転方法も,少しの違いで渋滞になるかならないか違ってくる。当然,普段高速を乗り慣れないドライバーが増えることは,渋滞を加速させる方向に働く。30km以上の渋滞が例年の2倍に増えたとか。或いは淡路島では最長65kmつまり,淡路島全体が渋滞に巻き込まれてしまった時間帯があったとか,テレビの報道で見る限りでは,たいへんだったようである。

私自身も1000円の恩恵をそれほど被った訳ではない。田舎へ一度帰ったときは,いつもはそれほど混まない道路が渋滞してノロノロ運転の区間があり,いつもなら1時間半ほどで行けるのに,30分ほど余分に掛かってしまった位で,通常料金の4割引近くになっていた。感覚的には混まない方がコストよりも優先される気分だった。通常の土日であれば渋滞はないので,やはり連休中は出ない方がよいのかもしれない。

航空各社はゴールデンウィークは,ガソリン代が下がったためのサーチャージが安くなり,昨年の8%増を期待していたのに,新型インフルエンザでキャンセルなど海外へ出るのを避けた人が多く,4%増になったようである。新幹線も例年ほどの混みようでなく,やはり高速1000円の影響を受けたようである。

このようにゴールデンウィークの渋滞が酷くなることが予測されるのであれば,新幹線の回数券がゴールデンウィーク期間中は使えないなどのように,高速料金の値下げを一時的にストップしても良かったのかも知れない。目先のしかも人気取り丸出しの施策に国民の多くがその時は得した気分にはなるもののこれが果たしてどれだけ経済効果を呼び,将来の布石となるかと考えると,甚だ寂しい限りである。本格的な経済効果を期待したいものである。

 

 

[Reported by H.Nishimura 2009.05.11]


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