■組織変更 3 (No.114)

  組織構造

最近の組織構造は,昔のヒエラルキー型の重層構造ではなく,フラットな階層構造の組織が多い。つまり,変化の激しい,スピードを要求される時代にマッチした意志決定の早い組織構造になっている。昔は係長,課長,部長と云った階層がきっちりしたピラミッド型であったが,同じような組織構造でも,リーダ,マネジャーと云った呼び名で,それも順列が決まっているわけではなく,いきなりリーダに指名される場合もある。こうした組織は,時代にマッチしているとはいえ,必ずしも良い面ばかりではなく,歪みもある。

その主な特徴を比較してみると次のようになる。

ヒエラルキー型

フラット型

・指揮命令系統が明確
  上司から確実に
・指揮命令のスピードが速い
  ネットワークの活用
・人の育成が容易
  一段上の上司が見本
・突出した人が出やすい
  若い人でも実力あればリーダに
・筋が通ってぶれない
  全体としてきっちりスキがない
・変化に敏感に対応
  激しい変化に俊敏に対応できる
・上下で補完し合える
  リーダだけでなく全体でサポート
・リーダが自由闊達にできる
  リーダの意思が素早く反映
・変化が緩やかなときに有効
  高度成長期,皆が同じ方向へ
・変化が激しいときに有効
  混沌としたとき,リーダが方向付け
・長期的な視野での仕事
  人材育成,思想・技術の伝承
  風土,価値観の醸成
・短期的なプロジェクトに
  機動性の発揮,選択と集中
  多様化にも対応
・コーポレート・ガバナンスが確実
  チェック機構が働き暴走が少ない
  意思決定に誤りが少ない
・意思決定が迅速
  決裁が容易(合議が少なくて済む)
  リーダに全責任が委譲

こうした特徴を見ても,果たしてどちらが良いかとなると,その人の居る立場で大きく変わってくる。ある人は,ヒエラルキー型の組織構造で,先輩諸氏の指導を受け,言動を見習いながら自分の成長を図り,やがては自分もそうした責任者の立場になって行きたいと思うだろうし,またある人は,こんなに上に一杯詰まっていて,組織が大きくならない限り出世する見込みも少ないと思うだろう。いや,最近の若い人は出世など望んでいなく,自分が思うように伸び伸びできる環境ができればそれで十分だ,と云うのかもしれない。また,ある若い人は,年配と云うだけで責任者になっているが,自分の方が実力があり,ヒエラルキー型でなく,フラットな組織構造の方が自分がリーダになるチャンスが巡ってくる可能性があると,チャンスを狙っているかも知れない。

いずれにせよ,会社生活,組織構造下において,人は成長し,会社も成長する形が望まれる。昨今の経済状況は非常に厳しいが,以前の高度成長期のように会社がどんどん大きくなって行くことは,今後はそれほど期待できない。安定成長下において,如何にして人が成長し,会社も成長するか。そのための組織構造はどんな形が良いのか。しかし,経営者の多くがどれだけそんなことを考えていてくれるだろうか?これまでも繰り返し述べてきたように,会社経営者として,会社のミッションを実現する最良の組織構造を考えているのである。もちろん,その中で人の成長も期待はされているが,それが主たる目的ではないことは事実である。

我々としては,そうした会社組織の実態を十分承知した上で,自分の成長をどのようにして実現して行くかを考えることは非常に大切なことなのである。組織変更などの機会に,是非真剣に考えて欲しいものである。

  組織と仕事(組織構造2)

また,ヒエラルキー構造の組織でありながら,仕事の実態はプロジェクト制で,プロジェクトリーダが仕事の責任と権限を持って,メンバーを掌握しながらプロジェクトとして進める方式を採っている会社もある。組織と仕事がマトリクスになっており,組織上のボスと仕事上のボスの2人に仕えることになる。仕事が複雑化して,いろいろな機能が連携良く当たらなければならない場合,このプロジェクト制は有効に機能し,責任の所在も明確であり,こうした組織運営をしている会社も珍しくはない。これにも一長一短があり,その時点で最も有効だと判断したやり方にトップの判断で行われるのである。

私の経験からは,こうしたプロジェクト制は短期的に仕事を効率よく運営したりする場合は,非常に有効に機能する。しかし,会社は組織で運営されている面が多いので,プロジェクトが終了すると,結局は元の組織に戻る。職能としての成長は,やはり組織で行われる。つまり,機能別組織がきっちりしすぎて,機動性の発揮ができていない会社にとって,プロジェクト制を導入して,組織活性化を図るには有効な方法であるが,組織上と仕事上と2人のボスに仕えると云うのは長続きはしない。やはり,どちらか一方,自分を認めてくれるボスの方に偏ってしまうのが人間としての習性である。

チーム制としてボスは一人だが,いろいろな機能のメンバーが集まって組織体制を組む場合もある。マトリクスではなく,プロジェクト制を大きくしてチームとした組織横断型組織とでも云ったものである。この場合も,プロジェクト制同様,チーム一体となった機動力発揮には非常に良い組織体であるが,人の成長面ではなかなか思い通りには行かない。チームをまとめるリーダの育成はできるが,メンバー個々の職能としての育成は上手く行かない。つまり,こうしたチーム制も一時的な対応,つまり短期的には実効性があるが,長期的な人の育成においては問題が多い組織構造と云えるのではないか。

(続く)

貴方の組織構造は良いと思いますか?

自分の成長が現在の組織構造で望めますか?

 

[Reported by H.Nishimura 2009.05.20]


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