■組織変更 1(No.112)

4月になり,殆どの会社で新しい事業年度が始まった。新入社員を迎え,新たなスタートの月である。今年は,100年に一度と言われる経済不況で,社長の新入社員への言葉も厳しい内容が多かったようである。中には,不幸に採用を取り消された人も居るようで,近年稀に見る厳しい春である。この時期,会社では新しい事業年度に当たり,組織も新しくスタートするところも多い。そこで,今回はこの組織について考えてみる。

  組織とは

会社に於ける組織とは,若い人にとっては自分がどんな組織に入ってどんな仕事をするかと云った点にしか関心が無いが,実際,会社における組織は,会社のミッションを果たす上で重要な役割を担っている。つまり,会社のミッションを果たすために,社長及び会社幹部がどのような組織が一番良いかを考えて組織を決めている。もちろん,人事,経理など会社単位として必要な組織もあるが,製造部門,技術部門などの組織においては,トップの意向が大きく反映されることが多い。もちろん,組織にはその責任者たるものが必要なので,それに相応しい人が居るか居ないかも組織が決まる一つの要素ではある。

トップの意向なので,限られたリソース(人員)の中で,どの組織にどれだけに人員を配置するかは,その組織として会社のミッションを果たす役割がどの程度かに依存することになる。つまり,昨今のように経済環境が厳しくなると,会社全体として余剰人員を抱える余裕が全く無くなっている。したがって,会社への貢献度が低い組織は,どうしてもリソースを減らされることになる。つまり,景気の良い状態では判らないが,昨今のように景気が悪いときは,トップが組織に対してどのような考えでいるかが,直接反映される結果となる。

典型的なのは固定費削減対象が,どうしても一番大きな経費である人件費になるので,ライン業務はそこが減ると生産などライン業務に直接支障が出てくるので削減に手を付けるのは後回しで,どうしても直接的な支障が少ないスタッフ業務が削減対象になりやすい。その結果,スタッフが少なくなるとライン業務の支援など,ライン業務の負担は増すことになるが,ライン業務が滞るような事態にはなかなか陥らない。このことは見方を変えれば,スタッフ業務は,会社が求めている仕事に対して,各人がどれだけ付加価値を付けているか,と云うことになる。

付加価値をつける,即ち,仕事をすることで,その後を担当する人(顧客に相当)にどれだけ貢献しているか,その貢献度が集まると会社として価値が付いたアウトプットが世の中に出ていくことになる。このアウトプットの貢献度に対する割合が低い人,或いは低い組織は,どうしても小さくなったり,或いは消滅することになっていくのが常である。そうしたことから,自分の居る組織が会社にとって,どれほど重要な位置付けかは,若い人でも知っておくことが肝要である。

  組織変更

組織とは,こうした会社のミッションを果たす最適の体制なので,環境変化(内部,外部共に)によって,組織変更が行われる。トップの意向が反映するので,トップが変われば組織も変わることが多い。変化の激しい時代であり,これまでの私の経験からは,会社組織は2,3年で変更が入ることが常だった。名刺を3年間も同じものを使ったことは殆どない。若い人にとっては,なぜこんなにコロコロ組織が変わるのかと不思議がる人も多いのではないか。私も若い頃は,よくもまあこんなに組織を変えてどれだけ意味があるのだろうか?事業部が離れたり,くっついたり,どうしてずっと安定した組織で仕事をしないのだろうか?自分達にとっては,組織名が変わったり,上司が変わったりするものの,仕事に中身の変化は組織名の変化の割合ほど激しくはなかったように記憶している。

それでも,変えたがる?と言った方が良いのだろうか?一番明らかなのは,赤字状態が続く場合である。こうしたときは,必ず,トップが変わることになる。長くても3年である。会社にとって赤字が続くことは許されないことである。但し,許される赤字状態が認められるのは,新規の事業が立ち上がるときである。新規の事業がいきなり収益を出して黒字になると云うケースは少ない。新規事業の投資期間として1,2年の赤字,或いは数年の累積赤字解消は許される。そうではない通常の事業で,いかなる外部環境の変化と雖も,2年も赤字が続くと,その事業は見直しの対象になることは間違いない。このように事業の経営状態はトップの交代を伴い,組織変更が行なわれる大きな要素の一つである。

組織は長く続くと活性を失い,どよんでくるものである。いわゆるマンネリ化で,緊張感が欠けてくる。そうなると,仕事に慣れたルーチンワーク化がメインの仕事となり,楽をするようになる。もちろん,こうした状態では人のモチベーションもそう高くはなくなり,全体として活性がなくなってしまう。世間で言われるお役所仕事的になってしまう。グローバル化した変化の激しい時代にあって,このような組織体では競争に打ち勝っていけない。こうしたマンネリ化を防ぐ意味でも,組織変更で活性化をさせることがある。人間は同じ状態に居ることが楽であり,自ずとその傾向になりやすい。組織変更はそれを防止してくれる。また,変化の激しい時代なので,ヒエラルキーの重厚な組織体ではなく,層の薄いプロジェクト制に近い組織だから,余計に組織変更,と云うよりプロジェクトによって,違ったメンバーが集って仕事をするケースが増えてきている。

(続く)

あなたの組織は重要な役割を果たしていますか?

組織変更はあなたにとって何ですか?

 

[Reported by H.Nishimura 2009.04.06]


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